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主席研究員 鈴木宏和 のコラム

  • 主席研究員 鈴木宏和
  • No.75

大学生の"懐事情"に思う

新年度に入り1カ月が過ぎた。初めて親元を離れ1人暮らしを始めた大学生は、次の仕送りまで、手持ちのお金でどうやりくりするのか、家計のペースを掴むまでが大変であろう。
平成28年におけるアパート・マンション等に住む学生の月間支出は、住居費5万2千円、食費2万5千円など計11万8千円。これを、仕送り7万円、奨学金2万1千円、アルバイト2万7千円で賄う(全国大学生協連調べ)。学費と合わせ、1人当たり年間200 万円以上が必要で、親の懐はもとより、送り出す地域経済にとっても大きなマイナスとなる。
奨学金を受給する場合は、その分、親の負担は減るものの、本人は卒業後の返済に汲々とする。日本学生支援機構(JASSO、旧・育英会)の貸与型奨学金は、大学生の2.6 人に1人が利用しているという。第一種奨学金(利子なし)は、私大・自宅外学生で月6万4千円、4年間の総額は307万円になる。利子付の第二種奨学金(月12万円まで)も借りられるが、返済負担は一段と重くなる。それではと、アルバイトを増やすと、大学とバイト先を往復するだけの学生生活に陥り、将来の夢がぼやけてしまったり、勉強も人間関係も幅や深みに欠けた味気ないものになりかねない。
学生を送り出す親や地域、そして学生当人のいずれも、結構切ない状況といえる。この要因としては、?地元に大学が足りないこと、?学費と生活費に多額を要すこと、?苦労が報われる就職先が見つけにくいこと、などが挙げられる。?については、単に数を増やすだけでなく、是非入学したいと思えるような質が伴わなくては意味がない。?に関しては、給付型(返済不要)奨学金を増やそうという声が上がっている。
財源の問題はあるが、拡充が待たれるところだ。
?には、正規雇用枠の増加が必要であるが、一方で、そもそも大卒を条件とする求人が本当に妥当なものか、企業サイドも見直すべきであろう。高卒の採用枠が増えれば、県外への人口や資金の流出は抑えられるはずだ。
もう1つ、行政に一考願いたいのが学生寮の設置である。大学や出身高校の枠を超え、地元学生の情報ネットワークのベース基地として、経済的な面以上に、学生生活の充実につながる効果が期待できるのではないだろうか。
現在、全国の自治体が運営する学生寮は41カ所あり、大半は県単位のものであるが、会津若松市など4市は市独自に学生寮をもつ。本県関係では、東京都文京区に静岡県学生会館・富士寮があるのみである。
学生生活が実りあるものとなることは、Uターン就職を促す自治体や地域企業にとっても望むところと思う。目先の"コスパ"にのみ囚われることなく、地域として知恵を絞りたいところである。

投稿者:主席研究員 鈴木宏和|投稿日:2017年05月01日|

  • 主席研究員 鈴木宏和
  • No.67

長距離バスの魅力

 4月4日、新宿駅の隣に巨大バスターミナル「バスタ新宿」がオープンした。周辺約20カ所に分散していた長距離バスの停留所を集約し、青森から福岡までの38府県との路線や成田・羽田空港行きなど1日1,600便もの発着を捌さばく。乗降客世界一の鉄道ターミナル駅である新宿駅と繋がることで、長距離バス相互に加え、バスと鉄道の乗り継ぎの利便性が一気に高まったといえる。
 国交省の資料によると、「高速乗合バス(50km以上の路線の半分以上で高速道路を利用して運行する乗合バス)」の輸送人員は、平成25年度に1億986万人で平成元年の2.2倍。リーマン・ショック後の景気後退下に数年低迷したが、再び増加に転じている。ちなみに本県発着は、新宿以外に、渋谷、八重洲、横浜、甲府、名古屋、中部国際空港、京都、大阪などとの間で定期路線がある。
 東京では、バスタ新宿に続くバスターミナルとして、平成30年度に渋谷駅西口、33年度には東京駅八重洲口にも建設が計画されている。利用者の伸びに対応して、長距離バスの受入体制は一段と拡充の方向にある。
 長距離バスの魅力は、なんといっても料金が安いことである。静岡-東京の新幹線1人分の料金で、静岡-新宿のバスなら2人が利用できてお釣りがくる。もっとも所要時間は、「ひかり」の約3倍を要し、渋滞等による遅延も覚悟しなくてはならない。したがって、ビジネスユースは新幹線が一般的であるが、プライベートにおいてはケースバイケースで、バスもしっかりと利用者のニーズを掴んでいる。
 バスはエコノミー性だけでなく、路線設定の自由度が高いこと、空港や大型のレジャー施設に直接乗り入れられることも大きな特長だ。乗り換えの手間が少なく、マイカーやタクシーほどではないが、ドアツードアに近い便利さは、子供連れや大きな手荷物を携行する旅行者、高齢者には有り難い。
 そうは言っても、半日も乗車するとなると、さすがに億劫だが、ここで本県の立地が生きることになる。新東名は愛知県内区間が開通し、圏央道は今年度中に常磐道、東関東道までつながる。来年度には中部横断道も中央道以南が開通する予定である。周辺の高速道路網は格段に充実しつつあり、首都圏、中京圏、関西圏という3大経済圏はもちろん、信越、北陸、南東北等へ、バスが選択肢に成り得るエリアが広がっていく。
 長距離バス需要の底堅さは、その交通手段としての魅力はもちろん、本県の立地上のアドバンテージを再認識させてもくれる。ぜひとも、観光客誘致などで、その可能性を十二分に引き出していきたいものである。

