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主任研究員 川島康明 のコラム

  • 主任研究員 川島康明
  • No.0332

季節の移ろいの感じ方

 皆さんは、季節の移り変わりをどのように感じ取っているだろうか。庭で育てる草木の植替え、衣替え、食卓に旬の食材を並べるなど・・・。
 
 自問してみると、私の場合はバイクでの早朝散歩(歩いてはいないが)が当てはまりそうだ。静岡市に移り住んで10年以上になるが、夏で午前5時、冬なら6時過ぎに、雨が降っていなければ土日のいずれか1日は日本平に向かう。有料だったパークウェイ(山頂へのアクセス道路)も無料となってもう6年近くがたつ。今の時期は路面の凍結に注意しつつ、愛車をそろそろと走らせながら山頂へ。そんな時には、年中温暖で降雪がほとんどない静岡市に住むありがたみを改めて感じる。
 山頂では、缶コーヒーを飲みながら一服し、遠方に見える富士山に目をやる。日本一の霊峰と呼ばれるにふさわしく、富士山には、その季節にふさわしい表情が浮かぶ。とくに、空気の澄んだ冬の早朝のたたずまいは何度見ても見飽きることがない。いわゆる定点観測ということになるのだろうが、富士山を通して、季節の移ろいを感じられることは、“静岡市民冥利”につきるのではないかと思う。

 この山頂やパークウェイをバイクで走りすぎる時の風景、空気の匂いの変化が、私をリフレッシュさせてくれるわけだが、バイク市場の今後については、1ユーザーの立場ながら先行きを心配している。というのも、専門紙によると、2009年の二輪車国内出荷台数は38万3,000台にとどまり、前年比で△26.6%と2年連続で2ケタ減とのこと。1999年には84万台近く出荷されていたことを考えると、この10年で半減以下まで落ち込んだことになる。若者のバイク離れや駐輪問題、昔に比べれば和らいだとはいえバイクについてまわる不良のイメージ・・・。欧州のように、大人の趣味として社会の理解が十分に得られているとはいい難いのが実情だ。

 静岡県は、ホンダ発祥の地であり、ヤマハ発動機やスズキの本社・工場を擁するなど、バイクとの縁が極めて深い。作り手である世界に冠たるバイクメーカーの歴史に身近で触れられるのも、本県民の特権といえるだろう。機会があれば、ヤマハ発動機のコミュニケーションプラザ(磐田市)やスズキ歴史館(浜松市)に一度足を運んでほしい。こんな静岡県だからこそ、節度ある県民ライダーが、季節の移り変わりをバイクで味わう奥深さ、楽しさを思い出し、この市場に戻ってきてくれることを願う。

 追伸  とはいえ、真冬の早朝が寒くないわけがない。ほんとはすごく寒いです。今シーズンは電熱式のグローブを購入し、文明の利器のありがたみを指先で体感しています。

投稿者:主任研究員 川島康明|投稿日:2010年02月05日|コメントを読む(1)コメントを書き込む

  • 主任研究員 川島康明
  • No.0313

“見える化”の大切さ ~太陽光発電はじめました~

 わが家に太陽光発電システムを設置した。このところ雨の日が多く発電量はふるわないが、家人の起きる7時前から夕方まで粛々と電気をつくっていると思うと、屋根に載せた黒っぽく無愛想なソーラーパネルにもひそかな愛着を感じるものだ。
 さて、いざつけてみて意外に重要だと思うのが、室内にとりつけた「表示モニター」の働きだ。以前は、モノクロで発電量のみ表示しているものが一般的だったようだが、現在では、発電量と使用量、売電量が刻々と変わる様子をリアルタイムで眺められる。1時間、1日、週、月単位でグラフ化して見ることもでき、メーカーによっては持ち運びできるものもある。

 日中の発電中は、発電量?使用量=売電量(電力会社に売る分)となるわけだが、使用量が発電量を上回ると、足りない電力は今までどおり電力会社から買う(買電)ことになる。わが家のモニターでは、売電していると青、買電していると赤で電力の流れが表示され、表示を消していても赤・青の明かりがモニターカバーをうっすらと浮かぶ。
 順調に発電している時はそれほど感じないのだが、雨や雲の厚い日に売電量がゼロに近づいて、モニターの表示がわずかな電力量の差で赤と青を繰り返すようになると、何か気になる。そこで、何とかして使用量を減らせないかと、家の中をうろうろしてしまうわけだ。そして、不要不急な照明や家電類をチェックし、表示が青で安定すると、“よしよし”と一人満足している自分に気づくのである。
 小さいながらこんな満足感が味わえるのは、表示モニターによる電力の流れの“見える化”があるからこそ。仕事柄、業務フローの見直しや危機発生時の対応について、“見える化”が大切なのは承知しているが、太陽光発電でも、この“見える化”が購入後の満足度を高めているのは間違いない。

 現在、太陽光発電システムの導入には、1kw当たり7万円の国の補助金のほか、独自の補助金を支給する県内の市町も多い。さらに今後は、売電単価を現在の倍にする固定価格買取制度が始まる予定もあり、初期投資の償却期間が短くなることで、普及にも一段と弾みがつくだろう。
 ただ関連業界には、こうした経済性にとどまらず、これまで見えなかった(見ようとも思わなかった)家庭の電力の流れが“見える”面白さ、作り出した電力が“見える”楽しさを、もっとアピールしていってもらえればと思う。

