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主席研究員 塩野敏晴 のコラム

  • 主席研究員 塩野敏晴
  • No.69

静岡市のハンバーグ年間支出額はなぜ日本一か

静岡市のハンバーグの年間支出金額(世帯当たり1 , 7 2 6 円)は日本一だという(外食を含まず)。これは、総務省の「平成2 7 年家計調査」によるもので、静岡県のホームページ「Myしずおか日本一」にも掲載されている。ただし、「家計調査」の都市別比較(県庁所在市+ 政令指定都市)は、サンプル数が少ないため年次による変動も大きく、「この年はたまたま」という感もある(平成2 6 年は8位)。しかし、静岡市のハンバーグの支出額は毎年上位にあり、浜松市が3位であったことも併せると、静岡県民が「ハンバーグ好き」であることは間違いないようだ。そこで、静岡県民がなぜハンバーグが好きか、考えてみた。
消費関連の統計をみると、もともと静岡県は、「調理食品」の支出が多いという特徴がある。併せて「米」の支出も多く、調理食品や惣菜を買って自宅でご飯だけ炊いて食べる、いわゆる「中食」を多用する傾向のあることがうかがわれる。
これは、静岡県の消費環境面での特徴が影響しているように思われる。まず、本県は女性の有業率が5 0 . 8 %(全国7位、平成2 4年総務省「就業構造基本調査」)と高く、共稼ぎの世帯も多いとみられ、中食利用につながっていると考えられる。また、1人当たり県民所得が都道府県別で3位と、所得水準が高い。大都市部など所得水準が高いところは、外食に対する支出が多いという傾向があるが、大都市部ほど飲食施設が集積していない静岡県は、外食の支出は少ない。
そこで、外食に代わる満足度が得られるような調理食品として、ハンバーグが選ばれているのではなかろうか。加えて、本県は自動車所有率が高い。ハンバーグは、和風、チーズ入りなどバリエーションの多彩なメニューである。共稼ぎの主婦などが仕事帰りに、自分や家族の好みに合ったハンバーグを求めて、惣菜店等を買い回ることも可能である。
さらに、供給面から要因を考えてみる。主に合挽き肉を利用するハンバーグは、万人受けする肉料理である。肉類は、西日本では牛肉、東日本では豚肉が好まれるなど、国内で嗜好が分かれるが、東西日本の中間にある本県は、「ストライクゾーン」が広いと思われ、県内でハンバーグのテスト販売等を考える企業も多いのではないか。
このように、静岡でハンバーグに対する支出が多い背景には、複合的な要因が考えられる。
家計調査で今後も静岡市がハンバーグ支出額で国内トップレベルを保ち続けるのであれば、浜松市や宇都宮市の餃子のように、住民や産業界も巻き込んで、静岡=ハンバーグの街というイメージを定着させることも検討してみてはいかがだろうか。

投稿者:主席研究員 塩野敏晴|投稿日:2016年09月30日|

  • 主席研究員 塩野敏晴
  • No.62

新東名延伸によるダブルネットワークへの期待

 2月13日、新東名高速道路の浜松いなさジャンクション(JCT)―豊田東JCT間が開通する。豊田東JCTでは、すでに供用開始されている伊勢湾岸自動車道(新名神高速道路)に接続し、これにより、御殿場以西、名古屋までは、東名・新東名が並行して走る「ダブルネットワーク」が形成されることになる。
 新東名の県内区間については、平成24年4月に開通し、以降は県内東名高速の交通集中による混雑が劇的に解消していたが、同時に三ヶ日JCT以西の渋滞が恒常化していた感があり、静岡県―愛知県間の東名利用車両にとっては悲願の開通となる。この開通により、現在の東名の三ヶ日JCT―豊田JCT間の渋滞解消が期待できるほか、代替路線の確保による、ダブルネットワーク効果に大きな期待が寄せられている。たとえば、東名で事故、災害などにより渋滞や通行止めがあった場合には、事前の道路情報提供により、新東名に乗り換えることで、所要時間を大きくロスすることなく通行することができる。
 これらの効果の受益者は、主に高速道路の利用車両だが、それは通行時の走行時間短縮にとどまらない。たとえば、東名・新東名相互の迂回路の確保により、事故等があった場合でも「ほとんど渋滞しない」ことを前提にできれば、それまで渋滞などに備えて、「余裕をみて早めに出発していた時間」を省略、あるいは短縮することができる。
 さらには、通常は高速道路を利用しない場合でも、定時性の高い高速交通ネットワークが常時利用可能な体制になったことにより、物流、観光、医療などあらゆる分野で、不測の事態に備えた時間や対策を削減できる可能性もある。病院への救急搬送など、災害時にも威力を発揮するはずだ。
 他にも、国道等からの交通量シフトによる安全性の向上など、沿線地域住民の生活環境にもメリットがある。
 このように、新東名の開通によるダブルネットワーク効果は、走行時間の短縮という直接的な効果にとどまらず、多岐にわたる。しかし、こうした効果を十分に発揮するには、東名・新東名間の乗り換えがスムーズにいく必要がある。現状、県東部では、東名・新東名間の距離が比較的近い上に、東駿河湾環状道路や西富士道路などの連絡道路もあり、東名・新東名は乗り換えやすい状態にある。
 一方、県中西部では、清水、三ヶ日の2カ所の連絡通路で東名、新東名を結んでいるが、その間には連絡道路はない。また、県西部では東名・新東名間の距離は遠く、それぞれのIC間のアクセスも決してよいとはいえない。
 形成されたダブルネットワークを効果的に機能させるためにも、東名、新東名IC間のアクセス道路の整備や国道バイパスとの連絡強化が望まれる。

