調査部長 内野孝宏 のコラム
- 調査部長 内野孝宏
- No.0328
ANAの「沖縄航空貨物基地」を視察して
富士山静岡空港の就航先のひとつである沖縄県那覇市。そこに、ANA(全日本空輸)が進めている「沖縄航空貨物基地」がある。今12月、今後における富士山静岡空港の航空貨物利用促進に向けて、10月26日に運用開始したばかりの当基地を視察する機会を得たので、その概要を紹介してみたい。
この貨物基地は、那覇空港に隣接する国内線ターミナルビル内に位置しており、新たな貨物上屋として、国際貨物エリア20,000平方メートル、国内貨物エリア7,700平方メートルの合計27,700平方メートルが整備された。総事業費は90億円といわれており、空港利用の促進、産業振興や雇用拡大が期待できるとして、沖縄県も一部費用負担しているとのことである。
運用についてみると、貨物専用機(B767‐F、積載能力50トン)7機で、羽田、成田、関空、ソウル、上海、香港、台北の東アジア主要空港と結び、それぞれの空港を深夜に出発、この貨物基地に一旦、荷物を集結させてから仕向け地別に積み替えを行い、翌朝には、それぞれの空港に到着するというものである。たとえば、羽田は24:00出発→6:30到着、ソウルは23:35出発→6:40到着、香港は23:15出発→6:55到着といったタイム・スケジュールであり、深夜便を利用することで、航空貨物にとって最大の武器となるスピードを顧客(荷主)に提供できる仕組みである。
実際、深夜に7機が貨物スポットに勢ぞろいした姿を見たが、なかなかの壮観な光景であった。現状の就航先は7先で、年間取扱貨物の合計トン数は24万トンとなるが、今後は就航先を12先、取扱量を45万トンにまで増やす予定である。これまでの取扱実績に対する細かな説明はなかったが、平均すると6割程度の積載量で、日本から海外へは「機械部品」、海外から日本国内へは「生鮮品」が主たる貨物との説明であった。経済が落ち込む中では、“まずまずの滑り出し”という評価である。
ANAの戦略はこうだ。1.東アジアの航空需要が、今後、世界の中で最も高い伸びを期待でき、2.東アジアのハブ空港と飛行時間4時間以内で結ぶことができる沖縄の立地優位性を活かし、3.深夜発・早朝着といった荷主に利便性の高い集荷・配達時間のダイヤを提供することによって、4.フェデックスやDHLなどインテグレーターと呼ばれる外国航空会社に奪われていた「エクスプレス貨物」を奪い返すとともに、5.沖縄の産業振興(物流・加工関連の企業立地の促進)にも繋げていこう、というものである。ANAの説明では、航空業界が厳しさを増す中で、「社運を賭けたプロジェクト」とのことである。
ただ、静岡空港を考えた場合、この貨物基地と航空貨物を行き来させるには、いろいろなハードルがある。そのもっとも大きなものが、機材である。現状の沖縄便はベリー部に貨物を載せるスペースがないため、旅客需要を拡大して貨物を積載できる「中大型機」運行への格上げが必要としているが、沖縄便は、基本的に需要変動が大きい観光需要が主力であり、また、深夜便は騒音問題をクリアしなければならないという壁がある。
私の個人的な意見を述べるならば、沖縄貨物基地に静岡空港からの航空貨物を運ぶには、年間10万トンという統計からみた後背圏の航空貨物量から推測して、旅客機でなく50トンクラスの貨物専用便を週1~2回程度飛ばすことを期待したいと思っている。ただ、機材繰りを考えると、週1~2便の貨物専用便については、静岡空港だけでなく、曜日ごとに、仙台、小松、岡山、千歳、福岡など、他の主要地方空港と組み合わせていくことが必要となろう。また、これはANAの機材を利用することが前提であり、すでに、荷主とフォワーダー、そして航空会社との関係は、ある程度固定化されていることもあり、荷主、フォワーダーのそれぞれに、いかにメリットを与えられるかも大きな課題となろう。
ところで、歴史という観点から沖縄県というものを大きく捉えてみると、「中継」というのが、沖縄の大きなキーワードになっていたと言える。ふるくは、中国・明の時代に、琉球王朝は、日本、朝鮮、安南(ベトナム)、シャム(タイ)、ジャワ(インドネシア)とともに、中国と「柵封」(朝貢)態勢を結んでいたが、その中で、これら東アジアの国々から商品を輸入して、それぞれの国に輸出するという「中継」貿易で栄えたという歴史がある。また、最近では、「コールセンター」の基地が沖縄にあり、全国各地からの電話に対する応答サービスを、沖縄県がオペレーション基地として、その代行機能を果たすなど、これもひとつの「中継」といえる。観光や農業以外に、これといった産業がないことに対する沖縄県の大きな戦略であり、この「沖縄航空貨物基地」も「中継基地」として、大きく飛躍していくことを期待したい。
投稿者:調査部長 内野孝宏|投稿日:2009年12月25日|コメントを書き込む
- 調査部長 内野孝宏
- No.0273
野生ジカの異常繁殖に想う
昨年、受託調査で北海道に行った際、行政関係の食品研究機関が開発した「シカ肉ソーセージ」を試食する機会があった。これは、全国的に野生ジカが異常繁殖し、山林や農作物等への深刻な食害被害を与えていることから、その有効活用の事例調査として取材先を訪問した時の話である。シカ肉は初めてだったことや、途中の釧路湿原の列車の車中で、何度も何度も野生の「ナマ」ジカを警笛で追い払った光景が目に浮かんだせいかあまり気乗りがしなかったが、これがどうして、なかなかの美味であった。
野生ジカの繁殖は、静岡県も例外でなく、伊豆の天城山を中心に伊豆半島全体で本来の適正頭数といわれる2,000頭に対して、5倍の約1万頭にも膨れ上がっているという。山頂付近のササなどは、すでに食べ尽くされており、ほとんどの樹木も幹をグルリと一周食べられて枯れ始めている。また、食べる物がなくなってきたせいか、だんだんと人里にも降りてきて、静岡県特産のわさびなどは、当初は葉だけだったが、あの辛い根の部分まで掘り起こして食べてしまうという。本来、シカは臆病な性格で見慣れぬものをみると全身硬直を引き起こすそうだが、ヒトにも列車にも慣れてしまったのだろう。最近では、足りないエサを求めて箱根方面にも集団移動を始めているとのことである。
シカ肉の有効活用については、課題が多い。まず、農耕民族である日本人には、野生の獣肉を食する習慣がない。猟友会の方々が「管理捕獲」したシカの一部を、親戚か地元の民宿に配る程度で、流通ルートはないといってよい。肉処理の衛生管理マニュアルが確立されていない地域も多く、現状、自家消費として普及している「シカ刺し」などは、本来、野生獣が持つ病原菌だらけの危険極まりない食べ物といってよい。
