ウィークリーコラム

ホーム > ウィークリーコラム > 主任研究員 大石真裕 > 人気を集める美術館、動物園の集客の秘訣

  • 主任研究員 大石真裕
  • No.0177

人気を集める美術館、動物園の集客の秘訣

 早いもので、2005年も残すところ1ヵ月余りとなり、日経トレンディ12月号(日経ホーム出版社)には、恒例となった今年の「ヒット商品ベスト30」が掲載された。これをみていくと、第1位が、携帯オーディオプレーヤーの「iPod nano&iTMS」、第2位は2,205万人の入場者を集めた「愛知万博」、第3位が日記形式の簡易型ホームページである「ブログ」などと続く中で、第17位に「金沢21世紀美術館」がランク入りした。
 
 金沢21世紀美術館は、2004年10月、金沢市に開館し、1年足らずで来場者数は150万人を突破したそうだ。目玉となるような有名画家の作品もほとんどないこの美術館が、年間5?6万人を動員すれば成功といわれる地方美術館の常識を覆した要因について、同誌では、既成概念にとらわれない数々の試みがあったとしている。たとえば、メインターゲットを子供やファミリーに据えて、見るだけでなく、触ったり乗ったりして楽しめる“体験型”の作品や、強化ガラスに水を張り、まるでプールの中にいるかのような感覚が味わえる空間などの「コミッション・ワーク」と呼ばれる建築と一体化した作品が大きな見どころとなっており、こうした作品の多くを無料で楽しめるところが、集客の秘訣のようだ。美術館の賑わいを受けて、金沢駅周辺の商店街には、雑貨店や甘味店など10軒以上の店舗が開業するなど、地域活性化にも貢献しているということである。
 思い起こせば、2004年の「ヒット商品ベスト30」には、旭川市の「旭山動物園」が第6位にランクインしていた。決して珍しい動物がいるわけではない同園が多くの来園者を呼び込んだのは、ペンギンをあらゆる方向から観察できる水中トンネルや、アザラシが縦横無尽に泳ぎ回る円柱水槽、ホッキョクグマを目の前で見ることができる半球状のドームなど、動物園の常識を破る斬新な展示施設整備や演出が大きな要因となっている。
 
 これらの工夫は、金沢21世紀美術館では、「地元の人に親しみを持ってもらえる広場や公園のような美術館」というコンセプトに、また旭山動物園では、動物の姿形を見せる従来の「形態展示」に対して、動物本来の行動や能力を見せる「行動展示」や、できるだけ自然に近い状態で見せる「生態展示」というコンセプトに基づいている。いずれも既存の美術館、動物園の課題を踏まえて打ち出された、新しいコンセプトといえよう。
 新たな文化・娯楽施設が続々と登場し、余暇ニーズも多様化するなど、事業環境が厳しさを増す中でも、従来とは異なる切り口で見事に集客を図っているこれら2つの施設の存在は、ビジネスの分野においても、現状分析に基づき新たなコンセプト、ビジョンを掲げ、従来とは異なる角度からアプローチをすることで、成熟した市場であっても需要を開拓していくことが十分可能であるということを示唆しているのではないだろうか。

投稿者:主任研究員 大石真裕|投稿日:2005年11月18日|

ページの先頭へ

入会お申し込み・資料請求について 入会および維持会員への切り換えなどに関するご照会・お問い合せは、総務部会員担当までご連絡ください。
また、入会資料の送付をご希望される方は、入会お申し込み・資料請求フォームよりお申し込みください。電話番号 054-250-8750 E-mail info@po.seri.or.jp 受付時間 9:00から17:00 祝日 土・日・祝除く入会お申し込み資料請求フォーム

  • 維持会員専用サイト

カテゴリー

最近の投稿

月別

  • サービス案内
  • 財団法人 静岡経済研究所 書籍のご案内
  • 静岡経済がわかるリンク集
  • 静岡県内事業者一覧
  • 研究社員紹介
  • マーケットプラザ