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主席研究員 望月毅 のコラム

  • 主席研究員 望月毅
  • No.76

変わらなかった25年、変わった25年

全国20政令指定都市の中で最も人口の少ない静岡市では、2017年4月、ついに70万人の大台を割り込んだが、静岡県全体をみると約368万人で、07年のピークから▲12万人減少し1990年(平成2年)とほぼ同じ人口規模となっている。本県の主要産業である製造業の出荷額も、直近は約16兆円で90年と同程度にある。少子高齢化や長引くデフレ、リーマン・ショック、東日本大震災などの影響を受けた本県の経済・社会規模は、結果として四半世紀前の90年頃から拡大していないこととなる。
では、1990年はどのような年であったのか。86年から景気拡大局面入りした日本経済はバブルの饗宴に浮かれ、日経平均株価は3万8千円台で幕を開けた。公定歩合は1年間で+1.75%引き上げられ6.0%。地価の急騰が続き、最高路線価は静岡市で+66%、浜松市で+59%も上昇した。富士市の製紙会社会長がゴッホの絵画を約125億円で落札したのもこの年である。
6月には景気拡大期が43カ月となり岩戸景気を抜いて当時戦後2番目の長さになったが、8月、翌年の湾岸戦争につながるイラクのクウェート侵攻を境に原油価格が高騰し米国経済が悪化、経済環境が急変した。10月には平均株価が3年7カ月ぶりに2万円を割るなど、ついにバブルがはじけ、"平成"不況のきっかけとなる。企業は雇用、設備、債務の「3つの過剰」に悩まされ倒産が続出、雇用環境が悪化し、個人消費も低迷しはじめる年となった。
バブルの好景気を知る者からすれば、今の若者は景気があまり良くない中で、欲しい物を買えず節約生活を送っているのではないかと気にかかる。しかし、大学生をはじめ当の本人達は、「景気が悪い」と言われてもピンと来ないらしい。生まれた時からずっと好景気を体感していないということもあるが、現在の消費環境に満足していると言うのだ。100均や24時間営業のコンビニがいたる所にあり、安い商品がいつでも購入できる。スマホがあれば、欲しいものがネットですぐに手に入り、価格比較サイトで最安値を検索できる。外出中でも常に連絡が取れ、アプリが道案内してくれるし、暇つぶしでゲームもできる。そもそも、「物欲」自体があまりないし、車はいらないと言う若者も多い。
たしかに、携帯電話もカーナビもWindows95もSNSもネット通販も大衆社会に存在しなかった25年前と比べると、現在の暮らしはまさに夢のようである。バブル崩壊以降、景気拡大は限定的であったが、低コストで生活の質を高められる技術革新が、すごいスピードで進んでいる。現在、人口減少による経済シュリンクが危惧されているが、人類、とりわけ日本人には、経済成長の鈍化を乗り越えて豊かに生きるための知恵と技術力が備わっていると信じたい。

投稿者:主席研究員 望月毅|投稿日:2017年05月31日|コメントを書き込む

  • 主席研究員 望月毅
  • No.71

人口減少に拍車をかける未婚率上昇

平成27年の人口動態をみると、静岡県は▲1万6,860人の減少、都道府県別でワースト4位であった。当所では、以前から本県の人口減少に着目し、状況・要因の分析を重ねている。その中で、全国ワースト2位を2年続けるなど深刻な「社会減少」の中心層が、進学や就職を機に首都圏に流出する18?24歳の若年女性であることが明らかとなった。そこで、本誌8・9月号特集「若年女性の流出問題を考える」では、意識や行動、出身地静岡に対する考え方などについてのアンケート調査を実施、進学時の流出抑制策、就職時の流入促進策、女性に選ばれるまちをつくるための方策等を提言した。
本県では、社会減少もさることながら、自然減少も全国ワースト5位の▲1万1,306人(平成27年)と、大幅なマイナスである。約25年前から女性の流出超過が続いた結果、ここにきて子どもの出生数が大きく落ち込んでいるのだ。また、本県の少子化の原因は、若年女性の流出以外にもある。それは、出生率の低下と未婚率の上昇で、昭和60年に1.85だった合計特殊出生率は1.53(平成25年)まで下がっており、25?29歳女性の未婚率は54.8%(22年)と、半数以上が30歳までに結婚していない。
わが国では、生涯結婚しない人も増えてきた。50歳時の未婚率を「生涯未婚率」と呼ぶが、平成22年国勢調査とその30年前の昭和55年を比較すると、男性は3.9%から20.1%(5.2倍)、女性は4.3%から10.6%(2.5倍)と急上昇している。
実際は、結婚しようと考える人は大きく減少しているわけではない。「出生動向基本調査(国立社会保障・人口問題研究所、平成27年)」によると、未婚者(18?34歳)のうち、「いずれ結婚するつもり」の回答割合は、男性85.7%、女性89.3%と9割近くに上る。ところが、「交際している異性はいない」、つまり恋人がいない人の割合は、男性69.8%、女性59.1%と、18年前の同調査から男女とも20ポイント程度上昇し、過去最高となっている。こうした状況が改善されなければ、生涯未婚率は推計値(平成47年で男性29.0%、女性19.2%)を上回っていく可能性もある。
「東京在住者の今後の移住に関する意向調査(内閣府、平成26年)」では、東京都から移住する予定または移住を検討したいと思っている人は4割に達する。そして、「移住したいと思ったきっかけ」としては、10・20代女性の39.3%が「結婚」を挙げている。地方創生のために行政や企業は、「結婚」というプライベートな問題にいかに取り組み、その数を増やしていけるか。パワハラ、セクハラに留意しながら、真剣に考えていかなければならない課題となっている。

