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- 研究部長 大石人士
- No.0166
モール型ショッピングセンターは生活者に時間消費空間を提供
昨年8月、浜松市志都呂に開店したモール型ショッピングセンターは、地域に大きな衝撃を与えた。店舗面積56,000平方メートルは静岡県内で最大規模のものであり、地元消費者も体験したことのないショッピングゾーンであった。そして今年6月には、同じく浜松市市野に同型の約35,000平方メートルのショッピングセンターがオープン。今後も秋には、静岡市内で約25,000平方メートルのモール型ショッピングセンターが開店予定であるほか、県内各地で大規模店の出店計画がある。
ただし、こうした流れは既に10年ほど前からみられ、21世紀に入った5年前ぐらいから一気に増加してきており、県外では大都市圏や郊外の地方幹線道路沿いを中心に展開が進んでいた。さらにルーツを遡れば、モール型ショッピングセンターは十数年前のアメリカで急速に展開が進んだショッピングセンター形態であり、アメリカ型の流通業を追いかけている日本にも、いずれはモール型ショッピングセンターの時代が来ることが予想されていた。
特に、両翼に大型店を配置し、その間を数十店から百店近くの専門店がつなぐ「2核1モール型ショッピングセンター」は、買い物の便利さと楽しさが得られるショッピングゾーンとして、消費者、というより生活者の支持を集めている。つまり、単に買い物をするだけや、品揃えの豊富さ、価格の安さを受けたいのなら従来の大型ショッピングセンターで十分であったが、そこに、時間を楽しく消費したい、さまざまな生活情報を得たい、コミュニケーションの場が欲しいとなると、ゆとりの空間、高い商品構成力、自分のライフスタイルの一部に取り入れられるような空間を求めることとなる。
これは、ひょっとしたら地域の消費者が昔の商店街に求めていたものと、ある意味で同じかなと思われる。商店主が自分の個性を発揮して各地から集めた商品を、人通りの多い駅前通りなどで商いし、その魅力に惹かれて地域の消費者が集まり、賑わいが生まれた。また、別の見方をすると、最上階にレストランがあり、屋上に遊園地があって一日過ごした、かつての百貨店とも通じるものがあると思われる。要は、一日とまでは言わなくても、買い物をしながら半日楽しく過ごせる空間として、モール型ショッピングセンターが受け入れられているとみることができよう。
ところで、5万平方メートル程度のショッピングセンターとなれば、250億から300億円の年商を目指すことになるので、当然、地域の商業には影響が出る。ただし、その影響の出方は一概に言えるものではない。意外なところで大きなマイナスの影響が出たり、意外なところでプラスの影響が出たりする。
近隣で同じような商品を扱っている店は大きな影響を受ける。また、モール型ショッピングセンターは幹線道路沿いに立地するので、たとえ数十キロ離れていても、幹線がつながっていて車で30分程度の距離であると、やはり大きな影響が出てくる。その結果は、意外にも中小の店より中堅程度の店の方が大きな影響を受けることになる。
一方、出店をプラスに考えている店もある。ショッピングセンターの近隣に立地していて、集まってくるお客さんを取り込もうとする作戦である。また、同じ理由で、ショッピングセンター近くに新たに出店してみたいという店もある。こうして、周辺にはさらに商業の集積が進み、それらが全体として地域の商業構造を変えていくことになるだろう。もちろん、それと前後して人口の移動も生じ、新しい街が形成されていくことになる。
では、これまでの地域商業はダメなってしまうのかというと、これも一概に言えることではない。前述したように、これをきっかけに、新しい店舗展開を進めようとする商業者が必ずいるからである。そして何より、消費者・生活者が毎日毎日、モール型ショッピングセンターで買い物し、時間を消費しているかといえば、それは絶対にありえない。毎日出掛ける人もいるが、それはわずかであり、週末、あるいは多少とも遠方なら、遊びながら月に1度、あるいは2カ月に1度の来店かと思われる。これについてはショッピングセンター側も、多くの顧客が毎日来店してくれることを期待してはいないと思われる。もちろん多頻度で来店してもらうに越したことはないが、広い商圏設定の中で、2、3カ月に1度来店してもらい、半日、できれば一日楽しみながら消費してもらうことを狙っているようだ。
こうしてみると、ショッピングセンターが近くに立地しても売り上げが落ちない商店は、ショッピングセンターにない独自の品揃えや接客サービスなどで差別化して対応し、固定客の支持を集めている店となる。また、商店街も、モール型ショッピングセンターの良さを再確認し、それは本来自分たちが持っていたものだということに気づく必要があると思う。ショッピングセンターは、ただ単に商店の集合体であるのではなく、全体として生活者に何を提供したら喜ばれるかを、商品やサービスの購入だけでなく生活時間を消費する空間として、しっかりとマネジメントしている点が重要であろう。
投稿者:研究部長 大石人士|投稿日:2005年08月26日|
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