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- 特任部長 内野孝宏
- No.0121
組み合わせの妙
「組み合わせの妙」という言葉がある。妙とは、「不思議なほど優れている、きわめて美しい、巧である」の意であるから、「組み合わせの妙」とは、同じものでも組み合わせ方によって、全体の働きや機能、味わいや趣きなどが全然異なるもの、優れたものになるということであろう。
たとえば、料理などを思い浮かべていただきたい。全く同じ素材や調味料などを使っても、塩加減、ゆで加減や火の加減、ひとつひとつの素材の量の多寡、包丁さばき等によって、その料理の味や見栄えなどが、全然違ったものになる。それぞれの素材を活かしつつ、いかにひとつの素晴らしい作品に仕上げるか、それが料理人の真骨頂ということだろう。
野球のチームワークなども良い例である。ホームランバッターばかりを揃えたチームが圧倒的に強いかと言えば、実際にはそうならない。送りバントのうまい人、足の速い人、守備のうまい人、そうした人たちをいかにチームとしてまとめ、いかに勝てる集団に仕上げるかが監督たる指揮官の役割であろう。要するに全体のハーモニーが重要である。
実は、日本人はこの「組み合わせの妙」が実に巧みな国民であり、日本のモノづくりの強さ、グローバル競争の中で優位に立つための「見えざる武器」として、改めて注目されている。高い生産性・品質・スピードを追求し、うるさがたのお客に対してピンポイントで対応していくためには、チームワーク、情報共有、あうんの呼吸、微妙な連携調整など、総合的な組織力の発揮が必要であり、それこそがまさに日本人の得意とするところだからである。
以前、県内のある二輪車部品メーカーで「からくりライン」と呼ばれる製造現場を取材させていただいたことがある。そこでは、重力や還り動力を利用した加工材料の移動、現場作業者がそれぞれの工程ごとに検査まで行う多台持ち・多能工化、アタッチメントや治工具の自社開発によって汎用機を専用機のように使いこなす、などによって多品種効率生産への成果を挙げていた。
とくに、汎用機を専用機化させる治工具は現場からの活発なQC活動によるもので、たとえば、ステンレスやスチールなどの材料をロール状に板金する際に、ワンタッチで着脱できるカセット式の治工具を開発し、一台の機械で数種類の真円パイプをつくれるようにしている。これは、営業担当による顧客ニーズの収集・分析、そうした情報に基づく製造現場と設計・開発部門との徹底的な擦り合わせの中から生まれたものである。
わが国経済の閉塞感が言われる中で、ともすると、独自性や新規性など特定分野を深く掘り下げる専門能力の追求ばかりに目を奪われ勝ちであるが、グローバルな中での競争を考えた場合、世界工場化する中国は人口13億人とも言われており、その競争倍率から言っても、ある特定分野について限れば、日本よりも優れた専門能力の人間が選抜されてくる可能性は高い。しかしながら、その優れた能力を最大限に活かしつつ、組織力としてチーム一丸となって顧客の要望にきめ細かく応じていくことが苦手と言われており、日本の企業経営は、こうした組織として総合力や「組み合わせの妙」といったコーディネイト能力を磨くことに、もっと目を向けていくことが必要かもしれない。
投稿者:特任部長 内野孝宏|投稿日:2004年08月25日|
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