投稿者:主任研究員 川島康明|投稿日:2009年08月11日|コメントを書き込む

  • 主任研究員 川島康明
  • No.0298

住宅新築時の“万が一”にどこまで備える?「住宅完成保証」は必要か

 去る1月30日、浜松市に本社を置く木造注文住宅メーカー、富士ハウスが自己破産した。年間売上高400億円規模の同社が抱える施工中の住宅は700戸超、手付金を受けて未着工のケースが1,400にのぼるという。
 この破綻によって、住宅の「完成保証」という制度がマスコミで取り上げられている。これは、建設中に建設会社の倒産などで工事ができなくなった場合、一定の範囲内で支払った費用が保証されるというもので、(財)住宅保証機構という公益機関のほか、民間会社が保証するケースもある。
 たとえば、(財)住宅保証機構の制度では、工事ができなくなった場合、A.足場の組替えなど手戻り工事費など、当初の工事請負金額以上にかかる費用を請負金額の20%まで保証、B.それに加え、支払済みの前払金のうち請負業者が返還すべき分を返してもらえない場合、その損害を請負金額の20%を限度として保証するという2つのタイプがある。いずれも、希望があれば、建築工事を引き継ぐ業者の斡旋も行う。
 実際に、施主がどのくらい保証料を負担するかというと、請負契約金額が2,000万円の物件で、Aの保証内容で45,000円程度、Bなら5万円くらいになる(3,000万円の物件で7~8万円)。会社によっては費目を立てずに請負金額に含めたり、施主が別途支払うケースがあるという。
 ただし、前提として、その建設会社がこの制度に登録する必要がある。(財)住宅保証機構のホームページで登録業者を検索できるが、静岡県内では20数社にとどまっているようだ。契約締結から住宅が完成するまでの期間は、通常、半年から1年程度。知り合いの工務店に尋ねてみても、完成保証まで気にする施主はほとんどおらず、照会があったのは数十年の業歴の中でも2件ほどという。そもそも、施主の立場から考えれば、発注先の経営が危ないと感じれば契約しないだろうし、一抹の不安はあっても、出費がかさむ住宅新築時に掛け捨て保証料を負担するのはつらい。建設会社から見れば、へたに完成保証を薦めれば、保証が必要なほど経営が危ないのかと勘繰られることにもなりかねない。そうした双方の事情もあって、この制度はそれほど普及していないというのが実状だろう。
 だが、景気が急激に冷え込む中、住宅業界では、会社の規模が問わず経営破綻するケースが増えてくる可能性がある。住宅新築を考えている人々が住宅業界や建設会社を“診る”目は一段と厳しくなるだろうし、完成保証を求める声も大きくなるかもしれない。
 「お宅の会社はつぶれないだろうね」・・・ハウスメーカーや工務店では、顧客からのそんな質問に対し、数字の裏付けをもって、わかりやすく自社の状況を説明できるよう、あらかじめ対応を考えておく必要がありそうだ。

投稿者:主任研究員 川島康明|投稿日:2009年02月06日|コメントを書き込む

  • 主任研究員 川島康明
  • No.0279

ガソリン高に立ち向かうための有効なツール“二輪車”を見直そう

 先日、自家用車にガソリンを満タンにしたら1万円近くになってしまい、1リッター90?100円の“古き良き”時代を、ため息をつきながら振り返ってしまいます。
 巷では、近所なら自転車で、遠方には電車やバスなど公共交通機関を利用して、少しでも移動にかかる費用を節約しようという意識が広がっているようです。とはいえ、通勤など仕事がらみでは、利便性を考えると車を利用せざるを得ないという方々も多いと思います。
 
 そこで改めて考えてみたいのが、二輪車の活用です。この8月には、ホンダのロングセラーモデル「スーパーカブ」が誕生50年を迎えるというニュースがありましたが、このカブシリーズは町乗りで1リッター60?70km走るといいます。他の50ccスクーターでも、エンジンが4ストロークとなり、FI(電子制御燃料噴射装置)も導入されて1リッター当たり40?50kmまで燃費が向上している車種もあります。
 たとえば、会社との往復30kmを燃費15km/1リッターの自家用車で通っている人の場合、通勤だけで年間6,600km走り、ガソリン代は約8万円(@180円×2リッター×220日)かかっているわけです。これをスクーターで通えば、年間のガソリン代は約3万円(@180円×0.75リッター×220日)と、年間5万円削減できる計算になります。スクーター本体の実売価格は10万円程度からで、ほかにヘルメットやグローブなどを購入し、保険をつけても数万円の初期負担で走り出せます。
 もちろん、会社から通勤費用の補助があれば自己負担は減るでしょうし、雨の日や酷暑・極寒の日に乗るのはつらいでしょうから、実際のコスト差は計算より小さくなるでしょう。ただし、ガソリン高の厳しいご時勢でも、気軽な“足”ができれば、近場の外出に使ったり、春や秋の気候のよい季節にはふらりとショートツーリングに出かけるなど、ガソリン代に気を使わず移動を楽しむ機会が増えるかもしれません。
 
