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"道徳"と"経済"

昨年暮れ、埼玉県深谷市で行われた「マイナス入札」が注目を集めた。廃校となった小学校の体育館と敷地の売却に際して、予定価格をマイナス(=市側がお金を払う)とした入札を実施したのだ。落札者が体育館を解体し、住宅を建てることを条件に行った入札には2者が応札、市内の会社経営者が▲795万円で落札したのである。
こうした動きの背景には、人口減少や少子高齢化に起因する自治体財政のひっ迫や公共サービスに対する需要の変化・減少がある。公共施設・インフラを今と同じ規模で維持・更新し続けることは困難である。かといって、放置しておけばまちは廃れていく。そのため、施設の統廃合や売却の動きは加速していくと思われる。そして、「公民連携(PPP)」を進めていく必要性も高い。
PPPとは、公共施設などの整備・運営に民間の資金や創意工夫を活用するもの。PFIやコンセッション、既存公共施設への収益施設の併設、指定管理者制度などの手法を用いて、新たなビジネス機会を拡大し、地域経済の好循環を実現するとともに、公的負担の抑制を図り、国や地方の基礎的財政収支の黒字化を目指す"経済・財政一体改革"に貢献することが期待されている。
静岡県内をみると、掛川市では、公共施設の管理の考え方を"運営"から"経営"へと転換、指定管理者の経営の自由度を高める運営改革を実施した。これに基づき、掛川城の指定管理者に選定された民間事業者は、「掛川城公園1日ワンダーランド」をコンセプトに、周辺施設との共通入場券の販売やカフェの設置、朝市開催などの取組みを行い、3年で恒常的な赤字を解消するに至った。
沼津市では、利用者減に直面する少年自然の家を公園一体型の宿泊施設に転換、都市公園法に基づく設置管理許可を得た事業者が独立採算で運営している。「泊まれる公園」という新しい価値の発信で、県外からも多くの利用者が訪れており、沼津の認知度アップや市内回遊による活性化にも期待がかかる。農村再生請負人とも評される二宮尊徳は、「道徳を忘れた経済は罪悪である。経済を忘れた道徳は寝言である」という言葉を残している。理念のない経済活動は罪悪を生み出す一方、高い理念を掲げても利益が出なければ活動を継続することはできず、"道徳"と"経済"がバランスすることの重要性を説く。
以前より「都市経営」の重要性が言われ、自治体では予算、人材など限られた資源を有効活用する「効率性」を重視して住民福祉の増進に努めているが、今後はさらに「収益性」の意識を強めることが必要だろう。人口、税収が減少し、地方自治体といえども破綻、消滅するリスクが高まる中、PPPに前向きに取り組むなど経営感覚を高めることが、財政負担軽減とまちの活力創出につながっていく。

投稿者:主席研究員 大石真裕|投稿日:2019年03月01日|

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