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- 特任部長 内野孝宏
- No.0107
新たな段階を迎えたEU経済
5月1日より、EU(欧州連合)は、新たに10カ国が参加し、計25カ国体制に拡大となった。参加したのは、旧共産圏の東欧諸国を中心とするポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、スロベニア、バルト3国と、地中海のマルタ、キプロスである。これによって、EUの総人口は4億5000万人、域内総生産は982兆円で、米国と並ぶ一大経済圏が誕生したこととなる。
1999年から金融機関の決済通貨として、また、2002年からは一般消費生活の場でも流通が始まった欧州統合通貨ユーロは「人類史上初の壮大な実験」と呼ばれた。そこには、国という枠組みを捨てて、世界のGDPの2割を占めるドルに対抗できる経済圏をつくることにより、新たな国際機軸通貨としての影響力を高めようという狙いがあった。実際、これまでのドル・ユーロの為替相場の推移をみると、2002年1月当時は0.86ドル/ユーロであったが、2004年12月末には1.25ドル/ユーロになっており、ユーロの価値がドルに比べて相対的に上昇してきたことがわかる。
ただ、この上昇については、EU諸国の国際競争力が強まり、国際経済に占める影響力が高まったことを意味するかどうかの判断は難しい。たしかに、ユーロ流通域内でヒト、モノ、カネの流れが自由になり、強いものだけが生き残る比較優位の競争原理が働いたと見る向きがある一方で、湾岸産油国の米国への嫌悪感を背景にした「石油決済通貨のドル離れ」、つまり、ユーロ決済を拡大させることで世界経済の米国一国支配を忌避する動きによって生じたものとの指摘もある。米国主導でのイラクの石油管理による原油価格の低下懸念がユーロ決済を選好した結果と見る向きである。
ところで、今回、新たに東欧諸国が加わったことで、EU経済は新たな段階を迎えることとなりそうだ。というのは、これら国々は工業の発展途上国であると同時に、大きな財政赤字を抱えていること、また、安い賃金の労働力を抱える国々であると同時に、新たなマーケットとしての潜在力も秘めているからである。したがって、EU諸国内における経済関係も、デザイン、企画、設計、試作、研究開発などを既存の加盟先進国が担い、安価な労働賃金を背景とした量産加工やアッセンブリーをこれら東欧の国々が担うといった、国ごとの工程間分業が進む可能性が高いとみられている。
当面は、財政赤字が足枷となっても、将来的には、こうした工程間分業がEUの国際競争力の上昇につながることも十分に予想される。たとえば、ポーランドのある日系企業では、IT技術を駆使した最新鋭の設備機器と日本式の品質管理システムを取り入れて、飛躍的な生産性の向上を実現しつつあるとのことである。あとから工業化する国の強みであり、そうした意味で、今回のEUにおける東欧諸国の参加は、新たなメガコンペティション(世界大競争時代)の始まりと言えそうである。わが国にとってユーロは決してなじみのある通貨とはいえないが、今後のEUの動向にも十分注目しておく必要があろう。
投稿者:特任部長 内野孝宏|投稿日:2004年05月21日|
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