 とくに30?40歳代には、二輪免許があっても経済的な理由や家族への配慮から、二輪車に乗りたいけれど乗れないという人も多いと思います。改めて二輪車の経済性に注目し、家族にもアピールして、まずはスクーターから“リターンライダー”してみるというのもよいのではないでしょうか。
 生活防衛をいかに楽しく、快適にできるか。二輪車はそのための有効なツールになると思います。もちろん、交通ルールはしっかり守って、事故にあわないよう細心の注意を払うことが大前提ですが。

投稿者:主任研究員 川島康明|投稿日:2008年08月15日|コメントを書き込む

  • 主任研究員 川島康明
  • No.0260

BCP担当者は「BCP普及研究会」にぜひ参加を

 地震などの危機発生時に重要な業務を止めない、止めたとしても速やかに復旧できるように、あらかじめ計画を作成し、訓練しておこうというのが、BCP(事業継続計画)です。当所でもこのテーマについて継続的に調査研究を行っており、県内の工業団地組合や業界団体の勉強会などで、調査成果を発表させてもらっています。

 ただし、これまで何度かアンケート調査や聴取調査を行ってきましたが、BCPに関しては業界や企業規模によって取組みにかなりの温度差があるのが実状です。策定している企業でも、取引先から策定を強く要請されて「BCPは何か」から勉強し、書面を整えるので精一杯という声がよく聞かれます。“まずは作ってみる”というのは大切なことですが、実務担当者にしてみれば、たとえば大地震が起きたときに本当に効果があるのか、計画に致命的な漏れはないのかなど、「だれかに相談できればよいのに」と思うことも多いのではないでしょうか。

 こうした悩みの受け皿となるべく、静岡県では、この4月から「BCP普及研究会」という組織を立ち上げようとしています。この会は、静岡県とNPO法人事業継続推進機構の静岡グループ(中小企業診断士など)が中心となって、市、大学、民間団体とも連携しながら、BCPに関する情報提供・交換を継続的に行っていこうという、関係者の“交流の場”のようなものです。県では県内企業の参加を募っていくとのことですが、これからBCPを作ろうという実務担当者の方や、作ったけれど我流で不安という方など、この会に参加して自社のBCPを磨き上げてみるのはどうでしょう。参加費は無料ですよ。

問合せ先:静岡県BCP普及研究会事務局(静岡県産業部商工業局技術振興室内)
TEL 054-221-2846

投稿者:主任研究員 川島康明|投稿日:2008年03月03日|コメントを書き込む

  • 主任研究員 川島康明
  • No.0242

中小企業地域資源活用プログラム。ご存知ですか?

 最近の行政の支援施策は、中小企業○○事業とか、地域資源○○事業というのが数多く、比較的情報に接している立場でも、「えーと、これはどんな施策だったかな」とついつい混同してしまうこともあります。

 さて、今回の「中小企業地域資源活用プログラム」ですが、簡単に言えば、都道府県が指定する「地域資源」リストに記載された資源を使って、新しい商品やサービスの開発、販路の開拓を行う中小企業を支援しようというものです。
この「地域資源」リストは大きく、「農林水産物」、「鉱工業品」、「観光資源」の3つに分かれています。静岡県では、お茶やみかん、マグロや桜えび、駿河湾海洋深層水や木製家具、遠州織物、楽器、富士山、温泉、浜名湖などなど・・・。それぞれ農林水産57、鉱工業52、観光66と、あわせて175の資源が掲載されています。
いよいよ、この9月から事業者からの申請受付が始まりますが、国では、平成19年度から5年間で1,000件の認定を見込んでおり、単純に考えても、静岡県では、20-30件の認定が期待されるところです。

 認定を受ければ、設備投資減税、政府系金融機関による低利融資や保証協会保証枠の拡大、専門家等によるアドバイスなどを受けることができます。また、試作品開発等に対する補助金(1件当たり最大3年間、計3,000万円(補助率2/3))も準備されています。これまでの施策では認定対象がコンソーシアムや組合、商工団体などでしたが、今回は事業者自身が対象。新しい事業を始めたばかりとか、始めようとアイディアを練っている経営者の方々は、まずは一度「地域資源」リストに目を通しておくことをお勧めします(活用する・しないは別として、話のネタにもなりそうですよ)。

(その他参考)
地域資源活用事業関連の情報
http://j-net21.smrj.go.jp/expand/shigen/about/pdf/all.pdf

参考リンク
静岡県の基本構想(地域資源リストが記載されています)(www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-520/documents/shigen.pdf)

投稿者:主任研究員 川島康明|投稿日:2007年09月03日|

  • 主任研究員 川島康明
  • No.0230

熟睡する人々。落ちませんように

 寒くもなく、暑くもなく、快適な5月。今年はやけに天候が不安定ではありますが、週末にはツーリングを楽しむライダーを数多く見かけるようになりました。
 一昨年春に高速道路での二人乗りが解禁になったことで、高速道路でも家族や友人を後ろに乗せて走るバイクも増えています。二輪車用ETCも導入され、高速移動する際の利便性はますます高まりそうですが、どうも心配なのは、同乗者がどう見ても熟睡しているケース。隣を抜いていく時、あるいは抜かれる時に、背もたれのないバイクで同乗者が運転手にもたれ、首をかくんかくんさせているのを見ると、“落ちませんように”と心の中で祈ってしまうのは、私だけではないでしょう。

