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主席研究員 山田慎也 のコラム

  • 主席研究員 山田慎也
  • No.85

リピーターからロイヤルカスタマーへ

小売店や観光施設だけでなく、製造業など多くの企業にとって、自社の商品やサービスを繰り返し購入してくれる"リピーター"が大切なことは以前から言われている。それは、新たに顧客を開拓するには、営業経費や広告宣伝費など莫大なコストが掛かることから、既存の顧客に継続して購入してもらうほうが、はるかに経営的に効率的だからだ。
このことは人口減少時代になってますます重要性を増すことになる。当面は人口が増加する高齢者を対象としたビジネスを除いて(いや、地域によっては高齢者の減少もすでに始まっている!)、新規開拓の対象となる顧客自体が確実に減っていくうえ、人手不足で営業員の確保も難しくなるなど、市場の縮小と営業力の低下で、新たな顧客の開拓はこれまで以上に厳しくなっていくからだ。
では、リピーターづくりにおいて本質的に重要なことはなにか。そのヒントを教えてくれる住宅メーカーが浜松市にある。
そもそも住宅は、一生に一度に買物であり、リピーターづくりが難しい。その上、実はこの会社は、営業員はひとりもいない、モデルハウスも持っていない。にもかかわらず継続して顧客獲得に成功している。その理由は、明確な商品コンセプト、従業員の親身な対応、徹底したアフターフォローなどにより、既存顧客の高い"ロイヤルティ"を獲得していることにある。そのため、家を建てた顧客の紹介を通じて、新たな顧客が自然に増えていくのだ。
ロイヤルティとは、その商品やサービス、さらには会社そのものに対して、顧客が感じる高い満足感や信頼感などをベースにした、総合的な"愛着"のこと。価格の安さなどの経済合理性を超えて、商品や会社に心底、共感した顧客が"ロイヤルカスタマー"である。
ロイヤルカスタマーが単なるリピーターと違うのは、「また購入したい」と思うだけではなく、「家族や知人など自分の大切な人に、その会社や商品を紹介したい」と思うかどうか。ロイヤルカスタマーはもちろん良質なリピーターとなる。と同時に、もっとも心のこもった営業員にもなる。前述した住宅会社は、自社の営業員はいないが、既存顧客という優秀な営業員を社外に沢山もっていることになる。
逆に、リピーターがすべてロイヤルカスタマーとは限らない。繰り返し購入してくれる顧客の中には、店が近いとか、商品にこれといった不満がないとか、単にそこで買うことが習慣になっているケースも含まれる。
リピーターは大切である。しかし、その本質は顧客のロイヤルティを高めることにある。かの住宅会社の経営者が意識しているのは"今ある関係をよりよくする"ことであるという。これからの時代、どのような業種の企業にとっても、参考になるキーワードと思われる。

投稿者:主席研究員 山田慎也|投稿日:2018年07月03日|

  • 主席研究員 山田慎也
  • No.78

変化してきた"働き方"と今後の視点

最近、働き方改革や大卒者の就職戦線など、企業の人手不足が深刻化していることもあり、就労問題が注目されることが多くなっている。働き手といえば、現在では、企業などに勤めるサラリーマンが当然のことのように想定されるが、以前は事情が違っていた。
約60年前(1954年)の雇用形態別の就業者割合をみると、自営業主が約25%、家族従業者が約32%と、自営・家族経営的な働き方が約6割を占め、企業などに雇用されている人は半数以下だった。つまり、若者が働くといえば、以前は農業や個人商店など、実家の家業を継ぐか手伝う人が相当数いたのである。
その後、産業の工業化・サービス業化が進み、高校や大学を卒業した後の就労先が、企業に正社員として雇用されて賃金を得る形に変化してきたわけである。その結果、現在(2016年)では約9割が雇用者となっている(自営業主8%、家族従業者2%)。
ちなみに、同期間には高学歴化も進行し、大学進学率は7.9%(男性13.3%、女性2.4%)から52.0%(男性55.6%、女性48.2%)へと大幅に高まった。半数以上の若者が大卒・雇用者へと進むのだから、大学生の就職・採用が社会問題化するのは必然といえる。
こうした変化を踏まえれば、企業組織での働きやすさが、多くの国民の幸せに影響するわけで、やはり働き方改革は重要である。ワークライフバランス(過度な長時間労働の是正など)は、すべての企業に共通する課題といえるが、特に中小企業では、以前の自営・家族経営的な働き方の良い面を引き継ぐ視点があってもよいだろう。
従業員の育児・介護への臨機応変の配慮や、ボランティアによる地域貢献、また、企業と従業員の家族とが一体的な親密さを築いていくこともよいかもしれない。こうしたアットホームな組織運営は、中小企業の人手確保や定着にも有効だろう。行政も、こうした企業を積極的に支援すべきである。
一方、地域の視点から言えば、地域に根付いていた自営・家族経営の消滅が進み、大学進学率が高まったことが、人口流出にも影響を与えたといえる。これからは、高学歴の人材を地域で育て、有効に活かす方策を真剣に考えていかなければならない。
企業誘致による雇用創出も大切だが、自営・家族経営が担っていた地域コミュニティを再構築するような、地域密着型の"新しい自営業"を生み出す起業促進が必要ではないか。地域企業の企業内起業やスピンオフ奨励なども、有能な人材を地域に根付かせる可能性がある。人口減少を見据え、地域としての新しい働き方を模索する視点が求められている。

