主任研究員 大石真裕 のコラム
- 主任研究員 大石真裕
- No.0312
ギャルも芸能界も企業も農業を目指す!?
皆さんは、「ノギャル」をご存知だろうか。東京・渋谷のギャル(若い女性)を対象にしたマーケティング会社の社長だった藤田志穂さんが、若者の農業への理解を深めようと始めた農業プロジェクトの名称で、“農業をするギャル”を略したものだ。「イケてる農業」をコンセプトに秋田県で米作りを始め、秋には「シブヤ米」として売り出すことが予定されている。さらには、富士宮市において野菜作りにも挑戦、またアパレルメーカーと提携して「イケてる農作業着」のプロデュースにも取り組んでいるという。
一方、大手芸能事務所の?アミューズでは、「ららら農業プロジェクト」を発足させている。エンターテインメント企業の立場から、農業への関わり方や未来の農業のあり方を考え提案しようというもので、千葉県内に農地を借りて社員や所属アーティストが農作業に挑戦したり、農業情報番組「畑のうた」(テレビ東京)の制作を行っている。
このほかにも、大手小売業や外食産業が直営農場を拡大したり、植物工場を手掛けたりと、ここにきて農業が新たなビジネスチャンスとして脚光を浴びている。しかし、冷静に振り返ってみると、農業総産出額はピーク時の7割に縮小しており、総農家数は40年で半減、基幹的農業従事者の高齢化率は6割に迫るなど、決して明るい状況にはない。
新たな担い手として企業などの参入も期待されているが、一朝一夕には進まないだろう。農業は自然を相手にする事業のため、計画生産、品質管理が難しい。その上、2つのミスマッチ(人材と農地)も壁となろう。人材ミスマッチは、高齢者介護市場がそうであるように、ニート、フリーターを農業に従事させればいいという単純な問題ではない。そして貸し出される農地は、作業が困難で生産性の悪い中山間地域などの土地が多いと思われ、借り手の企業が望む“好物件”は多くないかもしれない。
6月の農地法改正によって、自作農主義からの転換が図られたが、農業の活性化には、これまでの延長線上ではない農業政策の見直しが求められる。加えて、農作物をそのまま出荷するのではなく、農業者自らが加工して付加価値を高め売っていく“6次産業化”によって、儲かる事業にしていくことが重要ではないか。また、「定年帰農」「半農半?」といったライフスタイルを選択する人々が登場し、市民農園や体験農業が注目されるなか、農業をいきがいや趣味と位置づける生活者と中山間地域などの小規模農地とを上手くマッチングさせていくことも必要だろうか。機会があれば、腰を据えて調査してみたいテーマである。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2009年08月10日|コメントを書き込む
- 主任研究員 大石真裕
- No.0296
消費者が商品情報の入手に最も利用するツールは・・・
昨年12月、静岡県民500人と東京都民500人を対象に、「消費行動に関するアンケート」調査を行った。その中で、「商品・サービスに関する情報をどこから入手しているか」を質問したところ、静岡県民で最も多かったのは「テレビ」で、70.8%の方が回答した。IT技術が進歩する中でも、やはりテレビは、消費者の注意を喚起する最有力メディアとなっている。テレビに続くのが、「新聞の折り込みチラシ」(65.0%)、「カタログ」(53.8%)、「ネットの企業サイト」(51.6%)、「ネットの比較サイト」(49.4%)などだ。チラシ、カタログといった紙媒体が2位、3位を占めたが、家に居ながらにして商品情報を検索できる、インターネットも上位に食い込んだ。
一方、東京都民500人の回答は、やはり「テレビ」が第1位(72.6%)であったが、2位には「ネットの比較サイト」(54.0%)がランクインした。以下、「カタログ」(53.8%)、「ネットの企業サイト」(49.4%)、「家族・友人・知人」(45.6%)となった。第5位の「家族・友人・知人」は静岡を6.6%上回る回答率となったが、静岡と東京の差が最も大きかったのは「新聞の折り込みチラシ」だ。前出の静岡(65.0%)に対して東京は44.8%で、その差は20.2%に上る。その要因については、東京都における新聞販売の状況を調べてみないと確かなことは言えないが、定期購読率の違いが一因としてあるのではないか。サンプルの属性をみても、東京は学生や1人暮らし世帯が多く、個人情報流出に対する過度な懸念もあって、新聞の定期購読率が静岡よりも低いのではないだろうか。
最後に、静岡県民500人を年代別に分け、最も若い20歳代と年長の60歳代以上を比べてみると、20歳代でも「テレビ」はトップ(66.0%)となり、続いて「新聞の折り込みチラシ」(56.0%)、「雑誌」(54.0%)、「カタログ」「ネットの企業サイト」(ともに47.0%)となった。
60歳代以上でも「テレビ」(69.0%)は最多で、若者と共通する。しかし、第2位には、「新聞」並びに「新聞の折り込みチラシ」(68.0%)が入った。新聞は、年齢が増えるほど回答率も高まる傾向にあり、高年齢者を対象に広告をする媒体として有効といえそうだ。
逆に、若年齢層がよく活用する媒体は、同じ紙媒体でも「雑誌」や「フリーペーパー」であった。また、低い年代ほど、「ネットの個人サイト」や「小売店の店主・店員」「家族・友人・知人」も多くなる傾向にあり、若年層は、自身の決断を促してくれる、誰かの一言(お墨付き、批評等)を求めているのかもしれない。
※今回の「消費行動に関するアンケート」調査結果は、弊所月刊誌「SERIまんすりー2009年2月号」(2月1日発行)で、「特集/静岡県民の消費スタイルを探る」と題して、詳しく分析しています。もし興味がわきましたら、当所あてご用命下さい。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2009年01月23日|コメントを書き込む
- 主任研究員 大石真裕
- No.0277
ジョハリの窓
最近、ES(従業員満足度)という言葉をよく耳にするが、先日訪問した会社では、20年以上も前から従業員満足を大切にする経営を実践し、業績を向上させていた。
同社の代表的な取組みに、「デイリーニュース」がある。従業員が1日の仕事での感想、気づき、問題などを日報に記して本社に送り、それを社長が整理して、自身の考え・意見、指示を書き、全拠点にFAXするというものだ。「雨の日に外でお客様を見送ったら、とても感謝された」「生産性が上がってきたので、他部署に人をまわせそう」など、いろいろな声が寄せられ、緊急性の高いものには、すぐに電話で指示を出す。この「デイリーニュース」は、現社長が就任して以来20年近くにわたって、毎日欠かさずに行われていた。
最初は、従業員とのコミュニケーションを密にするために、社長が一方的に発信する形でスタートしたが、社長の思い・姿勢が従業員にも伝わり、今のような形へと発展した。それによって、社内で何が起きているのか、社長は何を考えているのかなど、情報の共有化が図られ、従業員の気持ちを1つにしているという。同社社長は、「社員も家族」と言い、絆を大切にした大家族的経営を重視する。気兼ねなく思いを伝え合える「デイリーニュース」は、業務日誌というよりも、“心の交換日記”だと感じた。
コミュニケーションの円滑な進め方を考えるために提案された、コミュニケーションの分析モデルに「ジョハリの窓」がある。これは、自分自身を「自分が知っている/知らない」「他人が知っている/知らない」という2つの視点から見つめ、「開放された窓(自分も他人も知っている部分)」「盲目の窓(他人は気づいているが、自分では分っていない部分)」「隠された窓(自分は知っているが、他人は知らない部分)」「未知の窓(自分も他人もまだ知らない部分)」の4つに分類するものだ。スムーズなコミュニケーションのためには、「開放された窓」を大きくし、「盲目の窓」「隠された窓」を小さくしていくことが重要であるとされる。
これを会社に置き換えてみても、従業員は社長の思い・考え方を知っていることが望ましく、社長も従業員のことを理解している必要がある。それが、先の会社のような風通しの良さ、職場の活力へとつながっていく。伝える努力、知る努力、そして自己を改善する努力を大切にしたいものである。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2008年08月01日|コメントを読む(2)|コメントを書き込む