 バイクに同乗したことのない人には、何であんな状態で眠れるのかと不思議に思われるでしょうが、一定の音とリズム、景色の変わらない単調な道、特に操作するものもない、風切り音で話もできない、という条件がそろうと、最初は歌でも歌ってみようかな、と眠らないようにがんばる(経験者談)のですが、いつの間にかボーっと意識が遠のいて、運転者のヘルメットにカツンと頭をぶつけてハっと目を覚ます、という状況になります。
 とはいえ、高速道路とはいえ緊急時にとっさのブレーキやレーン変更などシビアな操作が必要になることもあります。同乗者の命を預かるライダーは、定期的に休憩をとるのは当たり前。最近は、ヘルメットに装着するタイプの無線・トランシーバーも性能が良くリーズナブルなものが登場しています。そんなものを利用して、冬山での遭難ではないですが、“寝るな”、“寝たら死ぬぞ”と常に同乗者を脅しながら(会話しながら)、安全にツーリングを楽しみたいものです。

 ちなみに、熟睡して走行中のバイクから落ちた経験のある人は世の中にどのくらいいるのでしょうか。ご存知の方、ぜひ教えて下さい。

投稿者:主任研究員 川島康明|投稿日:2007年05月17日|

  • 主任研究員 川島康明
  • No.0220

「満足」するとはどういうことか

 最近は、CS(カスタマー・サティスファクション:顧客満足)活動の一環として、顧客満足度アンケートを定期的に実施している企業が増えているようだ。当所でも、会員の皆さんにアンケートやモニターをお願いして、皆さんの意見を出版物の企画やサービスに生かそうと、所員一同、日々知恵を絞っている。
 さて、アンケートでは、「とても満足」「満足」「普通」「不満」「とても不満」といった選択肢を設けて○をつけてもらうわけだが、そもそも、“満足”するということはどういうことなのか、について考えてみる。

 ちなみに、辞典では、“満足”とは「心にかなって不平不満のないこと。心が満ち足りること」と載っている。思わず、“不平不満のない”ってそれはそうだろう。“満ち足りる”って訓読みしただけではないか、とつっこみたくなる。
 では、自分の経験を振り返ってみると、たとえば映画。「超大作!史上空前の○○」と大々的に宣伝されていて、それほどすごい映画なら見てみようと、ワクワクしながら映画館に足を運んだ。しかし、見終わった時には、「・・・悪くないけど、そんなによかったかな・・・」というすっきりしない気分を味わったことがある。逆に、見たい映画が満席で立ち見もできない。だが、しかたなく入った隣の館で上映されていたマイナーな作品がとても感動的で、非常に満足したということもある。そのほかにも、食べ物や飲み物、飲食店や小売店、大型家電や乗用車まで、皆さんにもきっと、こうした経験があるのではないだろうか。
 何かを買おうという時、その商品やサービスの“値段”はたしかに重要な検討材料だ。とはいえ、高いから満足するかというと、そうでもない。安いから満足しないかというと、そうでもない。結局、私たちは、その商品やサービスに対して、自らが抱いている“期待”値と、実際に使った時の“感動”値を比べて、「期待<感動」であれば満足し、「期待>感動」ならば不満になる。その差が大きいほど、満足・不満度は高くなるということらしい。

 ということは、「顧客満足度」を高める方向は大きく2つある。
 1つは“感動”値を大きくすること。これは、大小問わずあらゆる企業が新商品の開発や接客態度の向上などを通じて目指しているところで、ビジネスの正道といえるだろう。
 もう1つは、“期待”値を小さくするということだ。もちろん、消費者は何かを期待してモノやサービスを買うわけだから、期待自体を生み出せなければ商売にはならない。ここで言いたいのは、「過度な期待をさせない」ことが満足度を高める方策になりうるということである。たとえば、販売店が商品のリスクを説明せず、メリットだけを誇張した売り方をしていれば、消費者の“期待”が不自然に高まる一方で、いざリスクが顕在化すれば、“感動”はマイナス方向に大きくふれ、結果として購入者の満足度はガタっと低下するというわけだ。よく耳にする「説明責任」の重要性は、こうした観点からも説明できるだろう。

 “期待”と“感動”・・・。人によって、あるいはライフステージによって、クルクルと変わるこうした心理的要因をもとにした“満足”に関わる分析、企業活動への応用研究は、まだまだ発展途上の段階にある。だからこそ、調査研究に携わる1人として、非常に惹かれる研究分野でもある。

投稿者:主任研究員 川島康明|投稿日:2007年01月23日|

  • 主任研究員 川島康明
  • No.0207

東海地震 父さん母さん、爺ちゃん婆ちゃんの家は大丈夫?