また、散弾銃などを使ったものは、肉がバラバラとなって売り物にならないし、高齢化の進む猟友会のメンバーが勾配険しい山中からシカを運び出すのは重労働である。歩留まりも低く、寒冷地で一回り体格の大きいエゾシカでさえ3割弱、天城ジカのようなニホンジカとなると、10%程度に落ちてしまう。勢い、豚肉の価格に比べて2倍程度と、どうしても値段は高いものにつく。ツノは漢方薬、皮はセーム皮、肉の一部をペットフードに活用しようとする向きもあるが、採算ベースに乗せるのはなかなか難しいようだ。
深刻化する被害に対応するため、県を中心に伊豆地区の行政が研究会を立ち上げたが、シカ肉を消費者に届くまでの流通ルートに乗せるためには、北海道で実施している「捕獲したシカを養鹿場で一次養鹿する」供給体制を整えなければ、事業として始まらないものと思われる。猟友会のメンバーらの不定期的な猟に依存するのでなく、良質な肉の安定供給こそが第一歩であり、そこから商品開発や多様な販路開拓を行い、価格を引き下げる体制もでき、「食」のひとつとして定着させていくことが大事である。
それにしても、なぜ、これだけ野生のシカが増えてしまったのであろうか。メスの捕獲を禁止してきたことの反動、オオカミなどの天敵がいなくなったことによる食物連鎖の崩壊、地球温暖化により越冬できるシカの増加など諸説飛び交うが、いずれにせよ、巡りめぐって人間界に影響が戻っていることは確かである。こうした異常繁殖は、シカだけでなく、サルもイノシシにも起きているという。
世界的な穀物価格の高騰の中で、日本の食料需給率の低さが問題視されているが、一度、環境サミットなどでこうした問題をクローズアップし、シカ肉の有効活用を国策のひとつとして取り上げる必要もあるのではないだろうか。私自身はすでにバイバイしているが、21世紀の終わりには、こうした自然界によるしっぺ返しが強く表面化して日本の食文化も大きく変わってしまい、極論かもしれないが、日本人らしい勤勉さや器用さも消えてしまうなど、経済の優位性の根幹を脅かすかもしれないことを危惧するものである。
投稿者:調査部長 内野孝宏|投稿日:2008年06月27日|コメントを書き込む
- 調査部長 内野孝宏
- No.0257
「富士山静岡空港」利活用の視点
静岡県にとって、初の「空」のインフラである「富士山静岡空港」の開港(平成 21年3月予定)まで、あと1年に迫った。それまでは、土地の収容問題などもあって「必要論議」に終始せざるを得ない面もあったが、ここにきて、ようやく、空港建設の本来の目的である「利活用」についての論議へと動き出した感がある。
こうした利活用論議はいろいろな場面を通じて接する機会があるが、ただ、その熟度をみると、現段階においては産業間及び地域間で温度差があることは否めない。たとえば、観光などは、空港利用のイメージが広がりやすいこともあり、すでに東アジアの国々の観光ニーズの把握や静岡県内の観光ルートマップの作成など、かなり具体的な論議に至っている半面、ビジネスユースとなると今一つの感がある。また、地域別には、お膝元の中部は比較的活発であるが、東部・西部に関しては、羽田・中部セントレアの両空港との距離もあってか、どうしても迫力に欠けるようだ。
これは、おそらく「初」ということで空港情報が静岡県に集積されておらず情報源に乏しいこと、とくに静岡県の場合、インフラについては、高速道路にしても鉄道にしても、「国の政策の中での建設」という経験でしかないことが「活発な利活用論議を生む風土になっていない」のではないだろうか。
ここで、空港利活用の全体像について、他空港での視察経験などを踏まえて私なりに整理してみると、その視点としては、(1)空港は道路や港湾と同様、産業や生活のためのインフラ(ツール)であり、地域への経済波及効果を高めるには、「地元にいかにカネを落としてもらうかの仕組みづくり」を地域が主体となって戦略的に展開することが重要、(2)地域への大きな経済波及効果に結びつけるためには、空港機能を支える産業群(機内食、リネンサプライ、警備・清掃、物販・飲食、バス・タクシー・レンタカー)以外においても、幅広く空港を利用した需要創造を行うことがポイント、(3)それには、「富士山静岡空港」の特性を活かす方向での検討が有効-などが挙げられよう。
なお、(3)の「富士山静岡空港」の特性分析については、現在の想定路線を前提に「SWOT分析(強み、弱み、機会、脅威)」(下表A参照)を行い、また、(2)の幅広い「需要創造」については、ア.臨空ビジネスモデルの形成による既存産業の活性化・高付加価値化(フライト農水産業、観光産業、製造業、サービス業)、イ.政策誘導による新産業の育成・誘致、ウ.長期的な地域活性化効果などを挙げてみたので、参考にしていただければ幸いである(下表B参照)。
空港というインフラの最大の特徴は、「遠隔地を迅速に点と点で結ぶ」、「途中下車なし」のインフラということである。つまり、空港までの移動や目的地への移動はピンポイント的な動きが強く、周辺地域において、ついでに「○○する」という動線があまりみられないため、「まちづくり」など地域開発が起きにくいことである。利活用への取組みは、これからが正念場を迎えるが、地域への大きな経済波及効果に結びつけるためには、空港を高度利用していくための取り組みを、各地域・各産業または地域間・産業間で幅広く、静岡県の空港として官民が連携しつつ戦略的に展開していくことが重要である。
投稿者:調査部長 内野孝宏|投稿日:2008年02月14日|
- 調査部長 内野孝宏
- No.0198
広がる農産物輸出の動き
農産物輸出の動きが全国的な広がりをみせている。青森県のりんご、島根県のコメ、福岡県のいちご、鳥取県と新潟県のナシ、北海道のナガイモ等々である。たとえば、青森県のりんごなどは台湾市場を中心に開拓が進み、2000年に2,160トン程度の輸出であったものが2003年には15,658トンにまで急増している。
この他、テスト輸出の取組みを始めているところも多い。岡山県のピオーネや切花、静岡県のお茶やメロンもそうである。日系企業の進出などが著しい中国(上海)など、現地の百貨店、量販店・スーパー、レストランでの試食会や、アンテナショップの出店、バイヤーを集めての商談会など、現地での市場調査や販促活動に力を入れ始めている。お茶などは、たんに輸出するだけでなくドイツの現地に「お茶室」を設営してしまうなど、茶文化の普及から取組んでいる。
こうした輸出急増の背景には日本食ブームがあり、輸出先も欧米からアジアまで世界的な広がりをみせているが、中でも、著しい伸びをみせている先としては、日本の農産物は「一級品」との評価が高まっている台湾がある。つまり、青森りんごの急増をみても、一般家庭において「ちょっとした贅沢品」を購入するだけの消費マーケットとして成長しているからであろう。ただ、台湾などは親日派が多くて輸出しやすい条件にあるため、日本各地からの輸出攻勢による産地間競争激化の様相を呈しつつあるとも言われている。