- 主任研究員 大石真裕
- No.0259
ひと手間かけた食の提供を
製造品出荷額が全製造業の約1割を占めることから、俗に「1割産業」と呼ばれ、わが国経済において重要な役割を果たしているのが、食品製造業である。
先日訪問した、フジ日本精糖清水工場では、世界で初めて砂糖からイヌリンを生産することに成功し、「フジFF」として製造販売している(国際特許出願中)。イヌリンとは、水溶性食物繊維の一種で、チコリやキクイモ等に多く含まれ、低カロリーで整腸作用、血中脂質の低減、血糖値の上昇抑制、ミネラルの吸収促進効果などが確認されている。欧州では、それらの植物から抽出したイヌリンを糖尿病患者の栄養補助剤などとして利用しているというが、同社の「フジFF」は、微生物酵素を反応させて作ることで、品質安定性の高い高純度イヌリンを生産できる優位性を持つ。「フジFF」は、無味無臭の白色粉末で、食品本来の風味を損なうことがないため、さまざまな食品に利用できる。さらに、一定濃度で水に溶かして冷却すると微細結晶を形成し、生クリームに似た食感が得られ、保湿性向上や苦味渋味のマスキング効果も得られることから、バターやショートニングなどの脂肪代替素材として販売に力を入れ始めている。
また、日東富士製粉静岡事業本部では、静岡県の特産品である温州みかんを原料とする「温州みかんパウダーV」を製造販売している。温州みかんには、他の柑橘類と比べてβクリプトキサンチンが圧倒的に多い。これは、リコピンやβ-カロテンと同じカロテノイドの一種で、発ガン抑制や糖尿病、骨粗鬆症予防に効果があるといわれている。「温州みかんパウダーV」は温州みかんを物理的に粉末乾燥したものであり、色素・香料は一切使っていないことから、鮮やかな黄色味とほんのりとした香りを付けることができる天然食品素材として、パン、ケーキ、麺、デザートなど幅広い活用が可能であり、同社でも、みかんパウダーを使ったホットケーキミックスやそうめんを製造販売している。
こうした素材は、他の食品メーカーも広く使うものだけに、大きな影響力を持つ。他社との差別化を模索しながらも、経営資源を研究開発等に振り向けられない中小メーカーにとって、こうした素材を活かした製品開発も1つの特長となろう。さらに、焼津水産化学工業では、同社が開発した「低塩しょうゆ・塩」を原料とする健康志向食品の開発を他の食品メーカーに呼びかけ、統一ロゴ『食事の塩分が気になる方に』による一体的なブランドとして売り出していこうと提案、多くの賛同者を集めているように、意欲ある食品メーカーが集まり、“ローカルブランド”を立ち上げていけば、販路・需要開拓でも大きな力となるのではないだろうか。
食品製造業にとって、人口減少による国内マーケットの縮小は大きな転換点といえる。弊所『SERI経済ファイル』(3月1日発行)では、「静岡県食品製造業の現状と展望」に関する調査を実施しており、是非そちらもご覧いただければと思う。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2008年02月22日|コメントを書き込む
- 主任研究員 大石真裕
- No.0238
あらゆる機会が学びの場となる
先日、静岡県内のある企業を訪問した。主に、プーアール茶などの健康茶をはじめとする健康関連商品の通信販売を手掛けるこの会社は、驚くほどの勢いで業績を伸ばしており、平成8年に約6億円であった売上高が、平成18年には約54億円と9倍にもなっている。
急成長の要因には、いくつか考えられる。たとえば、リピーターを増やすための仕掛けづくりだ。通販カタログでは、商品を紹介する写真や説明文にウエートを割くのではなく、顧客の感想・体験談をふんだんに掲載し、すべてのページに社長の一言が添えられる。時には、同社の商品を使って効果がなかった顧客のハガキが見開きで掲載されることもあるが、こうしたマイナス情報の提供も顧客の信頼獲得につながっているようだ。
また、顧客からの手紙には、すべて返事を返すという。それも手書きでだ。一日に数百通の手紙が届くというが、社長、従業員で対応している。経営効率だけを考えればできることではないが、「よろこんでもらえる喜び」を社是とする同社の姿勢が根底にはある。
そして、ヒット商品の開発である。同社が開発したプーアール茶は、くせがなくて飲みやすく、ダイエット効果の評判も口コミで広がり、現在では全売上の4割強を占める屋台骨となっている。同社は、「健康」をキーワードに新商品の取扱いを増やしてきたが、顧客の声がヒントになったり、顧客の要望に応えたものが少なくないという。売上全体の約15%を占める基礎化粧品も、こうした過程を経て3年ほど前に開発されたもので、次期主力商品に成長している。
このような話を聞いて、松下電器グループ創業者・松下幸之助氏の次のような言葉を思い出した。
「人は教わらず、また学ばずして何一つとして考えられるものではない。幼児のときは親から、学校では先生から、就職すれば先輩からというように、教わり、学んでのちはじめて自分の考えがでるものである。
学ぶという心がけさえあれば、宇宙の万物はみな先生となる。物言わぬ木石から秋の夜空に輝く星くずなどの自然現象、また先輩の厳しい叱責、後輩の純粋なアドバイス、一つとして師ならざるものはない。
どんなことからも、どんな人からも、謙虚に、素直に学びたい。学ぶ心が旺盛な人ほど、新しい考えをつくり出し、独創性を発揮する人であるといっても過言ではない。」(PHP総合研究所編「松下幸之助一日一話」より『学ぶ心』)
先の会社では、顧客の声から商品開発のヒントを得ていたが、もし「よろこんでもらえる喜び」の実践にまい進していなければ、同じ情報を見聞きしても右から左へとすり抜けていただろう。問題意識を持っていれば、日常生活の何気ない場面からも課題解決のヒントを得ることがある。常に、学ぶ心を持ち、自らを高めていきたいものである。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2007年08月21日|
- 主任研究員 大石真裕
- No.0231
商店街再生の新たな試みに注目-香川県高松市
東京ミッドタウンや新丸の内ビルディング、ミッドランドスクエア(名古屋市)、なんばパークス(大阪市)など、大都市圏で再開発プロジェクトが相次いで完成している。これらの施設には一度は行ってみたいと思うが、それ以上に気になるのが、高松丸亀町商店街の「壱番街」(香川県高松市)である。
昨年12月にオープンした壱番街は、本格的なガラスドーム「丸亀ドーム」を中心に、東館(地上8階、延床面積6,441?)と西館(地下1階・地上10階、延床面積10,134?)で構成される(総事業費約65億8,000万円)。商業スペース(19店舗)には、地権者や地元のショップのほか高松三越が出店、高層階には分譲マンション(47戸)が配置される。オープン初日には約5万人が訪れ、マンションも完売したという「壱番街」の大きな特徴は、その事業スキームにある。
1.所有権と使用権の分離
「地権者が共同出資会社を設立し、これと定期借地権契約を結び、土地を貸す」「共同出資会社が建物を建設・所有し、ビルの運営・管理を第3セクターのまちづくり会社に委託する」「まちづくり会社は、テナント収入から、建物の管理コストなど必要な経費を除いた分を、共同出資会社に支払い、地権者に分配する」という手法がとられた。
これにより、「土地費が建設コストに含まれないため、テナント賃料の上昇を抑えることができる」「まちづくり会社がテナント運営・管理を一括して行なうことで、商店街全体のコンセプト、業種バランスを考慮したテナントミックスが可能となる」「土地の所有権はそのまま地権者に残るため、再開発への抵抗感が少なくなる」といったメリットが得られたという。
2.オーナー変動地代家賃制の導入
テナントの売上に応じて、家賃収入が増減する仕組みがとり入れられた。これにより、地権者、まちづくり会社がリスクとインセンティブを背負い、施設の魅力づくりに真剣に取り組んでいくことを目指している。