東海地震が起きた!
 ふう、3年前に耐震も考えて新築した自宅は壁にひびが入る程度で、うちにいた家族も大きな怪我はないようだ。
 実家は大丈夫だったかな?電話が込んでいるからなかなか連絡がつかない。まだ・・・まだ・・・。
 ちょっと待って。実家を新築したのは俺が小学生の時だから昭和50年ごろ。たしか昭和56年以前の木造住宅は危ないって聞いたことがあるけど、まさか家がつぶれているんじゃ・・・

 マグニチュード8、県内沿岸地域では震度7という激震が想定されている東海地震では、昭和56年5月31日以前に建築された木造住宅は倒壊する危険が高いといわれています。静岡県には、約127万戸の住宅がありますが、県の推計によると、そのうち約34万戸(約27%)で耐震性が不十分であると推計されています。
 ちなみに、サラリーマンの場合、統計を使って平均労働時間などから仕事時間以外に地震に遭遇する確率を計算してみると約8割となります。私の場合はこのうち8割程度はうちでごろごろしているので、0.8×0.8=0.64、自宅で被災する確率は64%ということになります。たまたま現在は、築5年程度の賃貸共同住宅なので耐震性は十分と考えていますが、心配になるのは昭和54年ごろに建てられた実家の方。「うちは大丈夫」という親に、まずは診断だけでもやるように説教しています。

 「自分の家は築も浅いし耐震性も十分」という方も多いと思いますが、実家や祖父母宅が、木造で築25年以上経っていそうだということなら、静岡県では、耐震診断は無料で、補強計画策定や工事にも補助が受けることができます(下記参照)から、帰省の際にでも家の耐震について、ぜひ話題に出してみてください。国による試算では東海地震が30年以内に起こる確率は87%。地震が起きてから悔やまないように。

○専門家による無料耐震診断
 無料で市町が専門家(静岡県耐震診断補強相談士)を派遣し、耐震診断を行う。
  対象住宅…静岡県内にある、昭和56年5月31日以前に建築された木造住宅。
  費用…無料

○補強計画の策定に対する補助
 耐震診断の結果、耐震性に問題がある場合、どこをどのように補強するかを検
 討する補強計画の策定に対して補助金が受けられる(実施していない市町あ
 り)。
  対象住宅…静岡県内にある、昭和56年5月31日以前に建築された木造住宅。
  補助対象…補強計画の作成について、設計事務所に支払った経費。
  補助金額…補助対象経費の3分の2。ただし、9万6千円が上限。

○補強工事に対する補助
 木造住宅の耐震補強工事に対して、30万円の補助金が受けられる。市町によっ
 ては、高齢者のみの世帯や障害のある方と同居の世帯に対する割増補助や独
 自の上乗せ補助がある。
  対象住宅…静岡県内にある、昭和56年5月31日以前に建築された、耐震診断
  の結果が総合評点1.0未満の(「倒壊又は大破壊の危険がある」又は「やや
  危険がある」)木造住宅。
  補助対象…総合評点を0.3ポイント以上向上させ、1.0以上にする耐震補強工事
  について、大工等に支払った経費(設計料も対象)。
  補助金額…補助対象経費の全額(上限30万円)

参考リンク
静岡県「耐震ナビ」(www.taishinnavi.pref.shizuoka.jp/index.html)

投稿者:主任研究員 川島康明|投稿日:2006年09月08日|

  • 主任研究員 川島康明
  • No.0194

二輪車文化の醸成に向けて

 静岡経済研究所では、県内主要産業について四半期見通しや年間展望をとりまとめて会員の皆様に提供しています。私は県西部地域に集積の厚い二輪車業界を担当しており、完成車メーカーや部品メーカーの経営者や広報担当の皆さんに、業界の現況などについて定期的にお話をうかがっています。
 現在、完成車メーカーの二輪車事業は、堅調な北米や欧州市場、好調なアジア市場に支えられて販売台数、販売金額とも前年を上回る水準で推移しています。一方、長年減少傾向が続いている国内市場は、250ccクラスのスクーターの健闘により、出荷台数で70万台の水準をかろうじて確保している状況です。業界専門紙である二輪車新聞によると、平成17年は70万6,960台で前年比+0.3%とほぼ横ばいになったようです。
 成熟化が進む国内市場は、販売台数の世界シェアでいえば2%程度に過ぎず、東南アジアやインド、中国が伸長するにつれて台数ベースでのウエートは一段と低下していくのは確実と思われます。こうした中で、今後の国内市場はどうなっていくのでしょうか。
 業界の方々とお話する中で、日本と欧米における二輪車文化の違いについてよく話題が出ます。たとえば、アメリカのハーレーダビッドソンは、バイクという枠を越えて、アメリカという国の思想、生き方を象徴するアイテムであり、高額にもかかわらず日本でもユーザーが着実に増えています。また、ドイツをはじめとしたヨーロッパでは、二輪車は大人の趣味として社会的に認知されており、親・子・孫が一緒に二輪車を楽しむ風景も多々見られるといいます。
これに対して日本では、二輪車=“危険”“暴走族”という悪いイメージのみが先行・定着してしまった感があり、二輪車の良さが社会的に理解されているとはいまだに言いがたいというのが実状です。では、こうした状況が変化していく可能性はあるのでしょうか。そのカギは、80年代のバイクブームを経験している、現在30歳代後半から40歳代前半の二輪車免許保有者にありそうです。この世代は仕事や子育てに忙しく、時間もカネも余裕がないため、二輪車を手放しているケースが多いと思われますが、仕事に一区切りがついて、子どもも成人する頃、昔の楽しみをもう一度体験してみたいと、リターンライダーとなる可能性は十分にあります。現在でも中高年層ライダー向けの雑誌が発刊されたり、中年夫婦でのツーリングの楽しさを伝えるメーカー広告などもみられるようになっていますが、免許保有者数という量の面、二輪車への愛着という質の面から考えても、15年から20年後が「日本に二輪車文化を定着させる最後のチャンス」(完成車メーカーの広報担当者)といえそうです。
 静岡県にはホンダ(本田技研工業)、ヤマハ発動機、スズキ、カワサキ(川崎重工業)という4大メーカーのうち、ヤマハとスズキが本社を構え、ホンダのメイン工場が立地する日本一の二輪車生産地です。浜松市では「バイクのふるさと浜松」と銘打ったイベントを毎年開催していますが、本県全体で二輪車文化の創造・醸成をリードしていくことが切に期待されるところです。