先日、ある調査で福岡県を訪問したが、福岡県では県知事自らが先頭に立って農産物輸出に力を入れており、担当者がノルマのきついことを嘆いていた。平成20年の目標金額は20億円であり、平成17年の6億円に比べ、3年間で3倍超の増加を目指しているからだ。具体的には、「福岡の食輸出促進センター」という専門組織を福岡県農政部内に設立、台北市での「福岡県フードフェア」の実施、全県統一の「福岡ブランドマーク」をポスターや商品のラベルに使用、海外バイヤーの福岡県への招聘などの取り組みを行っている。
静岡県のお茶などもその例であるが、以前はかなり輸出実績があった農産物が多かった。それが円高の定着などに伴いストップせざるを得ない状況となったものの、ここにきて国内での産地間競争が激化や量販店ルート拡大の中での価格競争に巻き込まれるよりも、経済発展による高級品の売れ行きが好調な海外マーケットの成長を狙って、再び農産物輸出の動きが広がっているといえる。
投稿者:調査部長 内野孝宏|投稿日:2006年08月04日|
- 調査部長 内野孝宏
- No.0159
地方空港の着陸料
地方空港の利便性や競争力を高めていくためには、より多くの就航先に、より多くの便を飛ばすことが必要である。それには、少しでも多くの航空需要を開拓していくことと同時に、航空会社にとってコストとなる空港着陸料の引き下げも、「選ばれる空港」へのひとつの鍵を握るといわれている。
この空港着陸料については、その言葉自体が一般には馴染みがないと思われるが、これは、滑走路使用の対価として航空会社から徴収するもので、たとえば、電源・消防・保安関係等々の面で空港を維持・管理し、飛行機を定時かつ安全に飛ばしていくための収入源のひとつとなっている。「静岡空港」のように、静岡県が設置し、管理・運営する「第3種空港」の場合は、静岡県が徴収することとなる。
その着陸料で、よく言われるのが、日本の空港着陸料の高さである。着陸料の料金体系はやや複雑だが、基本は、国内線と国際線を区別した上で、機材(飛行機)の重量と騒音の大きさ、及び乗客数に比例する。2005年版の「数字でみる空港」(航空振興財団)によると、たとえば、B747(430席)ジャンボの場合、国際線の旅客一人当たりの着陸料は、成田が3,150円、関空が2,743円に対して、先頃、開港した中部国際空港が2,178円と低く設定したものの、ニューヨークの1,682円、パリの1,277円、ロンドンの380円を大きく上回っている(※ただし、旅客が支払う「旅客サービス施設使用料」などを加えた空港全体の利用料金は、欧米の空港の方が高くなっている)。
成田については、国際ハブ空港としての主導権争いもあり、今年6月に、2割程度の着陸料の値下げ申請を行ったが、それでも、香港の1,219円、シンガポールが741円、ソウルが1,177円など、近隣のアジアの空港に比べ、依然、割高水準である。これは、建設コストや地価の高さ等によるところが大きいようだが、では、静岡空港のような地方空港の場合はどうだろうか?
国土交通相が管理する地方の基幹空港(新千歳、福岡などの「第2種A」)については、羽田のような「第1種空港」の2/3が基準となっているが、地方公共団体が管理する地方空港(「第2種B」及び「第3種空港」)については、そこからさらに独自に引き下げることができるようになっている。先日、視察したある第3種空港の担当者の話では、「新規路線や需要の安定しない路線などは、羽田の2/3からさらに引き下げているが、それは、どの地方空港もほぼ同じだろう」とのことであった。
したがって、静岡空港が他の地方空港との競争を勝ち抜くためには、すでに、どの地方空港も着陸料の値下げが恒常的に行なわれていることを前提に、航空系、非航空系をあわせた空港経営全体のコスト引き下げ等のシミュレーションを検討していくことが求められるものと思われる。と同時に、需要が不安定な路線については、いかに安定させていくかといった需要創造が、やはり大きな鍵を握ることとなろう。
投稿者:調査部長 内野孝宏|投稿日:2005年07月01日|
- 調査部長 内野孝宏
- No.0145
空港需要創出へのビジネスモデル構築を
土地収用法の適用により、「静岡空港」の開港予定が2008年に延期された。当初計画時に比べ3年の遅れ、中部国際空港の開港にも後れを取ることになってしまったが、これを十分な準備期間ができたものと前向きに捉え、静岡空港の需要拡大や利活用の仕方について具体的な検討に入るべきではないかと考える。たとえば、需要予測についての賛否ばかりを唱えるのでなく、どのようにしたら利用客を拡大できるかを検討することが大事であると思われるので、ひとつのアイデアをここに提示してみたい。
飛行機を利用するには、今のところ定期便かチャーター便のいずれかの選択しかない。定期便は、航空会社が「こういう時間に、こういう場所へ飛ぶ便を組んだので、乗りたい人は集まってください」という既製品方式である。一方、チャーター便は、旅行会社などの利用側が主催者となり、「飛行機を利用してある場所へこういう目的で行きますが、行きたい人は集まってください。人数が集まれば、飛行機を準備してもらいます」というオーダーメイド方式である。
ただ、この2つの「やり方」では、航空需要の機会損失が発生する。つまり、定期便の場合、「この場所に、この時間までに移動したいのだが、その時間に合う飛行機がないので、その空港での利用はやめよう」ということになるし、チャーター便の場合、「予定人数が集まらないと予想されるものは企画しない」ため、少数派の航空需要を最初から削除しているからである。それらをインターネット上で幅広く需要をかき集めることで、採算に見合う航空需要にできないかということである。
たとえば、「行き先の空港別に、およそ何時までに到着したい人」を、掲示板で募集するのである。つまり、チャーター便のように「視察・観光ツアー」といった企画や目的を前提とするのでなく、また、航空会社が運行を決める定期便と違い不特定の利用者が「いつでも、どこへでも、飛行機を飛ばす」ことのできるオン・ディマンド方式にするのである。自治体関係者はもちろん、外資系企業や進出企業、県内に立地する主だった企業、旅行会社に、ビジネス需要や旅行需要の入力をお願いし、インターネットの共同購入のように、何人以上なら割引価格とすれば、需要も喚起されるのではないだろうか。
ただし、これには制約条件がある。ひとつは、必要人数に達しない場合、「取り止め」となることである。したがって、フライト日の数日前が募集期限になろう。もうひとつは、大型機を飛ばすだけの需要は集まらない可能性もあるので、100人以下の小型機を確保できる体制が整えられるかどうかである。そのためには、航空会社がどの程度チャーターに対応できるのか、あるいは、空港経営の努力(コストダウン)によって、航空運賃の値下げがどの程度できるかなどを研究していく必要があろう。
以上は、単なるアイデアとしての例に過ぎないが、開港してから静岡空港の利活用策を検討するのでは遅いのではないだろうか。県民の知恵を結集し、需要拡大のためのビジネスモデルの構築など、具体的な準備を進めなければならない時期がすでに来ているものと思われる。