高松丸亀町商店街では、全体を7つの街区に分けて再開発事業を進めており、今後5年間で全街区の再開発を完成させることを目標としている。そのため、2-3の地権者(150坪程度の単位)で合意が得られたところから同様のスキームで再開発を立ち上げる「小規模連鎖型開発」で進めていくこととしている。
「所有」と「使用」の分離、まちづくり会社によるテナントミックスの実施など、他の商店街には例をみないような取組みが、中心商店街復活の有力な手法となるのか注目していきたい。
参考資料:「商業界2007年6月号」(株式会社商業界)
参考リンク
高松丸亀町商店街ホームページ(www.kame3.jp)
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2007年05月23日|
- 主任研究員 大石真裕
- No.0219
製茶業界の2006年と2007年
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
さて、当研究所では、県内主要産業を22業種に分類し、担当者を配置して定期的に景況調査等を行なっている。私は、製茶業界を担当させていただいているが、製茶業界の2006年を振り返ってみると、厳しい1年であったといえそうだ。
荒茶市況は、3月下旬の低温で一部に凍霜害が発生した上に、需要のピークである八十八夜の頃に、多雨のため摘採が進まず出荷できなかったことで、一番茶の平均価格は前年を約1割下回った。二番茶以降も、一番茶の価格水準を引き継ぐ形でスタートし、さらには製茶問屋の在庫水準が高く抑え気味の仕入れとなったことから、前年比1-2割程度低い価格水準となった模様である。
一方、荒茶生産量は、一番茶が1万7,900トンで前年比5.3%減少。二番茶以降も、荒茶価格の低下に加えて、重油価格の高止まりが生産コストの押し上げ要因となり、摘採を見送る農家が増えたため、前年を1-2割程度下回ったとみられる。
需要面では、荒茶価格の低下に加えて、消費者の低価格志向やリーフ(茶葉)離れなどから、家庭のリーフ購入数量・単価は前年を下回った。拡大を続けてきた緑茶ドリンクの販売も、大型新商品の投入がなく、無糖炭酸飲料の伸長にも押されてブレーキがかかり、製茶問屋の出荷額は前年実績を下回った模様である。
さて、2007年であるが、生産については、3月以降の気象条件に大きく左右されるが、現時点では園相も良く、平年並みの品質・収量が期待される。また、製茶問屋の在庫も適正水準に近づいているとみられ、荒茶価格の回復が見込まれる。
需要面では、残念ながらリーフ需要の低下傾向は、今年も続くのではないだろうか。しかし、ペットボトルに代表される緑茶ドリンクの需要は、伸びが鈍化しつつも拡大すると見込まれ、また近年では、カテキンやテアニンなど緑茶の有効成分に注目が集まり、その栄養素をもれなく摂取する「食茶」需要も拡大をみせ始めている。
「茶業界は低迷しているが、茶産業は拡大している」という言葉が聞かれるように、従来からのリーフ需要は縮小基調にあるが、茶の用途開発はどんどん広がっている。よって、県内製茶業界においては、マーケット起点の発想で、消費者のし好にあった商品を提供し、リーフ需要の拡大を図るとともに、ドリンクメーカーとの取引や、“飲む”以外の用途開発を進めるなど、より柔軟な発想での取組みを期待したい。
また、本年11月には、「第3回世界お茶まつり」が開催される。このイベントが、近年、増加しはじめている緑茶輸出を、さらに後押ししていくことになればと思う。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2007年01月16日|
- 主任研究員 大石真裕
- No.0210
“統計”は地域、産業の健康状態を映し出す鏡
「事業所・企業統計調査」が10月1日から始まる。本統計は、農林漁業に属する個人経営の事業所、家事サービス業、外国公務に属する事業所を除く、すべての事業所を対象としており、事業所数や従業者数などが業種別、都道府県別などで表わされている。小職も仕事柄利用することが多いが、行政では、この統計をどのようなことに活用しているかご存知だろうか。それは、
各種法令等に基づく利用(交付税算定のための税収見込額の推計等)
行政上の施策への利用
国民経済計算の推計への利用
白書等における分析での利用
地方公共団体における利用(交通計画策定、地域災害対策等の基礎資料)
他の統計の母集団情報としての利用
などである。
昨年行われた「国勢調査」では、個人情報の漏洩不安から、回答拒否が話題となったことが記憶に新しい。そのため、こうした不安を解消していくことが統計の信頼性向上には不可欠となるが、加えて、その統計調査が何を目的としているのかを改めて伝えることが大切ではないだろうか。個人主義が拡大する今日において、義務感だけで回答を引き出していくことは困難である。調査の趣旨を理解・納得してもらうことが、回答者のモチベーションを高め、回答率を高めていくには必要であろう。
また、調査してどのよう結果が出たのかをフィードバックすることも大事ではないか。他地域、他国との比較や、他の統計指標との関連性なども織り交ぜながら、それがどのような意味を持つのか、ストーリー仕立てでわかりやすく伝えて関心を持ってもらうことである。インターネットが社会インフラとしてより普及・定着していけば、コストをかけずに調査結果をフィードバックすることも可能となろう。
今夏、静岡県では、「夏休み県庁統計相談」を開設した。経済統計室など統計3室が合同で企画し、夏休みの自由研究対策と統計の普及を目指したこの相談会には、8月21日から31日の9日間(土日を除く)で111名が訪れたという。多くの人にとって統計は、なじみが薄い存在と思われるが、国、地方、産業などの健康状態(現在の状況)を表わす指標であり、より多くの人が親しみを感じていただければと思う。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2006年09月21日|
- 主任研究員 大石真裕
- No.0200
人を幸せにするデザイン
最近、“デザイン家電”、“デザイナーズ家具”といった言葉をよく聞くようになった気がする。スタイリッシュな掃除機やコーヒーメーカー、サーキュレーター(扇風機ではなく空気循環器)、主に海外のデザイナーによるチェア、ソファなど、洒落たデザインの家電製品や家具に、消費者の関心が集まっているようだ。
そこで、“Gマーク”で知られる、総合的なデザイン評価・推奨制度である「グッドデザイン賞」の受賞結果をみると、過去10年間で9,973件が受賞している。都道府県別では、東京都(3,985件)と大阪府(2,081件)が圧倒的に多い。こうしたなか、わが静岡県は208件と、神奈川県(581件)、愛知県(568件)、京都府(230件)福岡県(211件)に次いで全国第7位であった。
やはり、スズキ、ヤマハ発動機、ヤマハといった大企業の製品が毎年のように受賞しているが、中小企業でも受賞しているところはある。たとえば、釣り竿、ルアー(擬似餌)などを開発・製造するメガバス(浜松市)は、これまでに20回もの受賞経歴を持つ。同社のルアーは、生きた小魚と見間違うほど造形が精巧で、釣り具としての性能も優れていることから、熱狂的なファンが多いという。また、医療・介護機器の専門メーカーであるアマノ(磐田市)も、“入浴の楽しさをお届けしたい”をモノづくりのテーマに掲げ、これまでに3回ほど受賞している。
特に工業デザインでは、姿形の美しさだけではなく、使いやすさ(機能的であるか)や、作りやすさ(工業製品として量産できるか、そして顧客の手が届く価格の範囲内に製造コストを抑えることができるか)などのバランスが、高い水準でとれていることが要求されるため、製品としての総合力も高まっていくことが期待される。
また、産業機械においても、デザイン性の高い製品を導入することで、それを扱う営業担当者の販売意欲が高まったり、工場内などでそれを使う製造従事者のモチベーションが向上するといった効果もあるのではないだろうか。
デザイン活用は費用対効果が測りにくい、デザイナーの雇用負担が軽くない、外部デザイナーの所在や力量が把握できないなど、デザイン活用にはいくつもの課題があるかと思われるが、“人を幸せにするデザイン”が街中に溢れていくことを期待したい。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2006年08月04日|
