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企画調査担当部長 塩野敏晴 のコラム

  • 企画調査担当部長 塩野敏晴
  • No.97

平成30年間の価値観と消費者志向の変化

30年続いた平成時代が終わりを告げ、令和時代が始まった。この平成30 年間を振り返ると、人口は減少に転じ、少子高齢化社会を迎えることになった。生活面では、インターネットと携帯電話の普及が、消費者の生活環境に劇的な変化をもたらしたといえる。こうした国民生活の支出状況を表す「家計調査」は毎年実施され、平成最後のデータである平成30 年調査結果も公表されているので、30年間の家計支出の変化を比較してみた。十大費目で大きく伸びたのは「交通・通信」であり、とくに通信費は、携帯電話などの通信料により、倍以上の増加となっている。この他、パソコンや受信料、インターネット接続料などの「教養娯楽」も大きく増加した。一方、バブル景気時の象徴的な支出だった「被服及び履物」は大きく減少している。
食生活では、「米」「魚介類」が減少し、「パン」「乳卵類」が増えた。文明開化以来の食の西洋化がいまだに続いているかのようだが、それだけではない。支出を増加させているのは、「調理食品」「カップ麺」「乾燥スープ」など、手間暇かけず、簡単に食膳に戴せることのできる「利便性」「簡便性」を高めた品目である。食以外の消費対象への関心が高まる中で、食に投入する時間と手間の節約志向が高まったとみることもできよう。
もうひとつの傾向は「多様化」である。たとえば「菓子類」をみると、「ようかん」「まんじゅう」「カステラ」「ケーキ」といった定番品目はいずれも大きく減少し、代わって増えているのは、「他の和生菓子」「他の洋生菓子」といった、"その他大勢"の品目である。
家計調査を時系列で品目別に追っていくと、こうした「定番品目」の減少と「他の○○」の増加は、他の分野でもみられる傾向である。
すなわち、消費者ニーズの多様化、個別化等を背景に、各メーカーによる新製品開発や、海外からの新たな食文化の導入等により、従来の品目分類に当てはまらない新製品が市場に投入されて「その他」に分類、その後市場に定着して一定の地位を確立させると新品目として独立、という歴史を繰り返している。
令和の時代、多様化や利便性追求の流れの中で、定番品目はさらにシェアを失ってしまうのであろうか。いや、むしろそうした流れだからこそ、「老舗の味」のような伝統的な高付加価値型の品目が存在感を発揮できるのではないか。
最近の消費者志向は、「物的豊かさ」から「心の豊かさ」への変化が見られ、さらには健康志向や環境志向など、様々な価値観が加わっている。また、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されるなど、日本人の食は国際的にも注目が高まっている。
静岡県は、まぐろ、かつお(節)、緑茶など、多くの和食の定番品目において全国有数の産地である。万葉集の「梅花の歌」を典拠とする令和の時代こそ、日本古来の和食文化への回帰の時代になることを期待したい。

