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  • 理事 山田慎也
  • No.107

読解力が低下している?

「一日の読書時間が0 分」の大学生が約半数、20代の新聞閲読率は1割以下、雑誌・書籍の販売量が激減...。どうも若年層を中心に、文章を読まない人々が増えているらしい。ニュースも小説もスマートフォンで電子版を読んでいる人もいるだろうが、気になる調査結果がある。高校生の半数以上が、単純な論理構成を含むごく基本的な文章を理解できていないというのだ。現代は、小中学生のときから「YouTube」で動画を見て過ごし、「LINE」で超短文をやり取りする時代である。つまり、"読まない"のではなく、読む習慣がないから、長い文書を"読めない"(理解できない)可能性がある。こうした読解力の低下は、 ビジネスの分野にどのような影響を及ぼすのだろうか。

たとえば、マニュアルや仕様書が読めないとなると、仕事の方法を理解していないことによるミスが増える。県内のあるホテルでは、客室清掃などの作業手順を文書で書いてもなかなか徹底できないので、動画マニュアルを作成したというが、そうした工夫ができない業務も多いだろう。

また、新聞や経済誌の特集記事、専門誌の論文などが読み込めないので、情報収集力が弱くなる。社会・経済情勢や時事問題の知識が不足するため、たとえば、顧客や取引先との会話が続かない、有益な人的ネットワークが作れない、いわば"仕事に厚みがなくなる"といったことも考えられる。

さらに、読解力のベースとなる論理構成力も低下しているとすれば、たとえば、顧客への提案営業も難しくなろう。複雑な顧客のニーズや課題を理解・整理した上で、有効な解決策を構成・文書化して提案することが必要となるからだ。

加えて中長期的な視点で見た場合、将来、デジタル化が急速に進展していく中では、 読解力低下の負の影響がより先鋭化する危険性を孕(はら)んでいる。デジタル技術が普及すると定型業務はAI(人工知能)等に置き換わり、それ以外のデジタル処理に馴(なじ)染まない業務が残る。それはたとえば、顧客のニュアンスを汲み取り、企業側の思いを伝えながら共感を得るといった、読解力を要する業務だ。その良し悪しが事業の成否を左右することになり、企業の付加価値の源泉となるだろう。

これからの企業の成長にとって、デジタル技術の活用が重要であることはもちろんだが、実は、その根底を支えるのは従業員の読解力なのかもしれない。情報を伝達する媒体として、文章ではなく短文や映像のほうがわかりやすいという面は確かにあるが、その背後で論理的な思考力の低下が同時に進行し、さらに拍車がかかっているとすれば、危惧すべき深刻な問題だ。

今後、仮にこうした読解力の低下が広がっていくとすれば、人の基礎的な能力であるがゆえに外から見えづらい分、企業にとっては対処しにくい不気味なリスクといえる。

投稿者:理事 山田慎也|投稿日:2021年09月06日|

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