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  • 研究員 高橋晴美
  • No.0337

日本酒と地域振興

 4月は花見や歓送迎会など酒の席が多くなる時期だ。酒には、ビール、焼酎、ワイン、ウィスキーなどさまざまあるが、中でも今私が注目したいのは「日本酒」である。

 日本酒の生産量のピークは、高度経済成長とともに兵庫や京都などの大手酒造メーカーが規模を拡大していた昭和40年代後半頃に最盛期を迎えるが、それ以降はゆるやかな右肩下がりを続け、ここ数年も消費者の嗜好の多様化や若者の酒離れなど需要の低迷により苦戦している。一方、事業者数についても、全体の99%が中小メーカーという構造の中で、廃業や後継者難などの理由から減少の一途をたどっている。

 静岡県については、現在、酒造メーカーは約30社、出荷量では全国順位のほぼ真ん中に位置しているものの、多くは小規模メーカーでシェアは全国の1%に満たない。ただ少量ではあるが、品質面では純米酒や吟醸酒といったいわゆる特定名称酒の比率が、全国平均が2割強なのに対して本県は8割と非常に高い。つまり、少量でも高品質な酒造りが定着しているのだ。【参考:2009年10月号SERIまんすりー調査「価値を伝え、市場を切り拓く“静岡地酒”」】

 こうした中、地元では静岡地酒の魅力をもっと多くの人に知ってもらおう、飲んでもらおうとさまざまな取組みがなされている。たとえば、蔵元が地域の人を呼んで祭りを開き酒を振る舞って交流を深めたり、最近話題を集めているのは静岡市内で開催された「はしご酒」という居酒屋リレー方式の日本酒を飲むイベントである。イベントといっても申し込みは不要で、開催日の決められた時間内に会場となっている市内5店舗の居酒屋を回るというもので、1店舗につき1,000円で地酒とオススメ料理が味わえ、店には有志の県内蔵元(杜氏)やスタッフが待機している。参加者は自分たちのペースで日本酒を飲みながら店をはしごし、普段滅多に話ができない蔵元と交流もできる。

 宣伝は口コミとチラシだけというのにもかかわらず2年目を迎えた今年は去年の2倍以上の人が集まったという。注目したいのは、こうした“飲んでもらう仕掛けづくり”は、地元の居酒屋や蔵元、その仲間の手作りによるものであるということである。巷では景気が良くない、地域が活性化しないと悲観的な声を良く聞くが、知恵と工夫があればお金をかけなくても活気づける方法はあるわけで、決してネガティブになることはないのだ。

 本イベントは、次回は清水でも開催されるようだが、おそらくまた多くの人が賛同し、賑わいをみせるだろう。酒のご縁とは不思議なもので、これをきっかけに人と人との何か新しいつながりが始まるかもしれない。日本酒ファンの一人としても、こうした取組みが広がることで潜在需要の掘り起こしと、加えて街の活性化、業界の活性化にも期待したい。

投稿者:研究員 高橋晴美|投稿日:2010年04月23日|コメントを読む(2)コメントを書き込む

コメント一覧

 今般の地域振興、たべもの大好き人間としては何ともありがたい限りです。

 地域の様々な味わいは誰しも旅行の何よりの楽しみです。様々な地域に伺って、その精神・文化に直接触れる機会は何物にも代え難いものです。

  我が国の産業構造も、必ずしも、牽引企業=大企業と言う構図ではないと考えています。牽引企業=地域の中小企業と言う構図も在りだと思います。

 この様な産業構造が醸成されたなら、より魅力的、個性的、精神性豊かな地域社会、国家が構築され、世界からも注視される事でしょう。我が国への期待度も様々な状況で確実に高まるものと思います。

 昨今の景気後退の現出は各論的にも地域振興の根幹が何によって構築されるべきなのか、判断出来ていない事に起因していると思われます。

 価値の具現化をどの様に行うべきか、その真価が問われている昨今です。

 今、我が国は真の価値の創造と形成、その展開方法と方向性を早期に構築すべき時期です。日本の「ものづくり」が危機的状況に在る事は周知の通りです。

 中小企業論がすべてと言う展開するつもりはありませんが、地域振興、国家戦略の解は真の意味ですばらしい地域の中小企業の中にこそある様に思えてなりません。決して大企業の中には無い様に思われます。

 日本社会が画一的社会からより個性を楽しみ、尊重する社会になる事を願っている一人として、より地域振興が発展的に展開される事を願って止みません。全国各地の地域振興の行方も楽しみです。

コメント投稿者:須藤 悦康 |投稿日時:10/04/27 20:58

須藤さん、コメントをありがとうございました。
日本酒のポテンシャルは非常に高く、今後も地域振興との相乗効果は大いに期待されます。また、一部の蔵元ではすでに取り組まれている世界市場を巻き込んだ戦略も大いに可能性があると思います。
日本酒製造業は、国内でも有数の歴史、伝統、文化のある業界ですので、これからもその良さを残しつつ国内外への飛躍を期待しています。

コメント投稿者:静岡経済研究所 研究部 高橋晴美|投稿日時:10/04/28 15:37

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