投稿者:主席研究員 山田慎也|投稿日:2017年07月31日|コメントを書き込む

  • 主席研究員 山田慎也
  • No.70

「大人が趣味を楽しむまち・静岡」の提案

静岡県は、プラモデル、楽器、オートバイなど趣味に関連する産業が集積している。ということは、関係企業の社員を含めて、その分野を趣味として楽しんでいる住民がたくさんいるはずだ。そこで、その人たちが中心となり、経験が全くない人でも趣味の世界へ入ることができる仕組みをつくることができないだろうか。たとえば、学校の部活動のように、多くの住民が参加する"住民クラブ活動"のようなものはどうだろう。
住民クラブ活動の候補としては、前述した「プラモデル制作クラブ」、「楽器アンサンブル・クラブ」、「バイク・ツーリング・クラブ」のほかに、「クラウンメロン園芸クラブ」(賞味含む)、「モータースポーツ・クラブ」(自動車産業と富士スピードウェイがある)、「お茶づくり・煎茶道クラブ」、「オリジナル家具制作クラブ」、「サーフィン・マリンスポーツ・クラブ」など、書ききれないほど考えられる。
まずは、自分たちが"楽しむ"ことに関しては負けないクラブにする。その分野の人にしか分からないディープな楽しさが沢山あるほうがよい。実際に生産に携わっている人や、専門的な知識をもった人が県内に在住しているので、そう簡単に他の地域に真似されるはずはない。
しかし、同時に重要なことは、初心者でも簡単・手軽に楽しさを体験できるクラブにするということ。住民が心から趣味を楽しんでいれば、その世界に入りたいと思う人が増えるはず。その人たちをスムーズに受け入れる仕組みが必要だ。東京から日帰りで気軽に参加できるクラブ活動がある"大人が趣味を楽しむまち"として、静岡県をブランディングして発信できれば、交流人口の増加が期待され、さらには関連する仕事があれば定住にもつながるかもしれない。しかも流入してくる人々は、まさに住民と"趣味の合う人たち"なのだ。
住民クラブ活動は、できれば県や自治体公認の方がよい。趣味は、住民の幸福度を高め、健康増進にも効果があるはずで、県が推進する健康長寿日本一の施策とも合致する。
もちろん、県外住民のクラブ入会も大歓迎で、その際、自治体公認の方が参加する人々に安心感を与える。
静岡県は、日照時間が長く、首都圏に近いなど、すでに立地条件からみても"趣味のまち"としての優位性がとても高い。住民クラブ活動は、シティプロモーション効果、交流人口の増加、若者のU ターンや移住・定住の促進、高齢者の社会参加などの効果があり、地元産業の振興にもつながる。地方創生策としてなかなか有益だと思うが、いかがだろうか。