投稿者:主席研究員 塩野敏晴|投稿日:2016年02月01日|

  • 主席研究員 塩野敏晴
  • No.51

都市の魅力発揮による交流人口拡大を

 静岡市が政令指定都市(以下政令市)に移行してまもなく10年、浜松市も8年になろうとしている。政令市は現在20を数え、人口規模では、静岡市、浜松市ともに政令市の中では末席近くに位置する。両市とも、人口はすでに減少傾向に転じ、将来推計人口をみても、静岡市は政令市の中では少子高齢化のトップランナーであり、浜松市もトップグループで追走するという構図である。
 人口減少の大きな要因とみられるのが若者、とりわけ女性が転出傾向にあることである。静岡市の人口総数に占める若い女性(20代・30代)の比率は政令市中で最下位、浜松市は大学生の総数が男女とも最下位である。人口の維持に向けて、両市とも都市の特徴を活かし、若者にとって魅力的な街づくりの重要性が増している。
 それでは両市の特徴は何か、政令市の統計ランキングによる両市のナンバーワンを探してみた。まず総面積で浜松市が1位(静岡市が2位)、林野面積では静岡市が1位(浜松市が2位)である。豊富な森林資源は、豊富な水資源ももたらしている。また、日照時間は、浜松市が1位(静岡市が2位)、降水量では静岡市が1位(浜松市は4位)である(いずれも平年値)。このメリハリの利いた気象条件は、農業や再生可能エネルギーなどの生産活動には最適といえる。
 次に、国内第3位の高峰・間ノ岳を北端に頂く静岡市は、最高地点の標高では第1位(浜松市は第2位)。また、静岡市は、ユネスコエコパークにも認定された南アルプスに加えて、目前には最大深度2,500mの駿河湾も控える。
 一方、浜松市は、政令市に面する湖としては最大の浜名湖を擁している。両市にとっては、このバラエティに富んだ自然環境が政令市の中では際立った個性である。海洋深層水などの地域資源を活かした未来型の産業振興、グリーンツーリズムやエコツーリズムなど、自然環境を活かした交流人口の取込みには優位性を発揮しよう。
 さらに、交流人口の拡大に威力を発揮する高速道路の延長で、静岡市は1位(浜松市が2位)である。ともに東名・新東名という東西の国土軸が市内を貫通し、さらに今後、中部横断自動車道や三遠南信自動車道などの南北方向の交流軸も形成される。
 高速交通ネットワークは、交流人口の拡大に向けて大きな利点となりうる一方で、対応を誤れば素通りされてしまう「諸刃の剣」でもある。政令市としては似通った特徴をもつ両市が連携し、あるいはしのぎを削り合って、ナンバーワン、オンリーワンを創出し、都市の魅力を発揮していくことに期待したい。

投稿者:主席研究員 塩野敏晴|投稿日:2014年12月01日|

  • 主席研究員 塩野敏晴
  • No.43

生産者と消費者をつなぐ「地産地消」

 高齢化による担い手不足、耕作放棄地の増加、鳥獣被害の拡大と、昨今の農業を取り巻く環境は厳しさを増し、全国各地で農業の活性化が重要な課題となっている。こうした中で、農業者の所得を向上させる切り札として、6次産業化や地産地消などが各自治体の農業振興計画に謳(うた)われているが、いずれも実践するのはたやすくない。


 地産地消とは通常、どちらかといえば消費者の目線から「地域で生産されたものを地域で消費する」意味と解釈されているが、そもそも、近代化以前の人間の食生活は、否応なく地産地消であったはずだ。それが高速交通網や冷蔵保存技術の進展を背景に、消費者の嗜好(しこう)の変化や、食料供給の安定化という国の方針もあり、農作物は適地適作・消費地市場への一括出荷という、いわば「他産他消(多産多消)」型の流通形態が定着。「地産」であることが付加価値を持つほど、生産者と消費者は隔絶された関係となった。これにより、消費者は農作物の供給と価格の安定を手にする一方で、地域産の農作物は疎遠になってしまった。また、生産者は安定した販路を確保する一方で、大量流通に適した生産が優先されたため、消費者ニーズに対応した生産をすることで、努力や創意工夫に見合った所得を得る機会が制限されてしまった感もある。


 本来、地産地消とは、生産者の視点からは「地域で消費されるものを地域で生産する」という意味であり、生産者、消費者双方の意志が反映されながら、地域内で完結させることに意味があるといえる。


 先日、こうした地産地消で成果を上げる先進事例を視察する機会があった。その1つ、福岡県福津市の「あんずの里市」は、地域の女性農業者による「青空市」が発展して設立された、農水産物や加工品の直売を中心とする拠点施設である。生産者の多くは地元の農協にも所属し、量産型の作物は農協に出荷している。直売所では多品種少量型の品目構成であり、農業の第一線を退いた高齢者や兼業農家も、無理なく収入を得られる体制となっている。直売所では消費者との対話を心掛けており、生産者と消費者のつながりが強く、消費者から直接届く評価や期待が生産者にやりがいをもたらしていた。


 このように地産地消とは、地域の中で生産者と消費者をつなげ、互いに「顔の見える」関係を構築する体制であるといえる。双方にとって良好な関係を保つためには、生産者側には、安全安心な農作物生産は言うに及ばず、適正価格の設定とともに、産地や品質、生産履歴などの情報発信が求められる。一方、消費者は、そうした情報を適切に評価した上で、自らの価値観に照らし合わせて選択する目を養うことが重要である。

投稿者:主席研究員 塩野敏晴|投稿日:2014年02月28日|

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