投稿者:主任研究員 川島康明|投稿日:2006年06月27日|

  • 主任研究員 川島康明
  • No.0186

“ただ”でできる企業の防災対策

 最近は国内外で大規模な自然災害が続発していますが、静岡県民にとっては、やはり東海地震が気になるところです。
 さて、では企業ではどのような対応が求められるのかといえば、建物や設備の対策からはじまって、飲食料の備蓄やコンピュータのデータ保存、防災組織や事業復旧時の人的体制づくりなど・・・・・。資金や人材が豊富な大手企業であればまだしも、中小企業では万全の対策を立てているといいきれるところはほとんどないのが現状でしょう。「カネも時間もないからしようがない」という声が聞こえてきそうですが、では、カネも時間もかからないことからはじめてみたらどうでしょうか。

 まず1つめが自社のある場所の震度はどのくらいか、あるいは、地盤の液状化や津波の危険度を知ること。これは静岡県防災局「防災情報インターネットGIS」で所在地の住所を入力すれば、簡単にわかります。
 2つ目が災害用伝言ダイアル「171」を試す。これは震度6弱以上の地震が発生した場合に、1件30秒、最大10伝言が48時間保管される(固定電話の場合)というもの。NTT西日本のホームページには疑似体験コーナーがありますし、毎月1日には実際に試用できるので、いざ被災した場合の安否確認をスムーズに行うためにも、社員の皆さんにも試しておくように一声かけてみたらどうでしょうか。

 そして3つ目が、最近耳にすることが多くなっているBCP(事業継続計画)の作成です。これは、被災時に業務が中断しないように、中断してもできる限り早く復旧できるようにあらかじめ作成しておく計画のことですが、まともにコンサルタントに依頼して作ろうと思えば何百万円もかかります。が、インターネット上でチェックシートに記入するだけで簡易なプランを作成できるという仕組みが、2月下旬に中小企業庁から提供されるといいます。基本、中級、上級と3コースあるとのことですが、まずは試してみる。ただですから。

 最後にひとつ。被災後の復旧で最重要視すべきは、やはりヒト=従業員です。では、経営者の方々は、社員の自宅の耐震性は大丈夫か、ご存知でしょうか。とくに、企業のキーパーソンといえるような技術・技能・能力を持った社員が自宅の倒壊や家具の下敷きになって亡くなってしまったら、事業復旧どころではありません。極論をいえば、会社にとって絶対に失いたくない社員には、社長自ら業務命令で耐震診断・改修させるくらいの意気込みが必要です。ちなみに、早急に診断が必要なのは、昭和56年5月以前に建てられた木造住宅です。まずは、社員から自宅の状況を聞く。そして、対象となる住宅に住んでいる社員がいれば、静岡県都市住宅部のホームページで簡易な耐震診断ができますし、詳細な診断や工事に補助金を出す制度もあります。
 以上、ただでできることだけでも、ぜひお試しを(もちろんインターネット接続料、通話料はかかりますけど)。
 
関連URL:防災情報インターネットGIS(静岡県防災局)
           http://gis.pref.shizuoka.jp/bousai/index.htm
      災害用伝言ダイアル(NTT西日本)
           http://www.ntt-west.co.jp/dengon/
      中小企業BCP策定運用指針(中小企業庁)
           http://www.chusho.meti.go.jp/bcp/
      耐震ナビ(静岡県都市住宅部、補助・融資制度の説明もあり)
           http://www.taishinnavi.pref.shizuoka.jp/
                  
参考リンク
ただでできる対策その1(防災情報インターネットGIS(静岡県防災局))(gis.pref.shizuoka.jp/bousai/index.htm)

投稿者:主任研究員 川島康明|投稿日:2006年02月24日|

  • 主任研究員 川島康明
  • No.0175

東京モーターショー2005 二輪車ブースより

 10月19日の水曜日、千葉市の幕張メッセで開催されている「東京モーターショー2005」をプレスとして視察してきた。今回は、“みんながココロに描いてる、くるまのすべてを新提案。”がテーマ。ショー全体の印象としては、前回(平成15年)の環境と性能の両立を志向するというスタンスが、一段と明確になっており、四輪車、二輪車とも、市販が見込まれる新型車や、魅力溢れる燃料電池車や電気自動車、ハイブリット車などが光・音・映像を駆使してPRされている。11月6日に閉幕となるが、11月3日までの入場者数は1,182,700人と、集客も100万人の大台を超えたようだ。