投稿者:調査部長 内野孝宏|投稿日:2005年03月18日|
- 調査部長 内野孝宏
- No.0132
変革する生鮮品流通の中で、問われる卸売市場の機能
今6月、卸売市場法が改正された。主な改正内容は、商物一致原則の緩和、取引形態の多様化の推進、卸売市場活動の広域化である。
すなわち、今までは、卸売市場内に現物(青果物・水産物)を必ず搬入することと、卸売業者や仲卸業者などの市場関係者は、市場内の業者間だけで取引を行うことを原則としてきたが、今後は、市場の外に倉庫や配送施設を展開できることや、たとえば卸売業者は仲卸だけでなく市場外の大手小売業に直接販売したり、仲卸業者も直接産地から商品を仕入れることができるようになる。
それに伴い、取引形態も、セリ取引、受託集荷、委託販売から買付集荷や相対取引が積極的にできるようなるため、卸売業者と仲卸業者の垣根が崩壊していくことが予想されている。
これまで、生鮮品というのは、生産が天候などの自然条件に左右される一方で、流通については鮮度が要求されることから、生産したもの全てをセリにかけて、売れ残りが出ないよう完売していくことが義務づけられるなど、生産者本位の法制度となっていた。また、鮮度を落とさないために、地域ごとに適切な数の卸売市場を設置するなど、各地域ごとに生産から販売までの流通をなるべく完結させるようにしてきたのである。
しかしながら、こうした「生産者」のための法制度は形骸化してきている。流通の川下である小売業において、魚屋や八百屋などの業種別専業店の衰退が進み、スーパーやショッピングセンターなどの業態店や外食産業などが勢力を増す一方、川上である農協など出荷団体が合併等による大型化が進んでいるため、川中に位置する卸売業は、量の安定確保と多品目の品揃えが求められており、セリによる個別の値決めは、こうした流通の要望に即さなくなっているからである。
また、農協などの出荷団体も、常に安定した量を確保したい量販店など、比較的高値で取引してくれる卸売市場へと出荷先を絞り込む方向にあり、生鮮品の流通は品目ごとに特定の卸売市場に集中するようになってきている。それに伴い、不足する品目については他の卸売市場から調達するなど、卸売市場相互間の「転送」が増加しつつあると言われている。
卸売市場は、市場外流通の増加等により取扱数量が減少する中で、こうした出荷先の絞込みにより市場間格差が拡大するなど、大きな転換期にあるといえる。今回の法改正は、すでに起きている農産物の流通変化の動きに追随したものに過ぎないと見る向きが多いが、今後は、生産者にとってマーケティング戦略が一段と求められるとともに、卸売業者にとっても、品目ごとの特定の卸売市場への集中と小売業における業態店の伸長が進む中で、いかに品揃えを確保していくかが重要な課題となる。そうした中で、卸売市場のあり方や機能などが改めて問われていくこととなろう。
投稿者:調査部長 内野孝宏|投稿日:2004年12月15日|
- 調査部長 内野孝宏
- No.0121
組み合わせの妙
「組み合わせの妙」という言葉がある。妙とは、「不思議なほど優れている、きわめて美しい、巧である」の意であるから、「組み合わせの妙」とは、同じものでも組み合わせ方によって、全体の働きや機能、味わいや趣きなどが全然異なるもの、優れたものになるということであろう。
たとえば、料理などを思い浮かべていただきたい。全く同じ素材や調味料などを使っても、塩加減、ゆで加減や火の加減、ひとつひとつの素材の量の多寡、包丁さばき等によって、その料理の味や見栄えなどが、全然違ったものになる。それぞれの素材を活かしつつ、いかにひとつの素晴らしい作品に仕上げるか、それが料理人の真骨頂ということだろう。
野球のチームワークなども良い例である。ホームランバッターばかりを揃えたチームが圧倒的に強いかと言えば、実際にはそうならない。送りバントのうまい人、足の速い人、守備のうまい人、そうした人たちをいかにチームとしてまとめ、いかに勝てる集団に仕上げるかが監督たる指揮官の役割であろう。要するに全体のハーモニーが重要である。
実は、日本人はこの「組み合わせの妙」が実に巧みな国民であり、日本のモノづくりの強さ、グローバル競争の中で優位に立つための「見えざる武器」として、改めて注目されている。高い生産性・品質・スピードを追求し、うるさがたのお客に対してピンポイントで対応していくためには、チームワーク、情報共有、あうんの呼吸、微妙な連携調整など、総合的な組織力の発揮が必要であり、それこそがまさに日本人の得意とするところだからである。
以前、県内のある二輪車部品メーカーで「からくりライン」と呼ばれる製造現場を取材させていただいたことがある。そこでは、重力や還り動力を利用した加工材料の移動、現場作業者がそれぞれの工程ごとに検査まで行う多台持ち・多能工化、アタッチメントや治工具の自社開発によって汎用機を専用機のように使いこなす、などによって多品種効率生産への成果を挙げていた。
とくに、汎用機を専用機化させる治工具は現場からの活発なQC活動によるもので、たとえば、ステンレスやスチールなどの材料をロール状に板金する際に、ワンタッチで着脱できるカセット式の治工具を開発し、一台の機械で数種類の真円パイプをつくれるようにしている。これは、営業担当による顧客ニーズの収集・分析、そうした情報に基づく製造現場と設計・開発部門との徹底的な擦り合わせの中から生まれたものである。
わが国経済の閉塞感が言われる中で、ともすると、独自性や新規性など特定分野を深く掘り下げる専門能力の追求ばかりに目を奪われ勝ちであるが、グローバルな中での競争を考えた場合、世界工場化する中国は人口13億人とも言われており、その競争倍率から言っても、ある特定分野について限れば、日本よりも優れた専門能力の人間が選抜されてくる可能性は高い。しかしながら、その優れた能力を最大限に活かしつつ、組織力としてチーム一丸となって顧客の要望にきめ細かく応じていくことが苦手と言われており、日本の企業経営は、こうした組織として総合力や「組み合わせの妙」といったコーディネイト能力を磨くことに、もっと目を向けていくことが必要かもしれない。
投稿者:調査部長 内野孝宏|投稿日:2004年08月25日|
- 調査部長 内野孝宏
- No.0107
新たな段階を迎えたEU経済
5月1日より、EU(欧州連合)は、新たに10カ国が参加し、計25カ国体制に拡大となった。参加したのは、旧共産圏の東欧諸国を中心とするポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、スロベニア、バルト3国と、地中海のマルタ、キプロスである。これによって、EUの総人口は4億5000万人、域内総生産は982兆円で、米国と並ぶ一大経済圏が誕生したこととなる。