- 主任研究員 大石真裕
- No.0190
どこまで伸びる緑茶ドリンク
今年も、新茶シーズンを迎えたが、近年では、ペットボトルに代表される「緑茶ドリンク」の愛飲者が増えている。酒類食品統計月報によれば、急須で入れて飲む「リーフ」の市場が、ここ10年ほどは斬減傾向にある一方で、「ドリンク」市場は急拡大を続け、1994年に805億円であったものが、2002年には3,253億円でリーフ市場を追い抜き、2004年には4,352億円にまで伸長している。
そのきっかけは、2000年3月の「生茶」(キリンビバレッジ)の登場にさかのぼる。「生茶」は、初年度売上高450億円という大ヒットを記録し、昨今の緑茶飲料ブームの火付け役となった。翌年には、「旨茶」(アサヒ飲料)、「まろ茶」(日本コカ・コーラ)の登場で、市場はさらに拡大。最近では、2004年に登場した「伊右衛門」(サントリー)が市場拡大に大きく貢献した。京都の老舗製茶問屋のブランドイメージと竹筒をイメージしたペットボトルが奏功して、同社の緑茶飲料は前年比約3.5倍に増加し、業界第2位へと躍進を果たしたのである。また昨年は、日本コカ・コーラやアサヒ飲料が、「若武者」、「一(はじめ)」といった新しいブランドを立ち上げ、“緑茶戦争”と呼ばれる熾烈な競争状態となった。
そこで、今後の市場動向だが、現在4,000億円強の市場規模が2015年には1兆円にまで拡大するといった強気の見方をするドリンクメーカーもあり、拡大を続ける公算が強いといえよう。
静岡県は、生葉・荒茶生産量が全国シェア4?5割を占める日本一の茶産地である。それゆえ、すでに多くの県内産茶葉が、緑茶ドリンクの原料にも使われているようだが、この分野では、鹿児島県など後進県に勢いがあり、生葉・荒茶生産量ほど市場占有率は高くないとみられる。
ドリンクメーカーが緑茶原料に求める条件は、「まとまった量を安定供給できること」、「品質が均一であること」、「コストが安いこと」などである。しかし、本県の場合、山間地の茶園が多いことから乗用型管理機の導入が進みにくく、他産地と比べて生産性が高いとは言い難い状況にある。また、斡旋商を通じた相対取引による流通量が市場内流通のそれを凌いでいることに加えて、大規模な製茶問屋が少ないことから、まとまった量の調達には不向きな流通構造といえよう。そのため、もし本県において緑茶ドリンク向けの原料供給を目指していくのであれば、工業製品の原料を供給していくのだと頭を切り替えること、そして茶農家や農協、製茶問屋などが一体となって取り組んでいくことが必要となろう。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2006年04月21日|
- 主任研究員 大石真裕
- No.0177
人気を集める美術館、動物園の集客の秘訣
早いもので、2005年も残すところ1ヵ月余りとなり、日経トレンディ12月号(日経ホーム出版社)には、恒例となった今年の「ヒット商品ベスト30」が掲載された。これをみていくと、第1位が、携帯オーディオプレーヤーの「iPod nano&iTMS」、第2位は2,205万人の入場者を集めた「愛知万博」、第3位が日記形式の簡易型ホームページである「ブログ」などと続く中で、第17位に「金沢21世紀美術館」がランク入りした。
金沢21世紀美術館は、2004年10月、金沢市に開館し、1年足らずで来場者数は150万人を突破したそうだ。目玉となるような有名画家の作品もほとんどないこの美術館が、年間5?6万人を動員すれば成功といわれる地方美術館の常識を覆した要因について、同誌では、既成概念にとらわれない数々の試みがあったとしている。たとえば、メインターゲットを子供やファミリーに据えて、見るだけでなく、触ったり乗ったりして楽しめる“体験型”の作品や、強化ガラスに水を張り、まるでプールの中にいるかのような感覚が味わえる空間などの「コミッション・ワーク」と呼ばれる建築と一体化した作品が大きな見どころとなっており、こうした作品の多くを無料で楽しめるところが、集客の秘訣のようだ。美術館の賑わいを受けて、金沢駅周辺の商店街には、雑貨店や甘味店など10軒以上の店舗が開業するなど、地域活性化にも貢献しているということである。
思い起こせば、2004年の「ヒット商品ベスト30」には、旭川市の「旭山動物園」が第6位にランクインしていた。決して珍しい動物がいるわけではない同園が多くの来園者を呼び込んだのは、ペンギンをあらゆる方向から観察できる水中トンネルや、アザラシが縦横無尽に泳ぎ回る円柱水槽、ホッキョクグマを目の前で見ることができる半球状のドームなど、動物園の常識を破る斬新な展示施設整備や演出が大きな要因となっている。
これらの工夫は、金沢21世紀美術館では、「地元の人に親しみを持ってもらえる広場や公園のような美術館」というコンセプトに、また旭山動物園では、動物の姿形を見せる従来の「形態展示」に対して、動物本来の行動や能力を見せる「行動展示」や、できるだけ自然に近い状態で見せる「生態展示」というコンセプトに基づいている。いずれも既存の美術館、動物園の課題を踏まえて打ち出された、新しいコンセプトといえよう。
新たな文化・娯楽施設が続々と登場し、余暇ニーズも多様化するなど、事業環境が厳しさを増す中でも、従来とは異なる切り口で見事に集客を図っているこれら2つの施設の存在は、ビジネスの分野においても、現状分析に基づき新たなコンセプト、ビジョンを掲げ、従来とは異なる角度からアプローチをすることで、成熟した市場であっても需要を開拓していくことが十分可能であるということを示唆しているのではないだろうか。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2005年11月18日|
- 主任研究員 大石真裕
- No.0163
ところてんと新連携
最近、ところてんが飛ぶように売れているという。ところてんの原料である寒天を摂取することで、ダイエット効果をはじめとして、体脂肪率の低下、血糖値の急上昇抑制、コレステロールの減少など、多様な効果が期待できることが大学教授の研究で明らかになり、それがテレビ番組で取り上げられて、人気に火が付いたというわけだ。
話はかわって、本年4月、革新的な取組みに挑む中小企業を支援する「中小企業経営革新支援法」など三法を整理統合し、「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律」が施行された。本法では、従来からの中小企業単独での取組みに加えて、「異分野連携新事業分野開拓」に対する支援強化が、新たに打ち出された。
この「異分野連携新事業分野開拓」とは、「事業の分野を異にする事業者が有機的に連携し、その経営資源を有効に組み合わせて新事業活動を行うことにより、新たな事業分野の開拓を図ること」で、一般に「新連携」と呼ばれている。このように「新連携」に対する支援が始まったのは、経営資源に制約のある中小企業が強みを持ち寄り連携することが、現状をブレークスルーする手段として有効性が高いと見込まれたからに他ならないといえよう。
「新連携」の認定状況をみると、喜ばしいことに、本県のグループが全国第1号認定を受けている。そのテーマは、「光高速リモート制御技術の応用開発」というものだが、その後の状況をみていくと、決して最先端技術を活用した製品開発だけが認定されているわけではない。たとえば、「新素材(パイル地)を使ったパジャマの開発・販売」、「レトルト食品用自動販売機による北海道らしい食品の販売」、「銀行の住宅ローン金利優遇を活用した自然砕石による住宅地盤改良の普及拡大」など、地場産業の新しいモノづくりや新しい売り方なども認定されており、将来性が期待されている。
ところてんが、機能性からの切り口によって、一躍脚光を浴びたように、地場産業やローテク製品であっても、従来とは異なる切り口からスポットを当てて、新たな用途を開発していくことが大切であり、そのためには、業界の常識など固定観念にとらわれない“異能の集まり”を構成し検討してみることが、1つのアプローチ法となるのではないだろうか。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2005年08月05日|