 さて、今回は、研究所の二輪担当として、静岡県に関連の深い二輪車メーカー(本田技研工業、ヤマハ発動機、スズキ)の出展状況についてまとめてみる。
 二輪車メーカーとしては、ホンダ技研工業、ヤマハ発動機、スズキ、カワサキという国内4メーカーとともに、海外勢では、人気の高いハーレーダビッドソン(米)やBMW(独)、ドゥカティ(伊)のほか5社がブースを設けている。
 まず、ホンダのブースでは、新型シャフトドライブやサスペンションを採用したオートマチックスーパースポーツ「E4‐01」(photo1)とともに、?型2気筒680ccエンジンを搭載するオートマチックモデル「DN‐01」(photo2)が披露された。このモデルは、2タイプのオートマモードに加え、手元のボタンで変速を行う6速マニュアルモードも装備しており、当社では近い将来の市販を目指しているという。
 ヤマハ発動機からは、600ccエンジンと高出力・高効率モーター、電子制御技術を組み合わせたハイブリット車「Gen-Ryu」(photo3)や、高級感を演出した全長3メートルのコンセプトカー「MAXAM3000」(photo4)が登場。そのほか、インホイールモーターゆえの車体レイアウトの自動度を活かし、車体シルエットを幾通りにも調整できる電動の二輪駆動車「ディノニクス」(photo5)や、「HV-01」(ハイブリット車)、「FC-me」(燃料電池車)にも耳目が集まった。また当社では、「ジェネック」と呼ばれる新たな電子制御システムもアピール。電子制御スロットル搭載のスポーツ車「YZF-R6」、電子制御クラッチを装備したツアラー「FJR1300AS」も、アーティスティックな雰囲気のブースに展示されている。
 一方、スズキでは、直列6気筒1,000ccエンジンを極限までコンパクト化して流麗な車体に収めた「ストラトスフィア」(photo6)、自社のスポーツモデルGSX-Rの技術を盛り込み、高性能な足回りで固めたネイキッドモデル「GSR400」(photo7)、新設計のDOHC4バルブエンジンと大径タイヤを装着した「スカイウェイブ250S」(photo8)などが公表されている。

 二輪車ブースを概観してみると、国内二輪市場がビックスクーターにけん引されているということもあって、コンセプトカーとしては、スクーターのバリエーションが多かったわけだが、徹底したラグジュアリーの追求、スポーツ走行の重視というような差別化志向が明確に現れている。前述のホンダ「DN‐01」は市販化も見据えているとのことだが、今年6月のオートマチック免許の導入も追い風となって、足をそろえて乗るのではなく、またがるタイプのスクーターも、新たなバイクのカテゴリーとして認知される可能性も十分ある。
 こうしたスクーターの進化とともに、環境技術や電子制御技術の進展、あるいは二輪車用エアバック(ホンダが出展)、ABS(アンチロックブレーキシステム)の普及などによる安全性の向上などを通じて、体力的に不安があったり、安全性を重視する中高年層にも、広く楽しんでもらえるモデルがさらに増え、わが国にも、モーターサイクル文化が醸成されることを強く期待したい

図0175.gif

投稿者:主任研究員 川島康明|投稿日:2005年11月04日|

  • 主任研究員 川島康明
  • No.0168

コンテンツビジネス振興に関する一考

 平成16年の「コンテンツの創造、保護、及び活用の促進に関する法律」(コンテンツ振興法)の成立をきっかけに、コンテンツビジネスという言葉が身の回りでもよく聞かれるようになりました。静岡県でも、平成16年12月に静岡情報産業協会が静岡市長、静岡県知事に提出した政策提言書「しずおかコンテンツバレー構想」を受けて、産学官による推進母体「しずおかコンテンツバレー推進コンソーシアム」が立ち上げられ、現場のクリエーターなどを講師に迎えたセミナー・講演会をはじめ、国際コンテンツフェアやデジタルコンテンツグランプリの開催といった取組みが進められています。

 さて、この「コンテンツ」とは何かといえば、知的財産権で保護されるあらゆる「情報の内容」のことを指し、具体的には、映画やドラマ、音楽、マンガ、アニメ、ゲームなど、多岐にわたります。こうしたコンテンツのうち、最近では、若年層や一部のマニアの世界であったアニメも、海外での評価の高まりやマーケットの広がりが報道されたこともあって市民権を獲得しつつあるようです(秋葉原などの“萌え”ブームには、一般市民はなかなか共感しにくいかもしれませんが・・・)。ただし、こうしたアニメと比べると、マンガについては、総合的な情報提供や客観的な評価のできる専門誌、資料が少なく、その振興が国家戦略に位置づけられている割には、いまひとつ実態が広く知られていません。

 そこで、現在のマンガ市場の状況を外観してみると、一言でいえば国内縮小・海外拡大という構図が浮かび上がってきます。まず国内市場をみると、2004年のマンガ(単行本と雑誌)の販売額は5,047億円となっています。その規模は、国内で流通する出版物の推定販売額2兆2,428億円の22.5%を占めており、出版業界にとって大きな柱になっていることがわかります。ただし、その推移に目をやると、前年比では2.1%減と振るわず、なかでもマンガ雑誌は1996年以降、減少基調にあり、10年前に比べると2割以上市場が縮小しています。この背景には、少子化や余暇活動の多様化などに伴うマンガ購入者の減少という要因のほかに、マンガ喫茶や新古書店、マンガレンタル店の登場によって、“マンガを買わずに読む”人々が増加していることも挙げられます。