1999年から金融機関の決済通貨として、また、2002年からは一般消費生活の場でも流通が始まった欧州統合通貨ユーロは「人類史上初の壮大な実験」と呼ばれた。そこには、国という枠組みを捨てて、世界のGDPの2割を占めるドルに対抗できる経済圏をつくることにより、新たな国際機軸通貨としての影響力を高めようという狙いがあった。実際、これまでのドル・ユーロの為替相場の推移をみると、2002年1月当時は0.86ドル/ユーロであったが、2004年12月末には1.25ドル/ユーロになっており、ユーロの価値がドルに比べて相対的に上昇してきたことがわかる。
ただ、この上昇については、EU諸国の国際競争力が強まり、国際経済に占める影響力が高まったことを意味するかどうかの判断は難しい。たしかに、ユーロ流通域内でヒト、モノ、カネの流れが自由になり、強いものだけが生き残る比較優位の競争原理が働いたと見る向きがある一方で、湾岸産油国の米国への嫌悪感を背景にした「石油決済通貨のドル離れ」、つまり、ユーロ決済を拡大させることで世界経済の米国一国支配を忌避する動きによって生じたものとの指摘もある。米国主導でのイラクの石油管理による原油価格の低下懸念がユーロ決済を選好した結果と見る向きである。
ところで、今回、新たに東欧諸国が加わったことで、EU経済は新たな段階を迎えることとなりそうだ。というのは、これら国々は工業の発展途上国であると同時に、大きな財政赤字を抱えていること、また、安い賃金の労働力を抱える国々であると同時に、新たなマーケットとしての潜在力も秘めているからである。したがって、EU諸国内における経済関係も、デザイン、企画、設計、試作、研究開発などを既存の加盟先進国が担い、安価な労働賃金を背景とした量産加工やアッセンブリーをこれら東欧の国々が担うといった、国ごとの工程間分業が進む可能性が高いとみられている。
当面は、財政赤字が足枷となっても、将来的には、こうした工程間分業がEUの国際競争力の上昇につながることも十分に予想される。たとえば、ポーランドのある日系企業では、IT技術を駆使した最新鋭の設備機器と日本式の品質管理システムを取り入れて、飛躍的な生産性の向上を実現しつつあるとのことである。あとから工業化する国の強みであり、そうした意味で、今回のEUにおける東欧諸国の参加は、新たなメガコンペティション(世界大競争時代)の始まりと言えそうである。わが国にとってユーロは決してなじみのある通貨とはいえないが、今後のEUの動向にも十分注目しておく必要があろう。
投稿者:調査部長 内野孝宏|投稿日:2004年05月21日|
- 調査部長 内野孝宏
- No.0095
期待大きい大学改革
国立大学は、本年4月1日を以って、独立行政法人へと移行する。小泉内閣の「聖域なき構造改革」の一環である。
改革の目玉は「運営費交付金」の新設であろう。これまでのように目的・使途がヒモ付きで決められた予算配分というものでなく、使途自由な交付金という形で国から渡されるため、自ら予算を組むことができることや、収益化して翌年度への繰越しもできる。ただし、運営費交付金は、第三者評価の結果に基づき配分されるため、大学の自主裁量が増える反面、経営努力や状況によって増額・削減のメリハリが反映される仕組みとなる。
今後の大学に期待される役割はきわめて大きい。ひとつは、高等教育機関として「知」を創出する担い手としての役割である。高齢化社会を迎える中で、資源のない日本が今後も高い国際競争力を維持していくための武器は、誰もが指摘するように「知」以外に何もないだろう。
先日、回路設計部門等で中国の技術者を採用している電子制御機器メーカーを訪問したが、「中国製品に安かろう、悪かろうのイメージなんてまったくない。優秀な技術者を確保するなら、日本の新卒よりも中国だよ。人口13億人も抱えるだけに、探せば想像を絶する天才もいる」と言われ、この会社が好業績を続ける会社だけに愕然とした。ただでさえ、世界の中で日本の学生の学力低下が叫ばれており、多くの企業が頭脳までも海外調達する方向に傾かないよう努力していくことが今後の大学の責務ではないだろうか。
もうひとつは、研究開発機関としての役割である。原理法則を発見するような「基礎研究」を地道に推し進めていくことも大学に課せられた重要な使命であることに変わりないが、一方では、今回の大学改革の大きな狙いである「自ら稼ぐ体質になる」ための産官学連携事業を一層推進することが重要である。スピード競争の時代であり、情報開示しながら逸早く研究成果として結果を出す。そのためには、地域企業への技術開発支援など、収益を生み出す「応用研究」を重視することがますます重要となろう。
静岡大学では、こうした状況を睨んで、昨年10月に「イノベーション共同研究センター」を設立した。静岡大学が得意とする光・電気・電子、情報システムなどの研究分野に関する技術相談の窓口であり、?地域企業等との共同・受託研究、?大学発ベンチャーの支援・育成、?大学のシーズ創出、?知的財産の創出支援・管理・活用などを統合する組織として設立された。
先般、当センターの担当教官と面談させていただく機会があり、国立大学の先生が民間からスカウトされたことにも驚いたが、「大学の先生の意識改革から進めています。地域との接点を求める仕組みも積極的に仕掛けます」という言葉の中に、大学の生き残りをかけた強い意気込みと熱意を感じることができた。実際、地元の金融機関や商工会議所に精力的に働きかけて、中小企業が気軽に技術相談を持ち込める連携体制の整備を進めている。
その一環として、今回、当研究所では静岡大学より「産学官連携と技術相談に関するアンケート調査」のお手伝いをさせていただくこととなった。利用実態や課題・問題点、大学への期待など、地域中小企業の産学官連携についてのニーズを整理することで、今後の産官学連携強化の施策に反映させるための調査である。是非ともアンケートへのご協力をお願いするとともに、「大学は敷居が高い」との既成概念を捨てていただき、気軽にドアをノックする姿勢と機会をもっていただきたいと考えている。
投稿者:調査部長 内野孝宏|投稿日:2004年02月12日|
- 調査部長 内野孝宏
- No.0082
実用化への期待高まる「燃料電池」
新エネルギーには、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電等々があるが、なかでも、実用化への期待が高まりつつある「燃料電池」に注目してみたい。
静岡県の「しずおか新エネルギー等導入戦略プラン」における新エネルギーの導入目標をみると、2010年度における県内の最終エネルギー消費量(原油換算による目標値)1,197万klのうち32万klで、その割合は5%と低いものの、2001年度の同2.2%に比べて2倍以上の導入目標となっている。また、燃料電池については、2001年度の200kwから2010年度は7万kwへ、燃料電池を利用したクリーンエネルギー自動車は、2,500台から77,000台へと大きく増加する見通しとなっている。