投稿者:主席研究員 望月毅|投稿日:2016年12月16日|

  • 主席研究員 望月毅
  • No.64

工業統計調査が示すモノづくり県・静岡の苦境

 モノづくり県・静岡の製造業が、リーマン・ショックで大きく落ち込んで以降、浮上しきれない。工業統計調査による平成26年の製造品出荷額等は16兆507億円で、都道府県別では愛知、神奈川、大阪に続き4年連続して4位と、トップクラスにはあるものの、対前年比は全国(+4.5%)の半分、+2.2%増にとどまっている。
 全国、静岡県ともピークは19年。静岡はピーク19兆4,103億円と比べ、26年は▲3兆3,595億円減と、ワースト1の愛知(▲3兆6,514億円減)に肩を並べる落込み額で、減少率は愛知の▲7.7%に対し2倍以上の▲17.3%に上る。
 要因としては、全国シェア2位を誇る自動車・二輪車、同部品など「輸送機械」の出荷額が19年から、全国ワースト1位の▲1兆6,529億円(▲28.1%)も縮小したことが挙げられる。これは県製造業合計の落込み額の5割に当たる。
 たしかに、超円高や新興工業国の台頭などにより輸出が鈍り、海外への生産シフトが盛んになった時期であるが、この間に全国の輸送機械は▲3兆8,467億円(▲6.0%)、シェアトップの愛知は▲8,269億円(▲3.4%)減少と、大きくは落ちていない。また、全国シェア4位の群馬(+6,195億円)、5位の広島(+1,154億円)、6位の福岡(+3,388億円)などは、1千億円超も伸ばしている。生産拠点集約、海外ターゲット市場の活況、国内向け低燃費モデルのヒットなどの追い風を生産増加に結びつけたためであろう。静岡県の輸送機械製造業では、輸出の落込みを海外進出によりある程度カバーしているが、県内の生産拠点は縮小を余儀なくされ、円安局面でも県内生産への「回帰」はなかなか難しそうである。
 技術の進化、消費者の購買力や嗜好の移り変わり、エネルギー情勢、ライバルの戦略、そして為替動向など、今後も市場環境はめまぐるしい変化が予想されるが、県の中核産業・輸送機械製造業には、この荒波を越えて静岡を牽引し続けてもらいたい。
 その一方で、自動車という大黒柱のほかにも、医、薬、食、光、航空機などの製造業や、観光、サービス業など、産業の新しい柱の成長が必要であることが、今回の工業統計調査で改めて示されたと思われる。
 また、市町別の製造品出荷額合計をみると、19年と比べ浜松市(▲1兆2,199億円)、磐田市(▲6,812億円)、掛川市(▲4,584億円)の3市合計で、県全体の落込み額の7割に相当しており、県西部地区を中心に生産力、雇用吸収力が失われていることがわかる。県全体でも人口流出が加速する中、輸送機械製造業の復調と新産業の成長による雇用の場創出が喫緊の課題となっている。

投稿者:主席研究員 望月毅|投稿日:2016年04月01日|

  • 主席研究員 望月毅
  • No.56

静岡県の将来推計人口は大幅下振れ?

