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主席研究員 内野孝宏 のコラム

  • 主席研究員 内野孝宏
  • No.59

コンピュータはどこまで進化する?

 3年前の話で恐縮だが、囲碁棋士の中でもトッププロの武宮正樹九段が4子局のハンディ戦とはいえ、19路盤で囲碁のコンピュータソフトに負けたのは、私にとって衝撃だった。すでに将棋の世界では、優勝したプロ棋士でないと最強ソフトに挑戦できない大会まで開催されるほどになっているが、囲碁は「曖昧」の要素がとても大きく、コンピュータがプロに勝つのは至難と言われてきたからである。
 囲碁を打たれる方はご存じと思うが、「19路盤は宇宙と呼ばれるほど探索空間が膨大」、「地という領域の広さを争うゲームだが、地の確定はゲームの最後」、「局所的な最善手が全局的な最善手とはならない」など、打った石の価値を数値化していくには前提条件が複雑すぎるのである。よく言われるのが、「石が厚い・薄い」、「形が良い・悪い」、「味が良い・悪い」など、説明不能なアナログ感覚の言葉である。
 もちろん、コンピュータは、あらかじめプログラムされた通りに、実直かつ極めて高速処理しているに過ぎない。では、囲碁ソフトがここまで強くなった理由は何だろうか?それは、乱数を使った膨大な疑似経験(仮の着手)から正解の近似値を出すというものらしい。アルゴリズムと呼ばれるもので、たとえば円の面積を求めるには、πr2乗という公式を知らなくても、正方形の一辺と直径を同じとする円を一枚の紙に描いて、その中に膨大な点を無作為に打ち、円の中の点と円から外れた点の数を比べる。これを何度も繰り返し、その数の割合で円の面積を求める。いわば、無数の経験からの類推である。さらに最近では、人間が自然に行っている学習能力と同様の機能をコンピュータで実現する「機械学習」も研究されている。
 こうした人工知能とも呼ばれるコンピュータの進化は、驚くべきビジネスを生み出そうとしている。「自動運転で客を運ぶロボットタクシー」、「文字を眺めるだけでコンピュータに文字入力」、「防犯カメラの映像から犯行に及びそうな人の行為を予測」等々である。
 もちろん、こうしたビジネスそのものも驚嘆に値するが、実は、人工知能の最大のインパクトは、これまでのビジネスモデルを一変させるのではないかということにある。つまり、企画や開発など、人間特有とされてきたソフトな業務分野をコンピュータが高度な類推と学習能力を持つことで、かなりの部分を代替してしまうことである。コンピュータが自分でインターネットの情報を読み、理解し、学び、類推して、企画することも考えられる。グローバル競争における新興国との差別化、企業の真の競争力とは何かを新たな視点から問われる時代が来るかもしれない。

投稿者:主席研究員 内野孝宏|投稿日:2015年10月01日|

  • 主席研究員 内野孝宏
  • No.49

サービス革新で活力ある地域社会を

 わが国GDPの約7割を占めるサービス業。そのウエイトは年々拡大しており、今後の経済成長の大きな鍵を握ると言われている。ただ、わが国のサービス業は、従来から生産性の低さが指摘されており、このところの深刻な人手不足によって大手外食産業が店舗休業に追い込まれた状況をみても、サービス業の成長には生産性の向上が欠かせない。また、今後の少子高齢社会を考えると、サービス業には解決すべき課題も多いようだ。
 ひと口にサービス業といっても多種多様であり、生産性という面から1人当たりの付加価値額をみると、情報通信、学術・研究、専門・技術サービス等の「知識集約型」サービス業は大きく、かつ上昇傾向にある一方で、医療、福祉、飲食、宿泊、小売業などの「労働集約型」のサービス業は小さく、かつ低下傾向にある。これは「労働集約型」サービス業の特性として、生産と消費の同時性や、繁閑の差が大きく反復性の確保が難しいことなどが起因している。
 そうした中で、高齢化の進展は当然のことながら、医療・福祉サービスなど生産性の低いサービス業に対する需要が拡大することや、人口減少は、大都市と地方といった地域間格差を伴いながら進行するため、地域によっては消滅するサービス業も出てくる事態が憂慮される。とくに「労働集約型」で生活関連のサービス業は、人口密度の大小によって生産性が左右される“密度の経済性”が強く働くためである。
 最近公表された空き家率をみると、2013年10月時点で、全国の空き家率は過去最高の13.5%を記録。空き家戸数は820万戸に達しており、実に7.4戸に1戸が遊休ストックの状態にある。ちなみに、静岡県は16.2%で、全国を上回る状況にある。
 サービス業は個別性が強く、製造業と比べてグローバル競争の圧力が弱いため企業間の生産性格差はもともと大きいという面はあるが、今後の少子高齢社会を考えれば、生産性向上には従来とは異なる視点からのイノベーションが欠かせない。その方向を挙げてみると、人口密度が激減する地域については、コンパクトシティ形成に向けた空き家の有効活用等であり、人材の育成・輩出については、サービス業の経営を本格的に学べる大学等の高等教育機関の設立であり、機械化・IT化については、介護など微妙な手作業や肉体重労働が必要な分野でのロボット活用等である。
 サービス業の高付加価値化を実現し、そこで働く人々の所得を拡大し、さらにサービス需要を拡大する。こうした好循環を生み出し、活力ある地域社会を形成するには、サービス業の生産性向上に向けた大胆な革新が重要と考える。

投稿者:主席研究員 内野孝宏|投稿日:2014年10月01日|コメントを書き込む

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