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  • 主任研究員 大石真裕
  • No.0021

広まるか“ワークシェアリング”

 1人当たりの労働時間を減らし、できるだけ多くの労働者で仕事を分かち合い、雇用の維持・創出を図る『ワークシェアリング』が関心を集めている。大手電機メーカーなどで導入がはじまり、今年3月には、政府・連合・日経連の3者によって「ワークシェアリングの取り組みに関する5原則」が合意され、一時的な景況悪化を乗り切るために従業員の労働時間や賃金を短縮・削減し、多くの雇用を維持する「緊急避難型」と正社員の勤務の仕方を多様化し、女性や高齢者などに雇用機会を広げる「多様就業対応型」が、今後の推進の柱と位置付けられた。
 こうした中、静岡県が県内の労働組合を対象に行った調査によれば、「緊急避難型」ワークシェアリング」を「既に実施している」(1.9%)、または「導入に向けて労使間で具体的協議を行っている」(0.8%)という組合は2.7%にとどまり、その一方で、「分からない、考えていない」が48.1%を占めるなど、「緊急避難型」ワークシェアリングに対する関心は、総じて低いといえそうだ。

 企業が、従業員の解雇や賃下げなどのリストラを断行し、固定費削減を図ることは収益向上のために有効な手段であろう。しかし、多くの企業がこうした行動をとったならば、わが国は失業者が溢れ、消費不振=売上減少→収益低下といった悪循環に陥る懸念があり、マクロ的にみれば、雇用を維持しつつコスト削減を図るワークシェアリングの普及が期待されよう。とはいえ、ワークシェアリング導入のためのハードルは決して低くはなく、コスト削減以上のメリットが得られなければ、敢えて企業がワークシェアリングを導入するとは考えにくい。強いて挙げれば、危機意識を社員が共有することで、停滞しがちな士気を維持・向上させることが考えられるが、総合的にみて、「緊急避難型」ワークシェアリングが普及・定着することは難しいかもしれない。

 むしろ、「多様就業対応型」ワークシェアリングが、来るべき若年労働力不足の時代に、女性や高齢者を戦力化していくために必要となるのではないだろうか。その点において、4月の育児・介護休業法改正により、事業主が勤務時間の短縮等の措置を講ずる場合には、短時間勤務制度、フレックスタイム制などで対応することが決められたり、また厚生労働省が設置した「パートタイム労働研究会」において、仕事・責任が同じであれば、パートタイム・フルタイムを問わず処遇決定方式を合せることが打ち出されるなど、柔軟な働き方が可能となる社会に向けた動きが始まっている。
 「多様就業対応型」ワークシェアリングが普及するには、税制や社会保険など公的制度の見直しが必要であり、制度のみならず労働者の意識も変らなければ実際の運用は進まない。こうした環境が整うには、しばらく時間がかかりそうだが、未来の人事・雇用制度の1つのあり方を示すものとして、「多様就業対応型」ワークシェアリングは次第に広まっていくのではないかと思う。

投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2002年07月26日|

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