投稿者:主席研究員 鈴木宏和|投稿日:2016年07月01日|

  • 主席研究員 鈴木宏和
  • No.60

クラウドファンディングの可能性

 事業者が、インターネットを利用して不特定多数の人々から、比較的小口の資金を幅広く調達する「クラウドファンディング」。IT化の進展や東日本大震災後の社会貢献意識の高まりなどを背景に、徐々に浸透しつつある。2014年における全世界の市場規模約2兆円(調達額)に比べ、国内は約200億円とまだ小さい。しかし、今年度は280億円が見込まれ、先々の拡大が予測されている(矢野経済研究所調べ)。
 クラウドファンディングは、資金提供に対するリターンによって3種類に大別される。まず、リターンがない「寄付型」は、被災地や途上国向け支援など、文字通り見返りを求めない、もしくは望めない社会的意義の大きな事業に適している。
 「金融型」と「購入型」はリターンが伴う。「金融型」では、リターンとして金銭(配当等)または株式が渡される。今年5月に改正金融商品取引法が施行され、1億円を上限にネット上で公募増資が可能となるなど規制が緩和されたことから、中小企業や不動産事業などの資金調達手段として普及していきそうだ。購入型」では、リターンとしてその事業で開発した製品やサービス、権利が提供される。こちらは、ビジネスだけでなく地域振興イベント(リターンは招待券など)やタレントの写真集出版(リターンは写真集やサイン引換券など)といったように幅広く利用され始めている。
 3種類それぞれ相性が良い事業のタイプがあるものの、共通するのは事業者と出資者との間が、「共感」という絆で結ばれていることである。事業資金を調達する際、金融機関や投資家など、プロを相手にアピールする最重要項目は、事業の収益性、安定性である。しかし、基本的に一般市民を相手にするクラウドファンディングにおいては、事業者の考え方や思い、社会的な効果や夢の広がりといった、価値観や魅力を訴え、気持ちを動かすことこそが肝となる。
 クラウドファンディングが浸透してきているのは、出資により「事業者を応援したい」、「感動を分かち合いたい」という市民が増えてきている証ということができる。また、アーリーステージの企業や様々なプロジェクトに対し、個人ができる資金支援が、税金や寄付を通じた間接的なものしかなく、潜在的な不満があったのかもしれない。
 いずれにせよ、クラウドファンディングはスモールビジネスにとって新しい資金調達手段であると同時に、市民にとって社会やコミュニティへの積極的な参画手段といえる。事業者のモラルハザード・出資者保護の問題などが顕在化してくる懸念もあるが、地域活性化の貴重なツールになり得るものだけに、健全な発展が望まれる。