- 主任研究員 大石真裕
- No.0150
2つの新産業プロジェクト
本年4月1日、静岡市が全国で14番目の政令指定都市となった。奇しくも、ほぼ時を同じくして、2つの新産業創造プロジェクトが静岡市で胎動を始めている。
1つは、静岡市をコンテンツビジネスのメッカにすることを目指す「しずおかコンテンツバレー構想」である。静岡市には、テレビ局、新聞社などのマスメディアや広告会社、Web制作会社などコンテンツに関わる企業が多く、また優れた景観などコンテンツ素材も豊富なことから、県内でも地上デジタル放送が始まるという機会を、「ローカルコンテンツの制作力強化」を仕掛ける絶好機と位置づけ、「静岡情報産業協会」が中心となって、平成16年に本構想が打ち出された。
17年度に入ると、その実現に向けて、推進主体(=しずおかコンテンツバレー推進コンソーシアム)が立ち上げられたほか、県や市では、「しずおかコンテンツグランプリの開催」や「クリエータ・データベースの作成」に予算を計上し、取組みを開始している。
もう1つは、「駿河湾地域の循環型社会の推進構想」である。これは、駿河湾周辺に広がる海洋資源等をベースに、大学が持つ技術シーズと産業界が有するさまざまな技術、ノウハウを組み合わせることにより、資源循環型地域を実現する新規産業の創出を目指すものである。清水商工会議所を中心に産学官で構成される「しみず新産業開発振興機構」が事務局となって、研究テーマの絞り込みを行い、優先度の高い5テーマ(三保の地下水を利用した魚介類の陸上養殖、藻類の培養と有用成分の抽出、LED利用による安全・高付加価値な植物の栽培など)を選び出し、技術性、市場性を探る事業化可能性調査が行われている。
近々に、事業化可能性調査をとりまとめ、調査結果を発表する予定で、各プロジェクトへの参画企業を募り、事業を具体化させていく方向で準備が進められている。
静岡県内では、「ファルマバレー構想」「フーズ・サイエンスヒルズ」など、幾つかの新産業集積構想が官主導で進められているが、ここで紹介した2つのプロジェクトは、危機感をバネにして、純粋に民間から立ち上がってきた構想である。現状は、個別事業の事業性評価を行っているような段階だが、民間事業者の熱い理念を求心力に、多くの事業者の参画によって、2つのプロジェクトが、文字通り「計画」から「現実」へと結実していくことを期待したい。
<事務局>
しずおかコンテンツバレー推進コンソーシアム(電話054?653?2306)
しみず新産業開発振興機構(電話0543?51?2287)
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2005年04月26日|
- 主任研究員 大石真裕
- No.0137
ワクワクする商品・サービスの登場に期待
当研究所では、毎年1回、サラリーマン世帯の主婦の方々にご協力いただき「消費動向アンケート調査」を実施しており、先頃その結果がまとまった。詳細は、「SERIまんすりー2005年1月号」をご覧いただければと思うが、今回の結果をみると、主婦の景気に対する認識が改善していることがわかる。景気が「悪くなっている」という主婦は前々回(2002年)調査では65.6%に達したが、今回調査では24.5%にまで縮小した。また、現在の生活レベルの満足度については、依然として「不満足」が「満足」を上回ってはいるが、その差は大きく縮まり3ポイント差となった。雇用・所得環境の改善を、家計を預かる主婦も肌で感じているということであろう。
そして、2004年の耐久消費財等の購入実績については、「デジタルカメラ」がトップに輝き、「DVDプレーヤー」が第2位となった。長らくトップの座にあった携帯電話は、普及率の高まりもあって第3位に後退した。また、今後1年間に購入したい商品のベスト3は、「液晶・プラズマテレビ」、「デジタルカメラ」、「自動食器洗い乾燥機」、「洗乾一体型洗濯機」、「DVDレコーダー」の順となり、“新・三種の神器”と“高機能家電”が人気を集めている。
一方、食品、衣料、家電製品など商品を購入する際のポイントをみると、「ブランド」や「品揃え」を重視する傾向が強まった。東京の丸の内や銀座に海外の高級ブランド各社が競うように出店したり、特定分野に特化し、その中で豊富な品揃えを図る専門店が総合スーパーや百貨店を尻目に成長を遂げたことは、こうした消費行動を捉えてのことであろうし、個人のパティシィエの店が盛況なのも、一種のブランド信奉といえる。
2004年は、消費行動に明るい兆しがみられた年と言えるが、その一方で、配偶者特別控除が一部廃止され、定率減税の縮小・廃止が打ち出されるなど、今後の増税路線も明確になり、消費マインドが萎縮してしまう懸念も高まった。これからの時代は、心と体の「健康」や「環境」が商品・サービス開発の1つのキーワードといわれるが、我々がドキドキ、ワクワクし、購入したくなる商品・サービスが続々と登場することで、消費行動が活発になり、ひいては日本経済が成長路線を歩んでいくことを期待したい。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2005年01月07日|
- 主任研究員 大石真裕
- No.0125
ライフスタイルセンターの伸長に思うこと
いまアメリカでは、「ライフスタイルセンター」が注目を集めているそうだ。ライフスタイルセンターとは、1995年頃に登場した新しい形態のショッピングセンター(SC)であり、団塊世代の熟年化に伴い、「身近な場所で効率的に買い物をしたい」「地域コミュニティを大切にしたい」といったニーズが拡大していることを受けて、特にここ2、3年で急速に広まり、すでに100ヵ所を超えているという。
では、ライフスタイルセンターとは、どのような特徴があるのか。一般的なSCが、大型駐車場を備え、大型小売店を核店舗に多数の専門店を集めた大規模屋内型であるのに対して、ライフスタイルセンターは、オープンモール、基本的に核テナントがない、郊外でなく都市周辺地区に立地、熟年世帯を対象とする専門店や飲食店等で構成される(比較的高額商品の品揃え)などの特徴を持ち、こうした点から、「商店街スタイルの屋外型集合モール」とも評されている。
一方、日本をみると、昨年、「湘南モール・フィル」(藤沢市)や「星ヶ丘テラス」(名古屋市)がオープンしたところで、緒に就いたばかりというところか。また、「SCの概念に商店街の良さをプラスした業態」との評価もあり、ライフスタイルセンターの研究をはじめた商店街もあるようだ。
アメリカにおけるライフスタイルセンターの拡大は、高齢化の進展やライフスタイルの変化に伴って、地域に密着した商店街の良さが見直されていることを示唆するものといえよう。
東京のある商店街では、商店主の有志が株式会社を設立し、最寄品を中心とした近隣型商店街として、鮮魚店など欠いてはならない商店が閉店してしまった場合に、店舗を借り上げて鮮魚店を誘致し、商店街としての魅力の維持・向上を図り、さらには学童保育や高齢者への弁当宅配事業、病院内のレストラン運営(食材は、商店街振興組合の組合員から調達)なども手掛け、地域になくてはならない存在となっている事例もある。モノを売る機能だけでは、商店街が大型小売店に対抗することは困難といわざるを得ないが、こうした事例が示すように、商店街においては、時代背景の変化を俊敏に読み取り、地域住民が求める機能を柔軟に提供していくことで、新タイプの商店街として、地域コミュニティに必要不可欠な存在となることができるのではないだろうか。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2004年09月24日|
- 主任研究員 大石真裕
- No.0113
“目的”と“目標”
「パート活用より、正社員を見直せ」「持たざる経営より、資産保有に勝機」「選択と集中より、選択と攻めの分散を」・・・先日、日経流通新聞を読んでいたら、成長力の高い有力専門店が、流通業界の「鉄則」と思われた考え方を覆し始めたという記事が目にとまった。