 一方、海外では、日本のコミック本の人気が高まりつつあるようです。たとえばアメリカでは、2002年から少年誌の大御所「少年ジャンプ」(集英社)の英語版を発行されており(発行部数35万部)、単行本についても、北米を中心にマンガ出版、アニメ放映を手がけるTOKYOPOP(本社:東京都)から80タイトル以上が出版されています。最近では、欧州でも日本のマンガ市場が開拓されつつあり、2004年10月からはスウェーデン、2005年3月からはノルウェーでも販売が開始されました。販売部数自体はいまだ大きくなく、ライセンス契約のない海賊版への対応など課題もありますが、キャラクターづくりやコマ割り、吹き出しの配置、登場人物の心理描写といった日本独自の表現手法が優れたものとして世界的に認められつつあることは、喜ばしいことです。

 こうしたマンガも含めて、いわゆるポップカルチャー(大衆文化)に属する分野が、コンテンツビジネスとして振興されようとしているわけですが、これまで官とは関わりの薄かった(というより、ほとんど接点がなかった)ポップカルチャーの娯楽性、先鋭性といった感性的な部分を施策にうまく反映させていけるのかは非常に気になるところです。また、コンテンツビジネスの“コンテンツ”そのものは、極言すれば一個人の創造性に依存しており、きわめて属人的なものです。公的立場からそうしたコア部分を伸ばすためには、これまでの産業振興とはまったく違う、場合によっては行政、公益という枠にさえもとらわれない視点、発想が求められるのではないでしょうか。
 振興に携わるさまざまな立場の方々が、めまぐるしく変わる業界の現状を敏感にとらえて施策の検証、次なる取組みへのフィードバックを柔軟に行い、そうした仕組みをもってコンテンツビジネスにおける日本、静岡県のさらなる競争力向上が実現されることが期待されます。

参考資料:日本貿易振興機構「日本の出版産業の動向」

投稿者:主任研究員 川島康明|投稿日:2005年09月02日|

  • 主任研究員 川島康明
  • No.0151

震災対策の値段

 このところわが国では、新潟県中越地震、福岡県西方沖地震と大規模な地震が続発している。その被災状況を見て、もし東海地震が起きたらわが社は大丈夫だろうかと不安を持つ経営者も多いだろう。ただし、いざ震災対策をたてようと考えると、どの程度のコストがかかるのか、今ひとつわかりずらい。そこで、中小企業でも講じておくべき主な震災対策の“値段”について考えてみた。

 まず、事務所や工場の耐震工事である。総じて中小企業の経営環境は厳しい状況にあるが、万が一、“資金がない”から対策を施さず、建物が倒壊して従業員や顧客が死亡すれば、こと、地震の切迫性が長年説かれている静岡県では、経営責任が問われることは避けられない。そのコストについてだが、工事に先立つ耐震診断は、鉄筋コンクリート造、1,000平方メートルの建物で100から120万円といったところ(診断のレベル、建物の図面の有無や建坪、構造等によって金額は大きく変わる)。この費用については、行政の助成を受けられることもあるので地元の役所等に確認しておくのが賢明である。その結果、改修を要するとなれば工事にかかるわけだが、実際の工事費は、鉄筋コンクリート造で(柱と柱で挟まれた)1壁当たり250?400万円、1,000平方メートルの建物なら6,000万円あたりが一応の目安となる。ただし、建物の具合によっては補強部分が増えたり、制震対策を採用するなどで、費用が数倍に膨らむことも少なくない。このコストを高いと見るか妥当とみるかは経営上の判断となるが、いずれにせよ、就業中に従業員や顧客が集中する建物については、優先的に耐震化していくことが経営者の義務といえる。

 次に、電子データのバックアップである。顧客や製品、生産に関わる電子データは、社内のコンピュータやサーバー自体が破壊されれば、その復旧に膨大な時間とコストがかかる。また、震災時、倒壊した建物からデータを持ち出せない事態が起こる可能性も高い。その対策コストであるが、たとえば、富士通が提供するサービスでは、ホームページやIT環境の維持管理も含めて年額150?200万円(データは千葉県館林市に蓄積される)。価格志向であれば、日本ヒューレットパッカードが中小企業向けに、1GB当たり9,800円でバックアップサービスを提供している。データの重要度などに応じて、こうしたサービスの利用を検討してみるのも良い。

 3つめが、安否確認システムである。震災直後に従業員の安否確認をスムーズに行えるかどうかは、事業復旧に大きな影響を与える。そのためのサービスが、大手警備会社などから提供されており、サービス内容によって従業員1,000人規模で年間60から200万円。平時の連絡網としても使えるとはいえ割高だと考えるなら、NTTが提供する災害用伝言ダイヤル「171」を活用するのも手である。小規模な企業であれば、震災時、従業員に「171」で安否に関するメッセージを登録してもらうようにし、あらかじめ決めておいた担当者が一括してチェックする社内体制を整えておけば、十分な効果が期待できる。なお、毎月1日には、このサービスを体験利用できるようになっているので、会社として定期的に運用具合を確認することをお勧めしたい。

 このほかにも、機械設備や事務機器の固定やガラスの飛散防止、水・食料の備蓄、緊急資金調達手段の確保、顧客対策や広報対策まで、震災対策は多岐にわたるが、今回あげた対策は経営上最低限のラインととらえ、中小企業でも早急に実施されることが望まれるところである。

投稿者:主任研究員 川島康明|投稿日:2005年04月26日|

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