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  • 主席研究員 塩野敏晴
  • No.96

平成30年間の価値観と消費者志向の変化

30年続いた平成時代が終わりを告げ、令和時代が始まった。この平成30 年間を振り返ると、人口は減少に転じ、少子高齢化社会を迎えることになった。生活面では、インターネットと携帯電話の普及が、消費者の生活環境に劇的な変化をもたらしたといえる。こうした国民生活の支出状況を表す「家計調査」は毎年実施され、平成最後のデータである平成30 年調査結果も公表されているので、30年間の家計支出の変化を比較してみた。十大費目で大きく伸びたのは「交通・通信」であり、とくに通信費は、携帯電話などの通信料により、倍以上の増加となっている。この他、パソコンや受信料、インターネット接続料などの「教養娯楽」も大きく増加した。一方、バブル景気時の象徴的な支出だった「被服及び履物」は大きく減少している。
食生活では、「米」「魚介類」が減少し、「パン」「乳卵類」が増えた。文明開化以来の食の西洋化がいまだに続いているかのようだが、それだけではない。支出を増加させているのは、「調理食品」「カップ麺」「乾燥スープ」など、手間暇かけず、簡単に食膳に戴せることのできる「利便性」「簡便性」を高めた品目である。食以外の消費対象への関心が高まる中で、食に投入する時間と手間の節約志向が高まったとみることもできよう。
もうひとつの傾向は「多様化」である。たとえば「菓子類」をみると、「ようかん」「まんじゅう」「カステラ」「ケーキ」といった定番品目はいずれも大きく減少し、代わって増えているのは、「他の和生菓子」「他の洋生菓子」といった、"その他大勢"の品目である。
家計調査を時系列で品目別に追っていくと、こうした「定番品目」の減少と「他の○○」の増加は、他の分野でもみられる傾向である。
すなわち、消費者ニーズの多様化、個別化等を背景に、各メーカーによる新製品開発や、海外からの新たな食文化の導入等により、従来の品目分類に当てはまらない新製品が市場に投入されて「その他」に分類、その後市場に定着して一定の地位を確立させると新品目として独立、という歴史を繰り返している。
令和の時代、多様化や利便性追求の流れの中で、定番品目はさらにシェアを失ってしまうのであろうか。いや、むしろそうした流れだからこそ、「老舗の味」のような伝統的な高付加価値型の品目が存在感を発揮できるのではないか。
最近の消費者志向は、「物的豊かさ」から「心の豊かさ」への変化が見られ、さらには健康志向や環境志向など、様々な価値観が加わっている。また、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されるなど、日本人の食は国際的にも注目が高まっている。
静岡県は、まぐろ、かつお(節)、緑茶など、多くの和食の定番品目において全国有数の産地である。万葉集の「梅花の歌」を典拠とする令和の時代こそ、日本古来の和食文化への回帰の時代になることを期待したい。

投稿者:主席研究員 塩野敏晴|投稿日:2020年03月27日|

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