羅針盤

ホーム > 羅針盤 > 常務理事 大石人士

常務理事 大石人士 のコラム

  • 常務理事 大石人士
  • No.74

"匠の技"を継ぐ 人材育成を

全国の熟練技能者が「技」の日本一を競う「技能グランプリ」が、今年2月に静岡県で開催された。地方開催は珍しく、本県は東京都に次いで2番目に多い34人と過去最大の選手団を結成。"ものづくり県静岡"のトップの「技」を全国にアピールした。
技能グランプリは国内最高峰の技能競技大会で、出場できるのは特級、1級などの技能検定に合格した技能士のみ。種目は旋盤、フライス盤、建築大工といったものから、婦人服製作、和裁、日本料理、レストランサービスなど30種目と多彩。技能士の日々の修練による技能レベルの向上はもとより、在籍する企業内における技能の継承やチームワークの強化など、大会の意義と効果は大きい。
建築大工種目では、課題図に示された複雑な形状の「小屋組み」(屋根部分の骨組み)を制限時間内に製作し、墨付けの正確さや木削りの素早さなどを競う。選手は真剣な表情で作業に没頭し、会場は張りつめた空気に包まれ、見る者を圧倒する。 
ひるがえって県内産業界を見渡せば、若者の「技術・技能離れ」が言われて久しく、いま、製造業や建設業等において技術・技能を持つ労働者の不足が問題となっている。近年の若年人口の減少がこれを加速し、本県産業の将来に深刻な影響を及ぼすことが危惧されている。
静岡県が策定した「第10次職業能力開発計画」においても、"技術・技能を尊重する社会の実現"が主要な柱の1つとなっている。技術・技能の重要性や必要性を広く県民に理解してもらい、尊重する機運の醸成を図っていかなければならない。
具体的には、小・中・高校生の段階から「ものづくり」に触れる機会をつくり、ものづくりの楽しさや技能の大切さを伝えていく必要がある。これは若者の勤労観や職業観の醸成にもつながる。また、技術士・技能士等の社会的評価の向上も欠かせない。技術・技能を継承する意識の向上、優れた技能者の表彰や活躍の場の確保など、まさに技能グランプリ等を通じて技能の素晴らしさをPRしたい。
さらに、技術・技能継承に取り組む中小企業に対しては、県内3カ所の技術専門校を活用した在職者訓練や、昨年から開始された県と地元大手メーカーとの人材育成協定など、製造現場での実践経験に裏打ちされた人材育成にも大きな成果が期待される。
ものづくり県静岡を支える"匠の技"の継承は、こうした意識の醸成から現場での実践まで、地域一体となった人材育成によって実現していくものといえよう。