正社員を増やした企業として、株式会社エービーシー・マートがあげられていた。靴の専門小売店「ABC-MART」を展開する同社では、平成14年から約1年半にわたって大幅な前年割れが続いた既存店売上高が急回復を遂げたが、そこで店舗改装やテレビCM以上に効果を発揮したのが、正社員比率の拡大にあったという。それは、販売能力だけをみれば優秀なアルバイトもいるが、最も重要なことは、売上の確保よりも利益の確保であり、目標と利益を共有できるのが社員の強みであるという考えに基づいたものである。
そして、選択と攻めの分散を実践している企業としては、「ユニクロ」で有名な株式会社ファーストリテイリングがあげられていた。日本の人口が平成18年をピークに減少に転じる中で、“集中”の先に成長は見えないと判断し、海外展開と事業分野の拡大に活路を見出そうとしている。事業分野の拡大では、以前は野菜の販売なども手掛けていたが、現在は、紳士服や靴、ファッション雑貨などを対象にM&A(企業の合併・買収)に意欲をみせている。
こうした動きをみると、経営に“絶対”というものはなく、環境変化をいち早く察知し対応していく柔軟さが必要であると改めて感じる。そうした中でも、“不変”であるべきだと思うのは、「企業理念」である。では、「企業理念」とは何か。それは、企業の存在意義であり、根本的な目的である。この“目的”を実現するために、長期ビジョン(=目標)を描き、その姿に近づくための方策に落とし込んでいく。しかし今、この“目的”が形骸化、ないしは“目標”と一体化してはいないだろうか。「5年後の株式公開を目指す」「3年後には売上を倍増する」・・・これは立派な“目標”だが、“目的”ではなかろう。これが、企業の存在意義だとすれば、世の中には、顧客第一ではなく、自己第一主義的な企業が増えてしまう。
そんな中で、先日お会いした浜松のある会社の社長は、「原理原則」という言葉をとても大切にされていた。「創業したのは、自分達の技術で世の中に貢献したいと考えたから。確かに売上目標はあるが、原理原則に立ち返り会社を興した時の目的に向かっていくことが何より大切で、数字は結果としてついてくるものだと思う」。当社は、創業約10年と、いまだ“青臭い”企業かもしれないが、お話を聞いてすがすがしい思いがした。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2004年06月21日|
- 主任研究員 大石真裕
- No.0100
観光は、地域活性化の切り札となるか
現在、わが国では、“観光立国”の実現に向けた取り組みが熱を帯びている。平成15年度に政府が打ち出した『ビジット・ジャパン・キャンペーン』は、「平成22年までに外国人観光客を、現在の約2倍の1,000万人にする」という国家プロジェクトだ。石原伸晃国土交通大臣が「観光立国大臣」に任命され、韓国、中国、米国、香港、台湾を重点市場として、訪日促進キャンペーンが行われたが、さらに16年度は、32億円(前年度比+60%増!)の予算を確保し、英、独、仏を重点市場に加えて、より戦略的にキャンペーンを展開していく構えである。
国の16年度予算の中で、都道府県や市町村が関係する観光関連事業をみると、たとえば国土交通省では、「まちづくり交付金」を新たに創設している。これは、市町村が歴史・文化等の特性を活かした個性あふれるまちづくりに取り組もうとした場合、まちづくりの目標(可能な限り数値化する)と、目標達成のための各種事業を盛り込んだ都市再生整備計画(仮称)を作成し、計画が認定されれば交付金が交付されるというもので、全体で1,330億円もの予算額となっている。
また、農林水産省では、「観光立村の推進」事業(87百万円)を新たにスタートさせる。これは、棚田や段々畑など日本独自の農山漁村の景観や文化を目玉商品として外国人旅行者を誘致し、「観光立村」を進めていこうというもので、地域の観光交流拠点に係るマップづくりや、観光大使等による地域の魅力発信事業に対して一定割合を補助するものである。
観光は、宿泊業や飲食業、輸送業など多くの業種が関わりを持つすそ野の広い産業であり、地域への波及効果も期待される。観光振興に取り組む自治体が増えているのも、中国が世界の工場としての地位を高め「工場誘致」の難易度が高まる中、「人の誘致」による地域活性化に期待が込められているためであろう。
しかし、「観光地化」という言葉に、あまり良い響きは感じられない。それは、住民の生活の場に観光客が土足で入り込んでくるようなイメージがあるからだろう。したがって、観光振興に取り組むのであれば、住民がそれを理解し、納得することが必要であり、それをベースに、来訪者をもてなす心・風土が醸成されていなければならないと思う。
最近では、歴史的な街道文化を生かした「街道観光」や都市自体が持つ文化的魅力を味わう「都市観光」などの形態が注目されはじめている。これらは、地域固有の資産を来訪者に堪能してもらおうというもので、観光と地域との関係がより密接になる傾向にある。おそらく、それは旅行者のニーズでもあり、一過性のブームではなく今後の観光の一つの方向として定着していくものと思われる。
本県でも、静岡空港を生かした観光振興の動きなどがみられるが、文字通りに地域が一体となり、ベクトルを合せて観光に取り組んでいく事で、来訪者や住民に愛される“観光”地が誕生して欲しいと思う。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2004年03月16日|
- 主任研究員 大石真裕
- No.0087
2007年問題とコミュニティ・ビジネス
最近、「コミュニティ・ビジネス」なるものが、ちょっとした注目を集めている。いまだ統一的な定義はないものの、概ね「地域が抱える課題を解決するために、地域の構成員が活動主体となって、収益を確保しつつ継続的に取り組む事業」と位置付けることができ、地域産業の空洞化や中心市街地の衰退、中山間地域の過疎化など、地域社会の活力低下が顕在化する中で、これらの問題を解決する手法として関心を集めているわけだ。
その活動分野は、高齢者向け配食サービスなどの「福祉・健康活動」から、歴史文化資源を活かした「まちづくり」、障害者や高齢者の能力開発を行う「就業支援・人材育成」など多様な領域に及ぶ。また、こうした活動は、“地域の構成員が主体”となっていればよく、組織形態については、NPO法人や任意団体から株式会社などの営利法人まで、さまざまな組織が担い手となり得る。
全国を見渡すと、特に兵庫県においてコミュニティ・ビジネスは盛んである。それは、阪神・淡路大震災の復興の過程で多くのボランティア団体が誕生したが、いつまでも手弁当で活動を続けていくのが困難になり、ビジネスの手法を採用していったことによる。
かわって静岡県では、それほど関心を集めているとは言い難いようだ。ただ、そうした中でも、学校を補完する教育の場をつくり、数十人に上るひきこもりの青年を社会に送り出してきたNPO法人や、介護保険が施行される10年以上も前から高齢者介護に取り組み、現在も介護保険ではカバーされないサービスの提供によって、高齢者が生きがいを見つけ元気を取り戻すサポートをする企業など、地道な活動をつづける組織がある。
一方、こうした活動を支援する行政も増えている。支援内容としては、事業の立ち上げ経費を補助したり、弱いとされる経営面の相談が主に行われているようだ。なかでも大阪府では、立ち上げ事業所数の数値目標を設定するほど熱が入っている。
わが国では現在、「2007年問題」が浮上している。2007年というのは、団塊の世代でも一番多いとされる1947(昭和22)年生まれの人が60歳定年を迎える年である。全体では800万人にも上る団塊の世代の中には、これまで培ってきた技能やノウハウを社会のために生かしたいと考える人が少なくないはずだ。
コミュニティ・ビジネスは、決して大儲けできるニュービジネスではない。しかし、多様な側面から地域に活力をもたらす可能性を秘めたものであり、多くの人が参画可能な事業といえよう。団塊の世代や女性が、地域のために何かアクションを起こそうとしたときに活動しやすい道筋を、行政が中心となって今からつけておくことが大切ではないだろうか。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2003年12月03日|
- 主任研究員 大石真裕
- No.0074
“新”静岡市の産業の顔は、どんな顔?