投稿者:主席研究員 鈴木宏和|投稿日:2015年11月02日|

  • 主席研究員 鈴木宏和
  • No.52

農産物の輸出を考える

 農業が成長産業の一つに位置づけられて以来、「攻めの農業」という言葉を聞くことが増えた。
 「攻め」の方向の一つに輸出拡大がある。ちなみに、平成25年における全国の農林水産物と食品を合わせた輸出額は5,500億円。一方、輸入額は約16倍の8兆9,500億円と、圧倒的な輸入超過状態にある。政府は、日本の食に対して世界的に関心・評価が高まっている機を捉え、平成32年の輸出額を2倍の1兆円に伸ばす方針だ。
 そうした気運が盛り上がっている中、農産物の輸出に関しては、冷静に戦略を練る必要がありそうだ。輸出に関わる方々が口を揃えるのは、「『“メイド・イン・ジャパン”といえば売れる』といった想定は誤っている」ということである。
 まず、物流に係る経費や鮮度維持の問題、現地における商流の確保など、そもそも輸出が少なかったことにはそれなりの理由がある。たとえば、物流コスト、中間マージン等を加味すると、東南アジア現地での店頭価格は国内の2―3倍になる。富裕層がいる、中間層が育っているといっても、現地に駐在する日本人が値段に呆れるようでは販売量は伸びない。
 次に、農産物の安全・安心に関わる誤解もある。以前、輸入野菜において“毒野菜”問題が社会を騒がせたことがあり、それを契機に「やはり国内産は安全」という認識が一気に広がった。確かに、国内においては使用できる農薬や化学肥料の基準が明確にある。しかし、海外が杜撰かというと決してそうではなく、ほとんどの国が厳格に基準を設けている。農産物の輸出先として、シンガポール、香港などと並んで候補にあげられることの多い台湾は、むしろ日本よりずっと厳しく、国内基準で栽培した農産物では受け入れてもらえない可能性が高い。
 “おいしさ”に関する評価が高いのは間違いないが、どうすれば現地の競合品の何倍もの値段を納得してもらえるか、相手国の基準に適合する栽培が可能か、さらに、苦労して仕上がった農産物が店頭に並ぶまでの信用できる商流を構築できるのか。国内における産地間競争からの逃げ道であるとか、“日本食ブーム”がすべてを解決してくれるといった前提での取組みでは、持続的に輸出を拡大させることは難しい。東南アジアの一部では、日本の各産地が競って売り込みを掛けることで、合見積りで値引きを求められたり、販促費を当て込んで週ごとに○○県フェアを開くスーパーもあるなど、足下を見られるような状況もあるという。
 いうまでもなく、輸出拡大は、生産者の収益増大、経営体質強化に繋がってこそ意味がある。日本食ブームや昨今の円安はチャンスではあるが、くれぐれも消耗戦に陥らないよう実利が確保できる取組みであってほしいと思う。

投稿者:主席研究員 鈴木宏和|投稿日:2015年02月02日|

  • 主席研究員 鈴木宏和
  • No.40

はままつフラワーパークの改革に注目


 事業には多かれ少なかれ季節的な需要の変動がつきものである。とくに、観光産業はその影響が大きく、書き入れ時に如何に稼ぐか、他の期間をどう凌ぎ、底上げするかが経営の勘所の一つといえる。


 そういう業界にあって、思い切った運営により立派な成果をあげている観光施設に「あしかがフラワーパーク」(栃木県足利市)がある。年間入場者数は1 0 0万人にのぼり、国内のフラワーパーク・植物園の中でトップに君臨する。園の最大の売りは藤の花で、最盛期の4月から5月の1カ月間の入場者が5 0 万人に達するという。


 園長の塚本こなみさんは、女性初の樹木医であり、浜松市在住の方である。足利市内の藤の大木を当園に移植したことが縁で経営を任された。テレビや雑誌にも登場しているので、ご存知の方も多いと思う。
樹木医としての腕は、数々の大木の治療や移植の実績を見れば明らかである。さらに、業績が芳しくなかった園を、様々なアイデアと実践力、熱い思い入れによって再建し、日本一の園に育てたことが、経営手腕も一流であることを
物語る。


 
 その一端を紹介すると、まずは変動料金制である。シーズン毎に料金帯を設けた上で、当日の園内の開花状況に合わせ、100円刻みで入園料が動く。たとえば、藤の最盛期には900円から1, 600円の幅の中で、7月から2月は200円から600円の幅の中で決まる。花が多くても少なくても、満開でも散り際でもお構いなしの固定料金制とでは、園で働く方々の責任感や緊張感など気構えが全然違ってくる。


 また、営業時間は基本的に9時から18時までだが、最盛期の1カ月は7時から2 1時までに拡大する。それでも、ゴールデンウィークには7時前に正規の駐車場が満車となる。早起きの高齢者や前泊の旅行者のニーズに応えることで、ピークの山を一段と高く引き上げている。


 この塚本さんが今年4月、「はままつフラワーパーク」を運営する浜松市花みどり振興財団の理事長に就任された。改革の期待を背に、シーズン料金制の導入、朝食付きの早朝ウォーキングイベントの開催など、早くも塚本色を出し始めている。来年3月21日から6月15日まで開催される「浜名湖花博2014」の会場として、この1年間を正念場と捉え、並々ならぬ覚悟で改革に取り組まれておられるようだ。


 
 浜松市では、同じタイミングで、フルーツパークを(株)時の栖が運営することになった。こちらのトップも実績抜群の庄司会長である。お二人の指揮の下、それぞれが、今後どのように魅力を高めていくのか、楽しみに見守っていきたい。

投稿者:主席研究員 鈴木宏和|投稿日:2013年10月25日|

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