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- 主任研究員 塩野敏晴
- No.0331
地産地消は「大地と一体となった生き方」
「地産地消」という言葉を聞くようになって久しい。現在、全国各地で「地産地消フェア」などが行われているが、メディアに取り上げられるようなものの多くは広域拠点施設での出展やネット販売、通販の活用など、幅広い消費者を対象としており、「地産」ではあるが「地消」にはこだわらない、経済性重視の地場産品振興活動である。しかし、地産地消とは、本来は、「身体と土は一体」、すなわち、その土地で育ったものを摂取することがその土地の生活環境に適合しており、身体のためによいとする考え方に基づく。どちらかといえば、健康面に着目した考え方であり、効率などの面で経済性とは相反することも多い。
そもそも、近代化以前の人間の食生活は、否応なく地産地消であったはずだ。それが高速交通網や冷蔵保存技術の進展を背景に、消費者のライフスタイルの変化や食料供給の安定化という国家的な戦略もあり、農作物は適地適作・消費地市場への一括出荷といういわば「他産他消」型の流通形態が定着した。さらには安価な輸入作物の流入等により、食品流通は、需要供給両面ともグローバル化し、その結果、「地産であること」が稀少価値を持つほど、食料生産地と消費地が離れた関係になってしまったということもできる。
一方、供給や価格の安定性を追求した結果、国内では食料自給率が低下し、農業は衰退化、耕作放棄地が増えて地域環境も悪化、という事態を招いてしまっている。こうした状況を考えたときに、私はかつて読んだ歴史小説の中での次のような一説を思い出す。「大地は生命の根源であり、人間も草木や生き物と同じく大地に根をおろして生きるのが本当の姿だ。大地から離れ、人の働きで得たものを使うばかりでは、やがては生きる力を失う」。平安時代を支配し、過度な搾取で地方民を貧窮に追い込んでいた貴族階級を批判する登場人物の言葉だが、作者自身の主張でもあろう。この言葉通り、まもなく中央の貴族階級は権力を失い、当時は地方で大地に根を張って生きていた武士階級に追い落とされることとなった。
技術的な進歩とともに効率性、経済性を追求した結果、大地とのつながりが希薄となった感のある現代社会にも通じる面はないだろうか。今さら、近代化以前の食料供給体制に戻すことは不可能であろうが、健康志向や食の安全、さらには環境問題や食料自給率に対する意識が高まる中で、農業を中核としたアグリビジネスが新たなビジネスチャンスとして注目を集めている。消費者側も、特に地方圏で生活するわれわれは、本来の意味での地産地消、すなわち「大地と一体となった生き方」を考える良い機会といえるのではないだろうか。
投稿者:主任研究員 塩野敏晴|投稿日:2010年02月01日|コメントを書き込む
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