現在、市町村合併が急ピッチで進められている。たとえば、2001年5月には、旧浦和市、旧大宮市、旧与野市の3市が合併し「さいたま市」が誕生し、本年4月には、山梨県内の6町村が合併し「南アルプス市」となった。そして本県においては、旧静岡市と旧清水市が合併して、新しい「静岡市」が生まれた。両市が合併したことで、“新”静岡市では、都市将来像を新たに描き直すこととなる。実際、市政運営、地域経営の最高指針となる総合計画の策定が、現在進められており、そこでは産業・経済が目指すべき将来像も設定されることとなろう。
そこで、これはまったくの私見だが、『スポーツを核とした産業振興』を、静岡市産業の1つの柱としてはどうだろうか。清水エスパルスというプロサッカーチームが本市にあることは貴重な財産であり、かつて沢村栄治がベーブルースと対戦し、現在はプロ野球のパ・リーグ東西対抗が開催される草薙球場も当地にはある。また、スポーツクラブ数も比較的多いようで、静岡市において、スポーツは大きなポテンシャルといえる。
たとえば、現在わが国は「観光立国」を標榜しているが、歴史・文化遺産を含めた観光資源の活性化を図り、スポーツ・コンベンションの誘致・開催に力を入れてはどうだろうか。
そして、プロスポーツ選手から地域のスポーツクラブまでを対象に、技術・トレーニング指導やヘルスケアに係るサービス等を充実させ、それを高齢者などに応用していければ、県東部とは異なるウエルネス産業へと発展する可能性もあろう。
それから、「食」と健康を絡めた産業も期待できるのではないだろうか。すでに静岡市内では、弁当・惣菜の小売店舗等を展開する企業が、SOHO事業者と組んでスポーツ栄養学を取り入れた弁当の開発を行うなどの動きがみられるが、平成14年度より静岡県立大学では、文部科学省の採択を受け、「食」と「薬」を融合した新学問領域「健康長寿科学」の創成に取り組んでおり、こうした最先端の研究が民間企業に移転され、新たな産業・製品として結実していくことが期待される。
いずれにしても、「静岡市といえば○×産業」と、誰もがイメージできる、静岡市の顔ともいうべきリーディング産業が育ってほしいものである。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2003年08月22日|
- 主任研究員 大石真裕
- No.0060
広告のチカラ
わが国の広告費が、2年連続の減少を記録した。これは、広告費全体の約6割を占めるマスコミ4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)が2年続きの前年割れとなったことが主因だが、その一方で、衛星メディア関連広告やインターネット広告は2ケタの伸びを示しており、期待の高さが伺われる。
当所「SERIまんすりー6月号」では、「固定客づくりのツールとして期待高まる新たな広告媒体」と題した調査を行ったが、最近では、携帯電話によるインターネット接続サービス加入者が5,000万人を突破する中、広告媒体として携帯メールを活用する動きが広まっている。携帯メールは、既存客にピンポイントで情報を送ることができる効率的な広告媒体であり、クーポン機能を付与した「フリーペーパー」や「クーポンカード」との組み合わせによっては、新規客の来店を促しつつ顧客との継続的な取引関係を構築していくための有効なツールとなる可能性を秘めているといえよう。
消費の成熟化が進む中、新規客の獲得を図る一方で、特定の顧客と良好な関係を築き“常連客”を増やしていく視点が重要性を増している。そのためには、広告で関心を引くだけでなく、実店舗に魅力がなければならない。私の住む地域には、新聞への折込チラシなどの広告を一切行わないスーパーがあるが、多くの客で賑わっている。それは、広告宣伝費用がかからない分、商品が安く、加えて鮮度や味もいいからだ。最近、わが家もこのスーパーを利用させていただいているが、この店を知ったのは、知人からの口コミ情報であった。
口コミは、非常に影響力の大きな“広告媒体”といえる。ただし、「人の口に戸は立てられぬ」わけで、悪い評判も広がっていく。口コミを味方につけるためにも、実店舗の“力”を高める努力が常に求められる。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2003年05月22日|
- 主任研究員 大石真裕
- No.0047
長所を伸ばすことを考えよう
平成7年4月、新規性に富んだ製品・サービスを生み出そうとする創造的事業活動を行う中小企業の支援を目的とする「中小企業創造活動促進法(以下、中創法)」が施行された。本法の認定を受けた企業は、信用保証協会の債務保証枠の拡大や、税制面での優遇措置といった金融面の支援を受けることが可能となる。
そこで、静岡県における中創法の認定事業件数をみると、平成14年末時点の累計が633件に上る。これは、東京都、大阪府、神奈川県に次いで、全国第4位という高い水準である。さらに、近年の推移に目を転じると、平成12年度は76件で全国第3位、13年度が98件で東京都に次いで第2位と勢いを増している。そして今年度は、15年1月末時点で101件に達し、すでに昨年実績を上回っており、本県企業の活路開拓に向けた取組みは、ますます活発化しているといえよう。
そして今回、中創法の認定を受けた企業をヒアリング調査する機会を得て、訪問をはじめた。そのなかには、ここ5-6年で売上が10倍にも伸びるなど成長を遂げる企業がある一方で、製品化までは辿りついたものの、売上が伸びずに製造を中止してしまったケースや、申請当時は従来にない新技術・新製品と考えられたが、1年、2年と月日が経過するなかで技術革新などの環境変化によって、より優れた技術・方式が登場し、開発自体を中断してしまったというケースも散見された。
しかし、一旦挫折しても、ただでは転ばない企業も多い。その共通項は、コアとなる技術を持っていることだ。たとえば、超音波応用技術をコアとする企業では、中創法認定を受けてダイバー用超音波水中無線機の開発に成功したが、経済環境の悪化などもあり販売を伸ばせず、製造中止に追い込まれた。しかし、超音波応用技術を活かして切削装置を開発、切削時のバリの発生をなくし作業工程を減らす、刃の寿命が長期化するといったメリットから、自動車メーカーなどに納入されており、また高い汎用性からユーザーとなり得る業界は幅広いため、今後、事業の柱となることが期待されている。
これまでにない新市場を創り出していくことは、華やかではあるが苦労も多く、ハイリスク・ハイリターンな選択といえる。むしろ、自社のコア技術やこれだけは負けないというものを確立し、市場性などを踏まえてその用途開発を考えることが大切ではないだろうか。もちろん、既存市場に参入していく後発組のため、他社との差別化をアピールできるだけの何かがなければならないが。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2003年02月14日|
- 主任研究員 大石真裕
- No.0034
アメリカ流通業の視察を終えて
今回、アメリカ合衆国を訪問する機会をいただき、多くの小売店を視察したが、その中で “アメリカはバイタリティに溢れている”ということを身をもって感じた。たとえば、ラスベガスは、“賭博”のイメージを払拭し、今では年間数千万人もの観光客が訪れる“リゾート・レジャーの一大拠点”へと見事な変貌を果たした。昨年の同時多発テロの影響が、いまだに影を落としているということだが、夜中にもかかわらず多くの家族が連れ立って出歩く光景や、4,000室を超えるホテルがいくつもあることには驚かされた。
また、砂漠の中に開発されたリタイヤメント・コミュニティ「サン・シティ」も気が遠くなるほど広大で、開発が始まって数年しか経っていないが、すでに3,500世帯7,000人ほどが居住している。「サン・シティ」内には、ゴルフコースなどレクリエーション施設も整備されていたが、さらに小・中学校や病院の建設が計画されており、まさに荒野の中に新たな町が誕生しようとしていた。こうした大規模開発が、民間主導で相次いで行われているのがアメリカである。
こうした動きは、アメリカが80年代の低迷を克服し、90年代には見事な復活を果たしたからこそ可能であったと言えよう。そして、それは規制緩和や税制改革といったサプライサイドの経済政策が、産業構造の転換や多くのベンチャー企業の輩出を促したことによるものといえるが、こうした政策を講じることができたのも、それを足場に産業の競争力が復活したのも、アメリカに満ち満ちているバイタリティによるものだと感じた。