燃料電池のメカニズムは、水を電気で水素と酸素に分解する逆の仕組みであり、水素を原料として、酸素と反応させることによって生じる電気エネルギーを得ることである。現在開催中のモーターショーも、最新技術の目玉のひとつが燃料電池であるなど、現状では、自動車や携帯用の家電製品等への応用が有力視されている。そして、その実用化の鍵は、水素をいかに安全に効率よく供給するかの技術開発にあると言われている。
たとえば、水素を効率よく貯蔵したり、持ち運んだりする技術であり、すでに開発されているのは、水素吸蔵合金と呼ばれる金属新素材に水素を吸着させたり、水素に高圧をかけて圧縮して運ぶ技術である。しかしながら、吸蔵合金というのはたとえば自動車がある程度の距離を走行するにはかなりの重さになることや、高圧圧縮に必要なガスボンベも嵩張るなどの難点がある。
北海道のある中小企業では、大学との産学共同研究で、水素を含むある液体として運び、そこから水素を効率よく取り出す技術を開発するなどにより、こうした難点を解決している。普通自動車の1回の給油分に相当する走行距離400?500kmに必要な水素吸蔵合金タンクは重さ約500?で、容積も場合によって200リットルにもなるが、当社の開発した技術による容器は、重さ100?程度、容積も半分以下となる。
燃料電池は、二酸化炭素を排出しない「地球にやさしい」発電システムとして、また、集中型でなくリスク管理のできる分散型電源システムとして、さらには、実用化に最も近い新エネルギーとして、重要な位置を占めていくものと思われる。と同時に、ここで紹介した中小企業にみられるような技術開発への取組みが広く進むことで、関連機器の製造や部品の生産にも繋がるなど、新産業の創出に期待したい。
投稿者:調査部長 内野孝宏|投稿日:2003年10月29日|
- 調査部長 内野孝宏
- No.0069
「自動車リサイクル法」施行による影響
現在、全国で年間約500万台の使用済み自動車(廃車)が排出されているが、その部品を回収してリサイクル処分を義務づける「自動車リサイクル法」が2004年度より施行される見通しとなった。指定回収品目は、フロン類、エアバッグ、シュレッダーダスト(破砕くず)の3品目であり、対象となる自動車は、被けん引車・二輪車と大型・小型特殊を除くすべての自動車となる。
廃車処理については、これまでも金属部品の8割程度を自動車解体業者や破砕業者が再利用してきた。しかし、シュレッダーダストについては、鉄スクラップ価格の低迷などにより再利用が難しくなっていることや、埋め立て最終処分場が逼迫していることから、不法投棄への懸念が高まっている。こうした従来のリサイクルシステムが機能不全に陥ることのないよう循環型社会システムを構築していくことが本法律施行の背景にある。
リサイクル法については、これまでも家電、建設、食品など業界別に、個別商品ごとに制定されてきた。今回の「自動車リサイクル法」が、これまでのリサイクル法と大きく異なる点は、料金の徴収方法の違いにある。たとえば、家電リサイクル法では、廃棄時に料金が徴収されるが、自動車は新車購入時に含む(既存の車は最初の車検時に所有者が負担する)ことになりそうだ。いまのところ、1台あたり2万円程度の負担になるとみられるが、今秋頃にメーカーがこの費用を公表することになっている。
その費用は、本法律の施行により新たに設立される「資金管理法人」が一括管理して、最終責任者としての自動車製造業者と自動車輸入業者に払い渡される仕組みである。ただし、実際のリサイクル処理は自動車解体業者やフロン回収業者、破砕業者などの専門業者に委託することになりそうであり、リサイクル処理状況の管理については、電子マニフェストという帳票を使用して「情報管理センター」が行う仕組みとしている。
つまり、自動車リサイクル法では不法投棄による費用負担の回避という逃げ道を残さないようにしていることと、生産者拡大責任という考え方がより明確になっていくことである。
自動車の販売価格に最初からリサイクル費用を含めたことは、製品開発コンセプトの中に、リサイクルコストの低い自動車の開発ということが従来よりも一段と重視されていくものと思われる。たとえば、解体しやすさを考慮したボディーの設計やシュレッダーダストが発生しないような素材開発などである。
一方、自動車解体業者やフロン回収業者、破砕業者などの専門処理業者にとっては、処理費用の負担が明確になることで、新たな事業機会として参入する企業が増えることが予想される。また、自動車メーカーは、大量に廃車を仕入れて機械化により低コストで処理できる業者に委託処理を集中するなど、効率性追求への対応状況により、業者間格差の拡大を促すことになるものと思われる。
静岡県でも、本法律施行に伴う影響や業界の対応方向を検討する研究会を立ち上げた。自動車業界は静岡県の基幹産業であるだけに、「自動車リサイクル法」が新たな競争条件となって業界再編を促すことも十分に予想されており、完成車メーカー、部品メーカー、各専門処理・修理業など、個々の業界における今後の動向が注目される。
投稿者:調査部長 内野孝宏|投稿日:2003年07月18日|
- 調査部長 内野孝宏
- No.0055
オンリーワン企業の共通点
受託調査の仕事として、この1月?3月にかけて、「中小企業創造活動促進法」に基づき事業認定を受けた企業を30社程度、取材訪問させていただく機会を得た。認定の対象となる事業とは、「著しい新規性を有する技術に関する研究開発」であり、認定を受けた企業は、いわゆるオンリーワンを目指す企業である。静岡県では平成14年12月末までに、事業件数ベースで629件、企業数ベースでは555社が認定を受けた。
この件数は、実に全国第4位の認定数を誇るもので、全国有数のモノづくり県「静岡」の強さをあらためて示すものであると同時に、こうした研究開発型の中小企業が全国に比べきわめて多いことは、中国の追い上げなどを考えた場合、今後の静岡県経済・産業にとっても明るい材料といえる。この研究開発型のオンリーワン企業への取材を通じて感じた共通点があったので、参考までに紹介してみたい。
第1に、熱意とバイタリティに溢れていることである。どの社長も「自分の会社を将来こうしたい」と熱く語ってくれた。こちらが1つ質問すると、それに関連した話を10も20も答えてくれた。会社をこうしたいとの説得性あるビジョンがあるから、従業員のモチベーションも高まり、また、顧客も納得・安心してその会社の商品やサービスを購入するのではないだろうか。
