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  • 研究部副部長 望月毅
  • No.0278

メダカとヒドラ

 メダカを飼っている。集合住宅の狭いベランダで、10リットルほどのプラスチックの道具箱を水槽に仕立て、この暑い中、葦簀(よしず)の日陰でメス1匹、オス5匹が元気に泳いでいる。飼い始めて7年ほどで、メダカの寿命は2?3年であるから、3代目、4代目ということになる。繁殖させるのはとても簡単で、春から夏にかけて、ほとんど毎日、水草(ホテイアオイ)の根に卵が産み付けられ、その水草を親水槽から隔離して水につけておくだけで、大量の稚魚が孵化する。ある年には200匹以上の稚魚が大きく育ち、引き取り手に苦労したこともあり、数年に1度、親メダカが10匹以下になると稚魚を育てるようにしている。
 増やさないようにするのもまた簡単で、卵を隔離せず、水草を親水槽に入れたままにしておけば、稚魚はすべて親メダカの生きエサとなってしまう。水槽や池が広ければ逃げる場所が多く、稚魚は生き延びて育っていくが、ベランダの狭い水槽の中では隠れる場所もなく、運がよくて2匹くらい成魚になる年もあるものの、適度なメダカ密度(水1リットル当たり1匹)以上に増えることはまずない。すべての稚魚を育て上げないのはかわいそうにも思えるが、メダカには地域個体群があり、地域の天然種以外の稚魚を川や池へ放流すると遺伝子の混乱を招き、自然破壊につながるため、自分で飼育できる数以上は増やさないのがマナーとされている。

 そして、今年は、親メダカの数がさびしくなったため、数年ぶりに稚魚を育てることにした。気温が20度になった頃から順調に産卵を始め、洗面器に隔離していくと30匹ほどの稚魚が孵化した。小さいうちはエサはそれほど必要なく、水替えもいらないため、時々様子を見てはいたが、風通しのよい日陰に放置して2週間、ある日洗面器を覗くと、1匹もいなくなっていた。水質が悪くなったか、メダカの耐えられる38℃以上に水温が上昇したか、ヤゴや蜘蛛に食べられたか、原因を一つひとつ確かめていったが、思い当たるフシはなく、雨が多い時期だったので吹きかけた雨に流されたのだろうと一人合点して、もう一度、採卵からはじめて1ヵ月、またまた、2日見ないうちに30匹の稚魚が忽然と姿を消した。
 これはおかしいと、洗面器をじっと観察するとヤツがいた。大きさ5ミリのイソギンチャクのような形をした腔腸動物「ヒドラ」だ。細長い毒針を仕組んだ触手で次から次へと稚魚を絡めとり、しかも再生力が強く、どんどん分裂して増殖していく。日本の河川・池沼に広く存在しており、川から採取してきた水草(アナカリス)に付着してきたと思われるが、根絶するためには水槽をリセットし、ホルマリン消毒しなければならないという。幸い、新しいペットボトル水槽で始めた今年3度目の繁殖は順調だが、ヒドラとの初めての遭遇には、なかなか肝を冷やされた。

 このヒドラも、親メダカの水槽では増殖しない。親がヒドラを食べて稚魚を守っているのである。こう考えると、稚魚にとって親メダカは敵か味方かわからなくなる。ただいえることは、自然界では、増えすぎず減りすぎず、微妙なバランスで種の生き残りが長いこと図られてきたわけである。しかし、今では、天然のメダカが減少し、絶滅危惧種に指定されている。経済発展の影で都市開発や水田の減少、温暖化などが、この自然のバランスを崩してきたためである。
 今日も、ベランダ水槽の中では、メダカの排泄物をミジンコやバクテリアが食べたり水草の栄養となり、水草がメダカに酸素を供給し、ミジンコや生き残った稚魚がメダカのエサとなる連鎖が行われている。微生物が定着してくれたおかげでほとんどエサもいらず、水が減ったら水道水を足すだけの小さなベランダのビオトープで、たかがメダカの飼育であるが奥は深く、生き物の世界に関しては、この年になってまだまだ知らないことも多い。

投稿者:研究部副部長 望月毅|投稿日:2008年08月12日|コメントを読む(2)コメントを書き込む

コメント一覧

初めまして。

宮崎市内に住む開業医の田中と申します。

昨朝、海面でヒドラらしき個体を発見しました。真っ白で大きさは約3?4cm、海面を活発に泳いでいました。すると見る見る分裂を始めたのです。10枚以上撮影しました。

海にも居るものなのでしょうか?

写真はいつでもメールにてお送り出来ます。

田中

コメント投稿者:田中宏幸|投稿日時:08/09/24 19:06

田中宏幸様

静岡経済研究所の望月です。
このたびは、私どものウィークリーコラムにコメントをご投稿いただきましてありがとうございました。

さて、ご質問の件ですが、目撃された生物は、河川に生息する純粋な淡水性ヒドラではないと思われます。
淡水性ヒドラは、駆除するために塩を水槽に入れて浸透圧の差で殺しますので、海水の中では生きられないと思います。
また、大きさはせいぜい1cm程度で、泳ぎはあまり得意でなく、普通は水草や石にくっついています。

それでは何かということですが、海であれば、オオタマウミヒドラという種類かもしれません。あるいはクラゲの幼生などではないでしょうか。クラゲもヒドラもイソギンチャクも同じ「腔腸動物」「刺胞動物」の仲間で、基本構造がよく似ています。
また、http://lifeform.coomaru.com/nantai/008/index.htmlの写真と同じ生物かもしれません(名前はわからないみたいですが…)。

たぶん、田中様の撮影されたお写真を拝見しても、生物の専門家でないので私どもには判断できないと思います。すいません…

田中様には、遠く宮崎県から静岡経済研究所のホームページをご覧いただき、コメントまで頂戴いたしまして、まことにありがとうございます。今後も、当所の記事等についてご意見・ご質問等ございましたら、ぜひともご連絡ください。

当方も興味を持って読んでいただけるコラムを書いて行こうと思いますので、何卒よろしくお願いいたします。

コメント投稿者:静岡経済研究所 望月毅|投稿日時:08/09/25 14:23

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