 静岡県の人口減少が止まらない。
 当所では、本誌2014年4月号の特集「減少が加速する静岡県の人口」において、2013年1年間の本県の人口社会減少数(転入者数―転出者数)が都道府県別で北海道に次ぐ「全国ワースト2位」と、前年から6ランク下落したことを受け、急減の要因を分析。そこでは、リーマン・ショック以降の製造業の不振による働き盛り世代の県外(主に東京圏)流出が人口減少の原因であり、「雇用の場の創出」が喫緊の課題ではないかと考察した。
 その後、さらに人口動態を探っていくと、いくつかの問題点が浮かび上がってきた。その1つが「20―24歳」の若年女性の転出超過数が▲1,566人と、他の層と比べ突出して多いことである。若者が進学で静岡県を離れ、卒業後なかなか戻ってきていないことは、現在も、将来にわたっても、人口減少の大きな要因となる。
 残念ながら、昨年(2014年)も、社会減少数は▲7,240人で連続ワースト2位。改善するどころか、この位置が定着化し、むしろワースト1の北海道との差が縮まっている。そして、今年に入っても、減少は止まらない。4月1日現在の本県人口は368万4千人で、1992年6月以来、23年ぶりに369万人を割り込んだ。ピークの379万7千人(07年12月)と比べると、▲11万3千人のマイナスであり、2013年公表の国立社会保障・人口問題研究所による2015年時点の推計値を、すでに▲1万2千人も下回っている。この推計値は、主に2010年の国勢調査をもとにしており、2040年には303万5 千人(10年比▲19.4%)まで減少するとされていたが、人口流出が急加速した2011年以降の動向が反映されていない。そのため、今年行われる国勢調査をもとにして改めて推計される本県の将来人口は、大幅に下振れするとみられる。
 こうした流れを受け、静岡県では、人口減少問題対策に本腰を入れ始めた。昨年度は有識者会議を開催して『人口減少の「抑制」戦略』、『人口減少社会への「適応」戦略』を打ち出し、今年度中に「地方人口ビジョン」及び「地方版総合戦略」を策定する。いかに若者の県外流出を防ぎ、子供数の減少に歯止めをかけるか。幸い、本県の合計特殊出生率は1.53と全国平均(1.43)よりも高い。1.13 と全国最下位の「東京」に人が集中し続けることは、地方にとっても、日本全体にとっても、人口減少問題に立ち向かう上で大きなマイナスである。豊かな自然、居住環境にも恵まれ、“産業のデパート県”でもある静岡は、「東京一極集中」にストップをかけられるポテンシャルが十分にある。その力を発揮する時が、いま来ているのではないだろうか。

投稿者:主席研究員 望月毅|投稿日:2015年06月01日|

  • 主席研究員 望月毅
  • No.46

人口減少加速と「極点社会」

 「2040年、若い女性の人口が5割以上減少し将来消滅する恐れがある自治体が、全国の半数にのぼる」。衝撃的な数字が、産業界や学識者有志が立ち上げた『日本創成会議・人口減少問題検討分科会』から発表された。出産適齢期といわれる20?39歳の女性の人口動態を自治体ごとに推計した結果、全国の49.8%に当たる896市町村では、若年女性が半減以下となり人口維持が困難で、最終的には自治体が成り立たなくなる可能性があるというのだ。静岡県では、4市7町で若年女性が5割以上減少すると推計された。


 GDP成長率、企業業績など、将来の経済予測は、なかなか“当たらない”ものだが、その例外、確度の高い予測の代表が人口推計である。出生率・死亡率が比較的安定し予測しやすいため、全国の人口はある程度高い精度で推計可能で、これまで増加・減少の方向性はまず間違いがなかった。ただし、自治体レベルとなると、地域間の人口社会移動が加わるため、推計の前提条件いかんで大きく結果が異なる。国立社会保障・人口問題研究所が、都市部への人口移動率は一定程度に収束する前提でまとめた将来推計人口をもとに、今回の予測は、人口移動が将来も収束しないとの前提で推計しており、若年女性が「社会減少」する自治体が、大幅に増える予測となった。


 この「社会減少」が、若年女性に限らず加速しているのが静岡県である。直近14年4月1日現在の静岡県人口は、370万800人とピークから9万人以上も減少、その大半が社会減少要因によるものだ。そして、これを引き起こしているのは、08年のリーマン・ショック以降の製造業における雇用の場の消失であると考えられる(SERIマンスリー2014年4月号「減少が加速する静岡県の人口」)。実際、09年以降、携帯電話など電機部品、製紙、OA機器、自動車・二輪車部品、医療機器、金属製品、たばこなど製造業大手だけで25事業所以上が、規模を縮小あるいは県内から撤退しており、中小製造業の事業所閉鎖も数多い。さらに、製造業の設備投資需要が冷え込み、県人口の急減で住宅着工が低迷、建設業界の雇用も大きく縮小している。一方、首都圏や愛知県では人口が増加しており、これは静岡県の雇用が大都市など県外に流出していることに他ならない。


 大都市だけに人口が一極集中し、地方では雇用の場がなくなり、高齢化・過疎化が進む社会を、冒頭の検討分科会の増田寛也座長は、「極点社会」と呼んでいる。“そこそこ都会”静岡では、人口減少危機を乗り越えるべく、「極点社会」とならないように動き出すことが、産業界・行政・住民に求められている。

投稿者:主席研究員 望月毅|投稿日:2014年06月02日|コメントを書き込む

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