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  • 主任研究員 大石真裕
  • No.0113

“目的”と“目標”

 「パート活用より、正社員を見直せ」「持たざる経営より、資産保有に勝機」「選択と集中より、選択と攻めの分散を」・・・先日、日経流通新聞を読んでいたら、成長力の高い有力専門店が、流通業界の「鉄則」と思われた考え方を覆し始めたという記事が目にとまった。

 正社員を増やした企業として、株式会社エービーシー・マートがあげられていた。靴の専門小売店「ABC-MART」を展開する同社では、平成14年から約1年半にわたって大幅な前年割れが続いた既存店売上高が急回復を遂げたが、そこで店舗改装やテレビCM以上に効果を発揮したのが、正社員比率の拡大にあったという。それは、販売能力だけをみれば優秀なアルバイトもいるが、最も重要なことは、売上の確保よりも利益の確保であり、目標と利益を共有できるのが社員の強みであるという考えに基づいたものである。
 そして、選択と攻めの分散を実践している企業としては、「ユニクロ」で有名な株式会社ファーストリテイリングがあげられていた。日本の人口が平成18年をピークに減少に転じる中で、“集中”の先に成長は見えないと判断し、海外展開と事業分野の拡大に活路を見出そうとしている。事業分野の拡大では、以前は野菜の販売なども手掛けていたが、現在は、紳士服や靴、ファッション雑貨などを対象にM&A(企業の合併・買収)に意欲をみせている。

 こうした動きをみると、経営に“絶対”というものはなく、環境変化をいち早く察知し対応していく柔軟さが必要であると改めて感じる。そうした中でも、“不変”であるべきだと思うのは、「企業理念」である。では、「企業理念」とは何か。それは、企業の存在意義であり、根本的な目的である。この“目的”を実現するために、長期ビジョン(=目標)を描き、その姿に近づくための方策に落とし込んでいく。しかし今、この“目的”が形骸化、ないしは“目標”と一体化してはいないだろうか。「5年後の株式公開を目指す」「3年後には売上を倍増する」・・・これは立派な“目標”だが、“目的”ではなかろう。これが、企業の存在意義だとすれば、世の中には、顧客第一ではなく、自己第一主義的な企業が増えてしまう。
 そんな中で、先日お会いした浜松のある会社の社長は、「原理原則」という言葉をとても大切にされていた。「創業したのは、自分達の技術で世の中に貢献したいと考えたから。確かに売上目標はあるが、原理原則に立ち返り会社を興した時の目的に向かっていくことが何より大切で、数字は結果としてついてくるものだと思う」。当社は、創業約10年と、いまだ“青臭い”企業かもしれないが、お話を聞いてすがすがしい思いがした。

投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2004年06月21日|

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