投稿者:企画調査担当部長 塩野敏晴|投稿日:2020年03月27日|

  • 企画調査担当部長 塩野敏晴
  • No.90

東西食文化の接点・静岡からの情報発信

総務省の「家計調査」では、世帯当たりの主な食品について、過去3年間平均の支出額の都道府県庁所在都市および政令指定都市ランキングを公表している。たとえば静岡市は「緑茶」の支出が日本一、浜松市は「ぎょうざ」や「うなぎのかば焼き」の支出が日本一である。この家計調査により、食料品の都市別の消費支出額を比較してみると、東西で嗜しこう好が明確に分かれる品目がある。
代表的なものが、魚介類の「まぐろ」と「たい」である。「まぐろ」は、静岡県が日本一の水揚げ(きはだ)を誇り、消費地としても静岡市が日本一であるが、関東方面で消費が多い。都市別の消費支出額を、全国=100とする指数により比較してみても、「まぐろ」は、東京都区部ほか、関東地方の各市はいずれも150前後と軒並み高いが、近畿地方以西の各都市では消費水準はいずれも低く、最も低い九州地方の各市では軒並み30前後と、東西で5倍程度の格差がある。一方、西日本での魚介類の主役は、九州などを主産地とする「たい」であり、こちらも消費水準は、最も高い九州各地と最も低い北関東や東北の各市では、5倍程度の格差がある。「今晩のおかずは刺身」といわれた時に、静岡県や関東地方の人は「まぐろ」を思い浮かべ、西日本の多くの人は「たい」を想像するに違いない。
こうした嗜好の違いは、その食材の"産地であること"が大きな要因とみられるが、各地域の歴史や伝統、生活等を背景とする食文化や価値観の違いもうかがわれる。
たとえば、関東や東日本で消費水準の高い品目を列挙してみると、「ウィスキー」、「チーズ」、「ベーコン」、「グレープフルーツ」、「トマト」、「レタス」、「サラダ」など、カタカナすなわち、欧米由来の比較的歴史の新しい食品が目につく。この理由を歴史的な経緯から考えてみると、まず、東京が日本一の大都市になったのは、江戸幕府の開設により日本の政治の中心となって以降であり、参勤交代等により全国から人が集まり、その流れは現代も続いている。国内のあらゆる文化が集結し、異質なものにも許容性のある比較的オールマイティーな食文化が醸成されたのではないだろうか。さらに、近代化以降に日本に入ってきた西洋由来の新しい品目は、まず首都であり、最大の市場である東京から普及が進んだ、といった理由が考えられる。一方で西日本は、京料理に代表される伝統的な食文化が比較的伝承されている感がある。
このように、食品関連の費目は、産地や食文化により、東西で嗜好の分かれる品目が目立つが、東海道上にある静岡県は、東西の食文化の接点、あるいは転換点に位置している。消費水準も平均的、あるいは県内で国内東西の嗜好が切り替わる品目も多く、東西双方の嗜好に通じているといえる。多彩な食材の生産地として、静岡県は東西双方に向けた食文化の情報発信が可能な立地条件にあるといえよう。

投稿者:企画調査担当部長 塩野敏晴|投稿日:2019年02月06日|

  • 企画調査担当部長 塩野敏晴
  • No.83

静岡マラソンの開催効果

3月4日、「静岡マラソン2018」が開催された。2014 年に初のフルマラソンとして開催されて以来、今回が5回目となる。
当所では、毎回、会場で来訪者(参加者、来場者)にアンケートをとり、静岡マラソン開催による経済波及効果を試算している。こうして、同じ調査を毎年「定点観測」のように続けていると見えてくる特徴がある。
まず、参加者数、来場者数、主催者側の運営支出など、大会規模自体は年による大きな変動がないにも関わらず、経済波及効果の総額は、第1回から第4回まで少しずつ増加を続けている。これは、第1回から第3回にかけて、県外からの来場者比率が上昇し続けたことが大きい。静岡マラソンの全国的な認知度が広がるとともに、遠方からの来場者が増えたとみられる。旅行客の消費単価は遠来客ほど大きくなる傾向があり、これが来訪者全体の消費支出額を押し上げたようだ。第4回で初めて県外客の比率が減少に転じたが、この時は、マラソンコースが市内のより広域を巡るルートに変更されたうえ、4回目にして初めて好天に恵まれ、来場者総数が前年比で1割弱増加したことで、全体の経済波及効果もプラスを維持した。
一方、市内客、県外客など住所別の消費単価をみると、年ごとのばらつきはあるものの、総じて第1回が最も高く、以降は減少していく傾向がある。これは、大道芸ワールドカップなどでも同様で、当所が開催初期に行ったアンケート調査では、会場が静岡市の中心市街地だったこともあり、買物ついでに見に来る人が多かったが、イベントとしての人気の定着とともに、興味の対象のウエートが大道芸見物に移り、10数年後に行った調査では消費単価は減少していた。認知度の高まりとともに集客力はより広域化する一方、興味すなわち消費の対象は集約化する、というのがイベントとしての成長とともにみられる特徴である。
さて、静岡マラソンの経済波及効果をより大きくするためには、認知度の向上による集客力の広域化がある程度浸透したとすれば、消費単価を高めていく必要がある。フルマラソンを走り切り、消耗しきった参加者とそれを労う来場者に、何をアピールするかがカギとなろう。
しかし、経済波及効果がすべてではない。駿府城にはじまり、浅間神社、安倍川、駿河湾、久能山、石垣いちごなどを巡り、富士山に迎えられる静岡マラソンは、静岡市のシティプロモーション効果としても大きい。さらに第1回以来、公募後の市民参加枠の定員到達期間が短期化しているとも言われ、大会開催により市民のマラソン、ランニング等に対する意識が高まり、健康増進に寄与することができれば、何よりの開催効果といえよう。

投稿者:企画調査担当部長 塩野敏晴|投稿日:2018年04月27日|

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