一方、多くの小売店や飲食店を視察して、エンターテイメント性が徹底して追求されていることに感心させられた。果物・野菜の並べ方にはじまり、絵文字や色の上手な活用、惣菜の見せ方など、凝った演出を随所に感じる。この背景には、?業態間競争が厳しさを増すなかで、取扱商品による差別化が難しくなっている、?アメリカは人種のるつぼであるため、従業員の質を一定に保つことが困難であり、良質な顧客サービスを安定したレベルで常時提供することが難しい、などの問題点もあるのではないかと思うが、ご同行いただいた流通コンサルタントの松村清氏が言われた“Wao!と言わせる店づくり”、“See me、Touch me、Feel me、Buy me(見て、触って、感じて、買って)、へと導く、五感に訴えかける雰囲気づくり”が実践されていた。
それから、ドラッグストアの「ウォルグリーン」が行っていた“ドライブスルー調剤”や、「ラルフス」、「ハリスティーター」といったスーパーマーケットが導入していた“セルフ・スキャン”方式のレジなど、顧客の利便性を追求している印象も強く残った。
アメリカで成功したビジネスや戦術が、日本でも必ず成功するかといえば、答は「No」であろう。しかし、アメリカが、多くの部分で日本に先んじていることは確かであり、アメリカで起こっている事象について、その背景・理由を自分なりに噛み砕いて考え、自身の業務に反映させていきたいと思う。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2002年11月05日|
- 主任研究員 大石真裕
- No.0021
広まるか“ワークシェアリング”
1人当たりの労働時間を減らし、できるだけ多くの労働者で仕事を分かち合い、雇用の維持・創出を図る『ワークシェアリング』が関心を集めている。大手電機メーカーなどで導入がはじまり、今年3月には、政府・連合・日経連の3者によって「ワークシェアリングの取り組みに関する5原則」が合意され、一時的な景況悪化を乗り切るために従業員の労働時間や賃金を短縮・削減し、多くの雇用を維持する「緊急避難型」と正社員の勤務の仕方を多様化し、女性や高齢者などに雇用機会を広げる「多様就業対応型」が、今後の推進の柱と位置付けられた。
こうした中、静岡県が県内の労働組合を対象に行った調査によれば、「緊急避難型」ワークシェアリング」を「既に実施している」(1.9%)、または「導入に向けて労使間で具体的協議を行っている」(0.8%)という組合は2.7%にとどまり、その一方で、「分からない、考えていない」が48.1%を占めるなど、「緊急避難型」ワークシェアリングに対する関心は、総じて低いといえそうだ。
企業が、従業員の解雇や賃下げなどのリストラを断行し、固定費削減を図ることは収益向上のために有効な手段であろう。しかし、多くの企業がこうした行動をとったならば、わが国は失業者が溢れ、消費不振=売上減少→収益低下といった悪循環に陥る懸念があり、マクロ的にみれば、雇用を維持しつつコスト削減を図るワークシェアリングの普及が期待されよう。とはいえ、ワークシェアリング導入のためのハードルは決して低くはなく、コスト削減以上のメリットが得られなければ、敢えて企業がワークシェアリングを導入するとは考えにくい。強いて挙げれば、危機意識を社員が共有することで、停滞しがちな士気を維持・向上させることが考えられるが、総合的にみて、「緊急避難型」ワークシェアリングが普及・定着することは難しいかもしれない。
むしろ、「多様就業対応型」ワークシェアリングが、来るべき若年労働力不足の時代に、女性や高齢者を戦力化していくために必要となるのではないだろうか。その点において、4月の育児・介護休業法改正により、事業主が勤務時間の短縮等の措置を講ずる場合には、短時間勤務制度、フレックスタイム制などで対応することが決められたり、また厚生労働省が設置した「パートタイム労働研究会」において、仕事・責任が同じであれば、パートタイム・フルタイムを問わず処遇決定方式を合せることが打ち出されるなど、柔軟な働き方が可能となる社会に向けた動きが始まっている。
「多様就業対応型」ワークシェアリングが普及するには、税制や社会保険など公的制度の見直しが必要であり、制度のみならず労働者の意識も変らなければ実際の運用は進まない。こうした環境が整うには、しばらく時間がかかりそうだが、未来の人事・雇用制度の1つのあり方を示すものとして、「多様就業対応型」ワークシェアリングは次第に広まっていくのではないかと思う。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2002年07月26日|
- 主任研究員 大石真裕
- No.0007
登場相次ぐ産業支援施設に期待
開業率が低迷している要因の1つに、事業に失敗した経営者の再起が難しいという点が挙げられるが、本当だろうか。これを検証する意味から、昨年、国民生活金融公庫総合研究所では、『「2度目の開業」に関する実態調査』を行った。本調査によれば、
1.収支が「黒字基調」と回答した企業の割合は59.9%で、新規開業企業(51.2%)と比べて高い水準にあるなど、「2度目の開業」企業は、事業の立ち上げやパフォーマンスなどの面において、総じて新規開業企業よりも優れている。
2.廃業経験がマイナスになっている点があるか否かについては、89.4%が「特にない」と回答し、逆に、廃業した経験や事業を経営した経験の活用状況に関して、76.2%が「生かしている」と答えるなど、廃業経験から学んだことを現在の事業に生かしている経験者が多い。
3.民間金融機関等は、すべての廃業・倒産情報を把握しているわけではなく、金融面において再起を妨げる制度的な要因は見当たらない。
ことなどから、失敗者の再起が難しいとは必ずしも言えない、としている。
ただし、廃業・倒産した者がすべて再起できるわけではなく、少なくとも、廃業のタイミングを見極め、廃業後に負債を残さないこと。残ってしまった場合には、誠意を持って対応すること、事業の核となる独自の製品・技術・サービスを持つこと、周囲の支援を得ること、の3つの条件のいずれかを満たすことが鍵となる、と締めくくっている。
本県では、13年度、沼津市に「起業・創業」のコーディネートを事業の柱の1つに据えた『ぬまづ産業振興プラザ』がオープン。そして今年度、清水市が『清水市産業・情報プラザ』を開設し、静岡県では創業準備者を対象とする『仮称・スタートアップルーム』を予定している。さらに16年度には、静岡市が『仮称・産学交流センター』を設置し、産学官の連携により新規創業などの支援を予定するなど、新規創業活発化のためのインフラ整備が急速に進んでいる。
そこで重要なことは、支援する側もされる側も使命感を持つことではないだろうか。神奈川県相模原市の起業支援を行う第三セクター・さがみはら産業創造センターでは、アルプス技研(東証2部上場)の松井会長が社長に就任し、自らインキュベーション入居企業の指導に当たり、一定の効果を上げている。
産業支援施設が、単なる会議室やオフィスにとどまることなく、支援する側とされる側が出会い、互いの要望に応えるために能力を高め合う、活気に溢れる場となることで、本県の新規創業が連綿と続いていくことを期待したい。
投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2002年04月26日|
- 企画部長 岸本高昌
- 研究員 栗原広樹
- 研究員 高橋晴美
- 研究員 佐藤祐介
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- 研究員 森田陸
- 研究員 須藤みやび
- 研究員 石田進吾
- 研究員 大石彰男
- 研究員 田原 真一
- 研究員 田中恵梨子
- 研究員 田中克明
- 研究部担当部長 山田慎也
- 研究部長 大石人士
- 研究部副部長 望月毅
- 主任研究員 塩野敏晴
- 主任研究員 玉置実
- 主任研究員 川島康明
- 主任研究員 大石真裕
- 主任研究員 長村敏孝
- 主任研究員 冨田洋一
- 常務理事 高橋節郎
- 専務理事 中嶋壽志
- 調査部長 内野孝宏
- 理事長 古知弘行
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