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東西食文化の接点・静岡からの情報発信

総務省の「家計調査」では、世帯当たりの主な食品について、過去3年間平均の支出額の都道府県庁所在都市および政令指定都市ランキングを公表している。たとえば静岡市は「緑茶」の支出が日本一、浜松市は「ぎょうざ」や「うなぎのかば焼き」の支出が日本一である。この家計調査により、食料品の都市別の消費支出額を比較してみると、東西で嗜しこう好が明確に分かれる品目がある。
代表的なものが、魚介類の「まぐろ」と「たい」である。「まぐろ」は、静岡県が日本一の水揚げ(きはだ)を誇り、消費地としても静岡市が日本一であるが、関東方面で消費が多い。都市別の消費支出額を、全国=100とする指数により比較してみても、「まぐろ」は、東京都区部ほか、関東地方の各市はいずれも150前後と軒並み高いが、近畿地方以西の各都市では消費水準はいずれも低く、最も低い九州地方の各市では軒並み30前後と、東西で5倍程度の格差がある。一方、西日本での魚介類の主役は、九州などを主産地とする「たい」であり、こちらも消費水準は、最も高い九州各地と最も低い北関東や東北の各市では、5倍程度の格差がある。「今晩のおかずは刺身」といわれた時に、静岡県や関東地方の人は「まぐろ」を思い浮かべ、西日本の多くの人は「たい」を想像するに違いない。
こうした嗜好の違いは、その食材の"産地であること"が大きな要因とみられるが、各地域の歴史や伝統、生活等を背景とする食文化や価値観の違いもうかがわれる。
たとえば、関東や東日本で消費水準の高い品目を列挙してみると、「ウィスキー」、「チーズ」、「ベーコン」、「グレープフルーツ」、「トマト」、「レタス」、「サラダ」など、カタカナすなわち、欧米由来の比較的歴史の新しい食品が目につく。この理由を歴史的な経緯から考えてみると、まず、東京が日本一の大都市になったのは、江戸幕府の開設により日本の政治の中心となって以降であり、参勤交代等により全国から人が集まり、その流れは現代も続いている。国内のあらゆる文化が集結し、異質なものにも許容性のある比較的オールマイティーな食文化が醸成されたのではないだろうか。さらに、近代化以降に日本に入ってきた西洋由来の新しい品目は、まず首都であり、最大の市場である東京から普及が進んだ、といった理由が考えられる。一方で西日本は、京料理に代表される伝統的な食文化が比較的伝承されている感がある。
このように、食品関連の費目は、産地や食文化により、東西で嗜好の分かれる品目が目立つが、東海道上にある静岡県は、東西の食文化の接点、あるいは転換点に位置している。消費水準も平均的、あるいは県内で国内東西の嗜好が切り替わる品目も多く、東西双方の嗜好に通じているといえる。多彩な食材の生産地として、静岡県は東西双方に向けた食文化の情報発信が可能な立地条件にあるといえよう。

投稿者:主席研究員 塩野敏晴|投稿日:2019年02月06日|

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