投稿者:主席研究員 山田慎也|投稿日:2016年10月31日|

  • 主席研究員 山田慎也
  • No.63

2017年新卒者の採用活動スタート、オール静岡で支援を

 3月1日、2017年の新卒者向けの会社説明会が解禁となり、採用・就職活動がスタートした。経団連が示す採用スケジュールを巡っては紆余曲折があり、結局、2年連続の変更となった。会社説明会の開始は昨年と同じだが、面接等の選考開始は、一昨年の4月から昨年は8月へ、今年は6月となる。
 選考解禁が大幅に後ろ倒しになった昨年は、特に地域企業で採用活動が混乱した。それまで、大手企業の採用が一段落してから採用活動をしていたが、大手の採用決定が遅れたことで、内定辞退の発生や、学生と接触する時間が十分確保できないなどの事態となった。
 その結果、1月になってもまだ4割の企業が採用活動を継続しており、採用計画を充足できそうな企業は2割にとどまる状況だ(就職支援財団調べ)。若年人口の減少や景気回復で大手企業が採用を増やすなど売り手市場となった影響もあり、地域の活力源である地域企業の採用難が、深刻な事態となっている。
 今、地方の課題の一つは人口減少への対応であり、人を呼び込むには雇用の場=企業の採用確保が必要だ。特に地域企業では事業を成長させるために必要な人材を確保することが不可欠である。地域企業の採用と新卒大学生の就職をサポートすることは、地方にとって最重要課題であり、産学官民が一体となってこの課題に取組む必要がある。
 静岡県では、県内大学と経済団体、および行政機関が一堂に会する「しずおか産学就職連絡会」が4年前から活動しており、採用と就職のミスマッチ解消のため、企業と学生の"顔が見える"関係づくりに向けて連携をとっている。そうした情報交換の場から、学生がこれまで志望対象としていなかった企業を新たに発見できると評価が高い対話型交流会を中心とする「静岡型採用サポートシステム」の仕組みが広がるなど、成果が出始めている。
 採用・就職支援は、各自治体や商工団体等が個々に実施しているのが実情で、肝心の学生に地域企業の情報が十分に行き届いていない。特に首都圏等の学生に対する情報発信や地域企業との出会いの場の設定は、静岡県全県で連携して一体的に行う必要があり、オール静岡の体制づくりが期待される。
 さて、今年の大手企業の選考開始は6月からだが、経団連に加盟していない企業の動きなど予測できない部分があり、地域企業は、これまでより一歩踏み込んだ採用活動を早めに開始することが重要だろう。当所では、中小企業に適した採用手法を解説する「新卒採用実践講座」を緊急開催(2016年3月23日、詳細はこちら)するので、ぜひ、参考にしていただきたい。

投稿者:主席研究員 山田慎也|投稿日:2016年03月03日|

  • 主席研究員 山田慎也
  • No.54

有効求人倍率、同じ1倍だが…

 静岡県の有効求人倍率が回復している。リーマン・ショックによる景気後退で、平成21年には0.4倍(季節調整値、新卒除く)を下回る月もあったが、そこから徐々に回復して、昨年1月にはようやく1倍を超え、現在は、1.13倍(平成27年1月)となっている。
 雇用のバロメーターである有効求人倍率は、企業の求人数が、職を求める求職者数の何倍あるかを示した数値。求人数が求職者数を上回れば1倍以上となり、働こうとする人にとって、職に就きやすい状況といえる。
 さて、リーマン・ショックの前にも、ちょうど1倍だった時期があったのだが、当時と現在とでは、同じ1倍でも中身が異なる。その違いを見てみよう。
 まず、企業からの求人数。リーマン・ショックによる景気後退が始まった平成20年9月の求人数は5万5千人(求職者数も5万5千人)。それに対して、26年6月の求人数は6万3千人(求職者数も同じ)と、8千人も多い。最近の求人数も6万5千人?6万7千人で推移しているが、実はこの水準は、ここ20年間の静岡県内の求人数の最大レベル。企業の求人ボリュームが最高の状態の中、求職者数が徐々に減少することで(職に就くことで)、有効求人倍率が改善している状況といえる。
 そして、求人の内容も異なる。まず、求人数のうちパートの求人が、景気後退前と比べて5,600人増加、求人数に占める割合も32%から37%に高まっている。また、業種別の新規求人数を比べると、製造業が約▲800人、卸・小売業では約▲900人減少する一方、社会保険・社会福祉・介護事業では約1,500人も増加している。さらに、求人企業の規模では、従業員29人以下の企業が約4,800人増加する一方、従業員30人以上の企業では約▲2,600人の減少。 つまり、企業側は求人を最大レベルまで増やしているが、その中身は、景気後退前と比べて、パート、介護事業、零細事業所の求人が多いのだ。そして、企業側から見れば、これらの求人が充足しにくくなっている点も重要である。
 求職者数の方は、リーマン・ショックによる景気低迷期の平成21年には、一時9万人まで膨らんだが、就職が進んで現時点では5万人台まで減少。中長期的には人口減少圧力もあり、企業側からすれば、求人しても人がなかなか採れない、“人手不足の時代”に入ったといえる。
 これからは、有効求人倍率が1倍を上回ったら、雇用環境が改善したと安心するだけでなく、企業の人手不足が深刻化し始めるサインという側面にも、留意しなければならないだろう。

投稿者:主席研究員 山田慎也|投稿日:2015年04月01日|

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