投稿者:常務理事 大石人士|投稿日:2017年04月04日|

  • 常務理事 大石人士
  • No.66

レガシー(遺産)効果をいかに高めるか

 まもなくブラジルでリオ・オリンピック(五輪)が始まるが、4年後の2 0 2 0年に向け、2つの世界的スポーツイベントが静岡県内で開催される。「ラグビーワールドカップ2 0 1 9」の会場の1つにエコパスタジアム(袋井市)、「2 0 2 0年東京オリンピック・パラリンピック」の自転車競技が伊豆ベロドローム(伊豆市)で開催されることが決定している。
 ラグビーワールドカップは、夏季五輪、サッカーワールドカップに次ぐ、世界3大スポーツ祭典とされ、テレビ観戦者数は世界で4 0億人といわれる。開催期間は約7週間と夏季五輪の2週間より長く、昨年日本チームの活躍で話題となったイングランド大会での観客動員数は約2 5 0万人。開催地の経済効果に期待が膨らむ。
 一方、オリンピック自転車競技は、トラック、マウンテンバイク、ロードレース、BMXの4競技のうち伊豆で開催されるのは、スプリント、ケイリン、オムニアムなどのトラックと、未舗装のコースを周回する形式のマウンテンバイク。トラックで6日、マウンテンバイクで2日程度だが、首都圏以外での五輪開催、しかも富士山をバックに伊豆の魅力を世界に発信する絶好のチャンスとなる。
 この機会を活かすためには、選手や観客の受入態勢について官民を挙げた準備が必要だ。会場や周辺道路、WiFiなど情報環境の万全な整備、宿泊・小売業等における多言語・多文化への対応、さらには"おもてなし"を担う草の根のボランティアの育成。いずれも2 0 0 2年のFIFAワールドカップ(サッカー)開催で経験済み。入念な準備が欠かせない。
 近年のスポーツイベントでは、大会中の盛り上がりだけでなく、大会終了後も長年にわたって続く『レガシー(遺産)』効果が重視されている。半世紀前の東京五輪では、スポーツのメッカとなった国立競技場等の競技施設、交通インフラとしての東海道新幹線や首都高速道路、メモリアルとしての体育の日の制定などが、有名なレガシーとして挙げられる。
 開催効果を一過性のものにとどめず、地域の継続的な振興に役立つものとするためには、大会終了後を見据えて、スポーツを通じた交流を地域に根付かせるような取組みも求められる。すでにチームキャンプ地誘致や、スポーツ交流だけでなく文化・観光交流プログラムの検討を始めた自治体もある。大規模スポーツイベントを契機とした有形・無形のレガシーをいかに創出し、次世代に継承していくか。官民の知恵を結集し、静岡ならではの仕組みをつくり上げていくことを期待したい。

投稿者:常務理事 大石人士|投稿日:2016年06月01日|

  • 常務理事 大石人士
  • No.58

採用にひと工夫で“自社にとって優秀な人材”確保を

 いよいよ8月から、2016年3月新卒者の採用選考が大手企業でスタートする。経団連が発表した「採用選考に関する指針」により、今年は就職・採用活動スケジュールが大幅に変わった。新ルールは、学生の学業優先などを理由に、企業説明会の解禁を大学3年次の12月から3月に、面接などの選考開始を大学4年次の4月から8月にそれぞれ繰り下げた。ただし、正式内定は10月1日に据え置かれたため、選考期間が短期化している(本誌6月号・特集「今年の就職環境と採用活動の留意点」参照)。
 では実態はどうか。大手就職情報会社の調査によると、6月末時点での内々定率はすでに44.2%。景気回復で企業の採用意欲が高まり“売り手市場”となる中、経団連に加盟しない企業や外資系などで早い時期から内々定が出されている。また加盟企業の一部でも、インターンシップを利用した選考やリクルーターの活用などにより学生との接触機会を増やして絞り込みが進み、「すでに今年の就職採用活動は中盤から終盤へ」とも言われている。
 こうした激しい人材争奪戦により、地方の中小企業では、欲しい人材の確保や採用計画数の充足が一層厳しくなっている。従来はUターン学生の応募を見据え、大手の採用が一巡した後に選考を行ってきたが、今年は選考期間の短期化により、都市と地方の選考日程が重複したり、あるいは大手より先に地方企業が選考を行うケースも見られる。一方、学生の就職活動も、すでに複数の内々定を得ていながら「本命企業はこれから」と、8月以降も就職活動を続ける学生が多い。これは必然的に8月以降の内定辞退の増加につながり、企業にとってはそれを補うための追加募集も必要となってくる。
 近年の特徴は、内定が集中する学生と内定が全くもらえない学生の2極化、応募が殺到する企業と応募が少ない企業の2極化。とくに今年はその傾向が一層強く、学生、企業ともスケジュールや活動状況が掴めず不安感を持っているようだ。
 これからは若者人口が減少していく。人材採用難は今後も続くと考えられ、一時をしのげば解決するという問題ではなさそうだ。自社が本当に欲しい人材をいかに確保するか。単に応募者を多く集めるだけでなく、自社への強い入社意欲や将来の戦力になる学生を見極めること。中小企業にとって必要な人材は、“一般的に優秀な人材”ではなく“自社にとって優秀な人材”であるはず。そのためには、何度も学生と顔を合わせて理解を深めることや早い段階から経営者自身が関わることなど、採用に手間をかけた“ひと工夫”が必要。企業の思いや仕事の内容、社風、さらには地方企業だからこそ持つ可能性や、静岡で働く魅力などを、学生に確実に伝えていくことが大切である。