第2に、柔軟性の高いことである。認定を受けた事業そのものは、その後の経営環境の変化の中でストップを余儀なくされているものも散見された。しかしながら、その時に培ったノウハウを活かし、次の事業展開に活かしている企業が多い。たとえば、A社は大手からの依頼で新たな製造技術を確立できたにもかかわらず、その大手の都合で中止となってしまった。しかし、そこでとどまることなく、その時の開発に至る取組みを活かし、導電性、耐熱性、高熱伝導性、真円による非摩擦性などの機能性が要求される付加価値の高い超精密部品の比率を高めることができたという。また、B社では、ドライフラワーから始めた乾燥技術をより深化させることで、お茶、もずく、あわび、アロエ等々の食品分野、顆粒剤の製造などの薬品分野、人工腎臓の濾過器などの医療器分野、ウッドプラスチック等の木材分野など、次々と新たな用途開発に成功している。
第3に、顧客の現場に耳を傾けて、ユーザーと一緒になって問題解決していこうという姿勢が強いことである。たとえば、C社では、大学、大手企業、官公庁等の研究所の研究員を主なユーザーとしているが、その実験・分析ニーズは研究員ごとに千差万別である。研究者が壁にあたった時にどのような解析結果を求めているかを、すぐに現場にかけつけ生の声を聞くなど、フットワークがとても軽い。現場を大事にして、顧客とのコミュニケーションを常に保とうという姿勢が次の研究開発のタネを生むとのことである。
この他にも学ぶべき点が多々あり、ここでは共通点としての一部を紹介したに過ぎない。研究開発の重要性を改めて認識するとともに、中小企業の逞しさを実感させていただいた次第である。
投稿者:調査部長 内野孝宏|投稿日:2003年04月16日|
- 調査部長 内野孝宏
- No.0042
景気診断にもバイオマーカーの開発を
文部科学省は「都市エリア産学官連携促進事業」を推進する全国19地域を選抜した。当事業は地方大学などの「知恵」を活用し、産学官連携事業の促進により新規事業の創出などを図るのが狙いで、静岡県中部(静岡市、清水市、焼津市)は、「心身ストレスのバイオマーカーの構築と抗ストレス評価システムの開発」を研究課題とする地域として地域指定を受けた。
具体的には、静岡県立大学(食品栄養科学部、薬学部)、静岡大学、東海大学、県静岡工業技術センターなどが研究機関の核となって、これら機関の研究シーズを地域企業とともに共同研究開発に結びつける。研究内容としては、各種ストレスが脳、神経、血流等に与える影響を解析して、ストレスに対応するバイオマーカーを活用した抗ストレス評価システムを開発し、生理活性物質の探索と食品・医化学品素材への応用を図るものである。
静岡県の中部地域は、多種多彩な食品産業、化学産業、医薬品産業など幅広い関連産業の集積とともに、お茶やみかん、魚介類などの特産の農林水産物なども豊富であり、有効成分となり得る素材や抽出・開発技術には十分な素地を有する地域といえる。共同研究開発事業等に対して年間1億円程度の助成を3年間に及び受けられることとなるが、これまでのように個々の企業がそれぞれのテーマで行う研究開発に対する助成でなく、業種横断的に地域が一体となり、しかも大学が進める基礎研究分野を起点に世界最先端の研究地域を目指す点が注目される。
今まで漠然とした不安でしかなかった生活習慣病等の原因となるストレスの負荷状況やメカニズムを解明し、各個人の生体や状態に合わせた有効成分を投与できるようになれば、ストレス社会に生きる現代人の潜在需要が一気に顕在化することが期待される。ひるがえれば、日本経済も似た状況にあり、「キャッチアップ」が終焉して明確な目標像や将来ビジョンが見出せない中で、デフレ経済の浸透、中国の急追、IT革命、少子高齢化など様々なストレスが襲い、財政問題をはじめとする各種の制度疲労が起きている。
「日本経済は重い肺炎にかかっており、すでに血圧も下がり始めている」と表現するエコノミストもおり、確かに、不良債権といった悪性腫瘍の除去手術や体質改善のスリム化策ばかりでなく、栄養補給による癒しの処方箋も必要と思われる。適切な治療を行うためにも、景気判断を各種統計指標によって後追いで行うのでなく、リアルタイムで景気診断ができるバイオマーカーを開発して有効成分を適切に投与できる仕組みづくりを構築することが経済分析に携わる人にも求められているのかもしれない。今年こそ、日本経済が健康体を取り戻すことを期待したいものである。
投稿者:調査部長 内野孝宏|投稿日:2003年01月06日|
- 調査部長 内野孝宏
- No.0028
より広い視点での「空港経営」議論を
静岡県は、静岡空港の運営方法を検討する組織として「空港戦略プロジェクト会議」を発足させた。県内企業や学識経験者等をメンバーとして、?民間活力を活用した空港経営のあり方、?空港を活用した物流の高度化、?国際的な産業戦略に対応した空港機能のあり方などを集中的に検討することとなっており、先頃、?の空港経営については、その中間整理案が示された。
ここで議論している民間活力の導入に向けた「空港経営」の対象とは、空港ターミナルビル(ランドサイド)と滑走路などの空港本体施設(エアサイド)である。中間整理案では、従来のような「空港ターミナルビル」だけを第3セクターの経営形態で運営するのでなく、滑走路、エプロンなどの空港本体施設を含めて一体的に経営することとしており、国内の地方空港では初の試みとして注目を浴びているようである。
公共事業の非効率性や財政状況が悪化していることを考慮すれば、民間活力の導入についての議論を進めることはもちろん重要である。ただし、他空港との手法の違いをクローズアップしてしまうことで、「空港経営」に対する視野を狭めることだけは避けたいものである。つまり、静岡県にとっての空港経営の本質は、「空港をいかに利活用し地域経済を活性化していくか」であり、静岡県としての空港活用戦略を明確にした上で、そのための戦術論や手法論を展開することが重要であることをもう一度よく確認しておきたいことである。
とくに静岡空港の場合、他の空港と違って東京と結ぶための空港でなく、地方間を結ぶローカルネットワークの空港である。新幹線との競合状況などを考えた場合、他の交通手段から振り替わる「代替需要」に期待するよりも、たとえば北海道が近くなったことでスキー客を増加させる、あるいは静岡の観光に足を運んでもらう「新規需要」開拓ための知恵や工夫について民間活力を引き出すことの方が、「空港経営」として重要である。
また、静岡空港の設置による一番大きな期待は、高速道路や新幹線、港湾等これまでの交通インフラと違い、直接、海外と短時間でダイレクトに結ぶことのできる交通手段を持つことである。ハブ空港化を進めている韓国(仁川空港)、上海(浦東新空港)、新香港空港などと定期便を結べば、世界とのネットワークが一挙に広がることとなる。それをいかにビジネスチャンスに結びつけるか、いかに交流を拡大し「需要創造」に結びつけるか、民間活力の導入議論はそこに集中すべきである。そうした中で、それを実現するひとつの手段としての空港ターミナルビルや空港本体施設といったハード施設・サービス提供施設の運営について、官と民との役割分担を明確にしていくことが必要と考えられる。
投稿者:調査部長 内野孝宏|投稿日:2002年09月27日|
- 調査部長 内野孝宏
