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  • 主任研究員 長村敏孝
  • No.0211

“美しい日本”のために

 先日、所有している乗用車のディーラーから、カーアラーム(盗難防止を目的とするもの)の購入斡旋に関する文書が届いた。その文書の中に、“日本の安全神話はすでに消えつつあり”というくだりがあったのだが、確かにそう実感せざるを得ないことが増えているような気がする。これは、全体的な国民のモラルの低下に起因している部分が大きいと思う。

 最近、道路を横断しようとして気がついたことがある。乗用車が、信号が黄の点滅から赤に変わる時に停止しないでそのまま通行するタイミングが確実に以前より遅くなっているのである。つまり、以前は、最後尾の乗用車が横断するタイミングが、黄の点滅から赤へ変わった直後だったとすれば、現在では、赤に変わってからしばらく、もっとオーバーに言えば、もう一方の信号(自分の左右から来る乗用車が見る信号)が青になる寸前まで通行する乗用車も目立つようになってきている。
 この事象の要因として、最近は以前に比べて、普段生活する上で、待つ≒辛抱する場面が少なくなっていることが挙げられるのではないかと思う。
 例えば、最も身近な行動の1つであるテレビを見ることを取り上げてみよう。私が物心ついて間もなかった当時(約30年前)は、スイッチを入れてから画面に映像が浮かび上がるまで、相応の時間を要していたように思う。当時はそれが当たり前だったので気にならなかったが、現在では、とても耐えられる時間ではないだろう。他にも、生活上、待たなければいけない時間が大幅に短縮したことにより、待つ≒辛抱するといった必要性・習慣が著しく減少し、辛抱強さの低下、ひいてはモラルの低下につながっているのではないかと思う。上述した乗用車の横断の他にも、観光地でごみをゴミ箱に捨てない、移動中に食べたものを持ち帰らずに、電車の座席とか道路の路側帯に捨ててしまうなど、全般的なモラルの低下を感じさせる事象に遭遇する機会が増えたと感じているのは私だけではないだろう。

 一般的に、文明が発達すれば、それにつれてモラル・マナーは向上していくものであると考えられるが、最近の状況を鑑みると、国民のモラル・マナーは、一度頭打ちして、逆にじりじりと低下を始めているのかもしれない。
 しかし、依然として、来日した外国人著名人の日本に対するコメントには、“街が清潔である”、“人々が礼儀正しい”といったものが必ず登場する。つまり、まだまだ諸外国と比較すると、マナー大国なのである。新首相のフレーズではないが、“美しい日本”を回復・維持していくために、日本人一人ひとりがもう一度日本人の良さを見直し、日本人としてのプライドを持ち、気高く、誇り高く生きていくべきではないかと思う。

投稿者:主任研究員 長村敏孝|投稿日:2006年10月16日|

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