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- 常務理事 高橋節郎
- No.0026
変貌するわが国の国際収支構造
わが国の平成13年度における貿易収支の黒字額は、前年度の11.5兆円から9.0兆円へと2.5兆円の大幅な減少をみた。従来、貿易収支の黒字額が縮小するケースは、景気拡大局面において輸入が増加したためであったが、13年度は、国内景気が低迷し輸入が減少する中、米国発の世界景気の減速により輸出がそれ以上に減少したという点で、これまでにない特徴となっている。また、この背景には、製造業の海外生産シフトにより、輸出増加に限りがある一方、中国をはじめアジアからの製品輸入が活発化する、といった構造的な要因も加わっているものとみられる。
一方、海外への証券投資や企業の海外進出などの直接投資から生ずる利子・配当収入等から構成される所得収支は、前年度比1.7兆円増加し8.7兆円となった。このため、貿易収支の悪化にもかかわらず、経常収支(貿易・サービス収支、所得収支などの合計)の黒字幅は、前年度の12.4兆円から11.9兆円へ、0.5兆円の減少に留まった。この所得収支の8.7兆円という数字は、貿易収支に匹敵する金額であると同時に、過去最大であり、日本の国際収支構造が、モノ・サービスの輸出依存型から、投資収益の割合が大きい債権大国に移行しつつあることを示している。
所得収支の黒字拡大の背景には、その源泉となる対外純資産の蓄積がある。
これまで日本は、主に輸出入を通じて貿易黒字を計上、それを海外証券投資や海外進出などの直接投資に振り向け、これが、現在の投資収益をもたらしている。13年末現在、わが国の対外純資産残高は179兆円となり、平成3年以降、11年連続で世界第1位の座を維持している。
ところで、国際収支の発展段階説によれば、一国の国際収支構造は、対外債務国から対外債権国へ、そして債権国になってからは、その中身が貿易依存型から投資収益依存型に変わっていくとされ、すでに、日本もこれに沿った変遷を遂げている。この説によれば、次の段階は、米国や英国のように、経常収支が赤字となり、それを外国資本で賄うことになる。実際、日本では、今後、人口構成の高齢化に伴う貯蓄の減少や、生産拠点の海外移転、アジア諸国の生産能力の向上などから、貿易黒字の縮小が見込まれるといわれている。
しかし、日本の場合、米国やかつての英国のような基軸通貨国ではないため、安定的に資本流入を促すだけの国際的な信任が得られるかどうかは疑問である。そのため、現在の貿易黒字の状況を維持していくことが肝要であり、高付加価値で競争力のある商品を生み出し続けることと同時に、将来にわたり安定的な所得収支黒字を維持するため、引続き積極的な投資活動を行っていくことが望まれよう。
投稿者:常務理事 高橋節郎|投稿日:2002年09月06日|
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