- No.0016
“カンコウ地”から“ケンコウ地”を目指す伊豆
観光と健康。一見何の関係もない言葉のようにみえるが、今、伊豆の各観光地では「健康づくり」を誘客の新たな手段として観光振興に取り組む市町村が増えつつある。そのひとつが、厚生労働省が推進し、静岡県が「健康保養地」のモデル地域として指定した伊東市(海岸型)と中伊豆町(森林型)の「健康保養ツアー」である。
これは、行政やJTB、東急観光など大手旅行会社、医療機関、農林漁業者など地域の関係者が連携して「健康プログラム」を提供するもので、平成12年に取り組んで以来、延べ12回を数えている。たとえば、健康度測定、体力測定などの健康チェックや、ストレッチ、早朝ウォーキング、体操、水中リラクゼーションなどの運動、温泉浴や森林浴、ダイエットに適した健康食、干物づくり・焼き方教室、わさび収穫体験など、地域らしさを活かしつつ健康をテーマとした2泊3日程度のツアー(料金は約3万円)となっている。
温泉といえば、「ゆったりと浸かって日頃の疲れをとる」、「肩凝りや胃腸への効能がある」などの漠然とした健康へのイメージを誰もが持っているが、このツアーでは温泉療法士やインストラクターなどの専門家が講師となり、温泉の効果的な利用法など健康増進の具体的なノウハウを学ぶことができる。参加者の年齢層も、20歳代?80歳代まで幅広く、友人同士や夫婦などのグループ客が中心で、「また是非参加したい」との意見も多く、なかなか好評のようである。
これまでの伊豆の観光地が主たるターゲットとしてきたのは、「首都圏からの団体客で、一泊二日の宴会旅行」であった。その結果、施設・サービスの展開も、宴会場やみやげ物コーナー、パブ、ゲームコーナーなどのパブリックスペースを広く設けることにより、なるべくお客を館内に留めて館内消費を高める戦略を進めてきた。しかしながら、旅行ニーズが非常に個性化し、国内外に競合先となる新たなレジャースポットが次々と登場するなど、どの観光地も厳しさを余儀なくされている。
現在は、その観光地ならではの魅力づくりを求められており、今回の伊東市や中伊豆町は、健康志向と旅行をマッチングさせつつ、温泉や地場産品など地域らしさをとり入れたことが成功に繋がった。こうした試みは、天城湯ヶ島町でも今3月に「健康温泉祭」で、全国からの誘客に成功しており、今後は伊豆地域全体に健康づくりへの地域的取組みが定着していくことを期待したい。
もちろん旅行ニーズの中には、私のように昔ながらの「どんちゃん騒ぎ」を求める人もいようが、今後は、個性化する旅行ニーズにいかに幅広いメニューを提供できるかが重要となる。運動不足やお腹の出具合が気になる皆さん!一度、「健康保養ツアー」に参加して、改めて健康の大切さを体験してみてはいかがでしょうか。
投稿者:調査部長 内野孝宏|投稿日:2002年06月21日|
- 調査部長 内野孝宏
- No.0003
eビジネス成功の鍵は「マンパワー」
先日、いわゆる消費者向けのインターネットビジネスで成功している県内企業を何社か取材する機会を得た。果物小売業、プラモデル製造業、陶器小売業、鰻の蒲焼小売業と様々な業種であったが、そこにはいくつか共通してみられた成功のポイントがあったと思われるので紹介してみたい。
第1に、自社商品の特性をインターネットで活かしていることである。ここでの特性とは“こだわり、マニア、ファン”等であり、たとえば、果物であれば「どこそこの誰々がつくった糖度何%以上の完熟果物」、プラモデルであれば「専門性の高い工具や塗料などを何十種類も揃える」等を指す。こうした狭く深く消費者の嗜好を絞り込むセグメント化のマーケット戦略が重要になってきているが、ネックは多くの顧客をいかに効率よく集めるかにある。それをインターネットで解消しているのである。
第2に、顧客が見えないだけに、きめ細かいフォローアップを行っていることである。インターネットビジネスの世界はコンピュータで自動化されたシステムで動いているように見られ勝ちであるが、注文を受けたらクイックレスポンスで「ちょっと気が利いたひと言」を添えるなど、いずれの会社も店頭での対応以上に労力と手間ひまをかけている。機械式のマニュアル対応では顧客は決して満足しないし、うっかりミスでも致命傷につながるためである。星の数ほどあるサイトの中でアクセスしてもらえるかどうかは、意外と口コミによる評判が鍵を握っているという。
第3に、商品の良さを顧客と共感したいとの非常に強い熱意が感じられたことである。これはという情報を掴めば仕事の合間を縫って徹夜してでも現地へ飛ぶ。果物ならば栽培方法・状況などを生産農家で直接確かめる。風合いが素晴らしく使い込むほどに味わいが深まる陶器だから、窯元の歴史や由来、陶工、土の成分等々を徹底的に調べて消費者に伝えていく。永年の研究努力でようやく完成した「鰻のうまみを閉じ込める調理法」で一人でも多くの人においしく食べてもらいたいなどである。こうした熱意と行動をとっているからこそ、気の利いた「ひと言」も自然に添えることができている。
経済産業省が先日発表した「平成13年度電子商取引に関する市場規模・実態調査」によると、2001年のBtoC(消費者向け電子商取引)の市場規模は1兆4840億円で前年比80%増と引き続き高い伸びを示したが、今回の取材でこうしたマンパワーを中心とするきわめて地道な中小企業の経営努力が支えていることを垣間見た想いがする。ただ、マンパワーだけでインターネットビジネスを拡大していくには自ずと限界があり、これまでの経験則では月商300万円がひとつの壁になるという。熱意や情熱をいかにシステム的に提供できるか、人間性と効率性をいかに両立して提供していくかが、今後一段と成長していくための鍵を握っているものと思われる。
投稿者:調査部長 内野孝宏|投稿日:2002年04月15日|
- 企画部長 岸本高昌
- 研究員 栗原広樹
- 研究員 高橋晴美
- 研究員 佐藤祐介
- 研究員 森晃昌
- 研究員 森田陸
- 研究員 須藤みやび
- 研究員 石田進吾
- 研究員 大石彰男
- 研究員 田原 真一
- 研究員 田中恵梨子
- 研究員 田中克明
- 研究部担当部長 山田慎也
- 研究部長 大石人士
- 研究部副部長 望月毅
- 主任研究員 塩野敏晴
- 主任研究員 玉置実
- 主任研究員 川島康明
- 主任研究員 大石真裕
- 主任研究員 長村敏孝
- 主任研究員 冨田洋一
- 常務理事 高橋節郎
- 専務理事 中嶋壽志
- 調査部長 内野孝宏
- 理事長 古知弘行
- ANAの「沖縄航空貨物基地」を視察して
- 野生ジカの異常繁殖に想う
- 「富士山静岡空港」利活用の視点
- 広がる農産物輸出の動き
- 地方空港の着陸料
- 空港需要創出へのビジネスモデル構築を
- 変革する生鮮品流通の中で、問われる卸売市場の機能
- 組み合わせの妙
- 新たな段階を迎えたEU経済
- 期待大きい大学改革