投稿者:常務理事 大石人士|投稿日:2015年08月03日|

  • 常務理事 大石人士
  • No.48

開業50年を迎える東海道新幹線への感謝と期待

 今年10月1日、東海道新幹線が開業50年を迎える。営業開始は昭和39年の東京オリンピック開幕直前。「夢の超特急」と呼ばれ、高速交通時代の幕を開いた新幹線は、これまでに累計55億人超の乗客を運び、沿線地域の経済や暮らしに大きな変化をもたらしてきた。とりわけ静岡県経済にとっては、東京との結びつきが強まり、東京経済圏へと組み込まれていく転機となった。
 開業当初、静岡県内には熱海、静岡、浜松の3駅が開設され、その後、昭和44年に三島駅、昭和63年に掛川駅と新富士駅が開業した。政令指定都市となった静岡市、浜松市にとっては、新幹線がもたらした人の移動・交流が産業、文化などあらゆる面で都市の成長に貢献したといえる。移動時間の短縮は、ビジネスにおける東京への日帰り出張を可能とし、つながりの薄かった遠隔地との新たな交流を生むことにもなった。熱海では、首都圏からの観光客に加えて関西方面からの観光客が増加し、三島では、東京通勤圏に組み込まれて新幹線通勤・通学者が増加した。掛川や富士は、周辺市町も含めて企業誘致や観光客誘致の大きなアピールポイントとなった。
 一方、高速交通網の発達は、地域に利便性をもたらすとともに、大都市への一極集中や地方都市の素通り現象も生じさせ、地方都市の活力が大都市に吸い上げられることにもなった。現在の地方の人口減少問題も、そこに一因があろう。また、山陽、東北、上越、山形、秋田と、新幹線が全国に延伸され、静岡県の立地優位性が相対的に低下したことも、現在の静岡県経済の実態を見る上では欠かせない視点である。
 こうした東海道新幹線50年の実績のもと、今後、リニア中央新幹線の準備が着々と進み、整備新幹線の延伸も、九州に続き来年は北陸、再来年は北海道と、いよいよ北から南までつながる。東海道新幹線にも、新たな役割が期待されるところだ。
 リニア中央新幹線の主な利用者が今までの“のぞみ”客となるなら、当然、“ひかり”や“こだま”の運行形態も変わり、駅や周辺の位置づけも変わる。都市の個性が薄れたといわれるが、新幹線駅こそ都市や地域の新しい顔となって欲しい。そこには、かつてのモノづくり都市、商業都市、観光都市といった経済的なイメージだけでなく、音楽都市、スポーツ都市、教育都市、健康都市のように新たな地方都市の姿を映し出すことが期待される。また、空の玄関である富士山静岡空港、海の玄関である清水港・御前崎港・田子の浦港、そして東名・新東名のダブル高速道路といった交通ネットワークと接続し、地域の経済や暮らしに活かしていく工夫も求められる。
 東海道新幹線の50年に感謝するとともに、今後の新たな役割に期待したい。

投稿者:常務理事 大石人士|投稿日:2014年08月01日|コメントを書き込む

ページの先頭へ

入会お申し込み・資料請求について 入会および維持会員への切り換えなどに関するご照会・お問い合せは、総務部会員担当までご連絡ください。
また、入会資料の送付をご希望される方は、入会お申し込み・資料請求フォームよりお申し込みください。電話番号 054-250-8750 E-mail info@po.seri.or.jp 受付時間 9:00から17:00 祝日 土・日・祝除く入会お申し込み資料請求フォーム

  • 維持会員専用サイト

カテゴリー

最近の投稿

月別

  • サービス案内
  • 財団法人 静岡経済研究所 書籍のご案内
  • 静岡経済がわかるリンク集
  • 静岡県内事業者一覧
  • 研究社員紹介
  • マーケットプラザ