羅針盤

ホーム > 羅針盤 > 主席研究員 川島康明

主席研究員 川島康明 のコラム

  • 主席研究員 川島康明
  • No.73

未来のバイク、バイクの未来

自動車業界では電動化や自動運転などの開発競争が激化しているが、静岡県でも生産が盛んなバイク分野はどうだろうか。
バイクへのデジタル技術の導入は着実に進んでいる。ABS、エンジンの応答性やサスペンションの電子制御、トラクションコントロール、シフトアシストなど、最新機種には多彩な機能が盛り込まれる。用品分野でも、バイク用インターコムはスマホと連動し活用領域が広がり、ツーリング時の利便性も格段に上がっている。
さらにメーカーの動きを俯ふかん瞰すれば、バイクの未来が見えてくる。ヤマハ発動機では「人間の限界を超える」をテーマに"MOTOBOT"の開発を進めている。センサーで得た速度やエンジン回転数などの情報をもとに、ロボットライダーがステアリングやアクセル、ブレーキ、クラッチを操作し自律的に運転するというもの。
乗り手側の情報を可視化し、車両の挙動との関係を明らかにすることで、車両開発に生かす。
カワサキが注力し始めたのが、AI(人工知能)の活用だ。感情を理解し自然な対話ができるシステムにより、AIが乗り手の意思や感情を会話から理解し、経験やスキルなどに応じてセッティングを変える。また、ライディングを楽しむための情報や安全に乗るためのアドバイスも提供するという。
今年1月初め、ホンダが米国で発表したのは"倒れないバイク"。乗り手がバランスを崩してもバイクが自律的にバランスを保ち、低速走行時や取り回し時などの転倒を防ぐ。同社の2足歩行型ロボット「ASIMO」で培ったバランス制御技術を応用している。
海外でも、BMWが停止時でも倒れない電動コンセプトモデルを発表している。あとは乗車中に"雨に濡れない技術"が実現できれば、バイク利用時のネガティブな部分が解消されるのかもしれない。
こうした先進技術とともに、これからの二輪車市場を語る上で欠かせない視点が"高齢化対応"だ。最近、高齢者の自動車事故の多発が問題視されているが、バイクに関していえば、高齢ライダーは総じて若々しい。以前、ヤマハ発が東北大教授と共同で「バイクの運転が脳や心の健康にポジティブな影響を与える」という研究成果を発表した。この点に着目し知恵を絞れば、これまでの「二輪車=危険、怖い」というイメージを「いきいき、健康」という社会的要請に沿うものへと変えていくことができる。
そう考えれば、地域が有する二輪車に関する企業や人の集積は、世界でも稀な健康長寿県・静岡の地域資源といえる。その活用が大いに期待される。

投稿者:主席研究員 川島康明|投稿日:2017年03月01日|

  • 主席研究員 川島康明
  • No.65

企業の信頼を高めるBCP

 わが国に未曾有の被害をもたらした東日本大震災の発生から5年が経過した。この大災害をきっかけに、静岡県内でも津波避難タワーの建設や防潮堤の整備が進められ、企業や生活者の内陸部移転などさまざまな動きがあったが、4月に発生した熊本地震により改めて自然災害の凄まじさを思い知らされることになった。
 国内を見渡せば、地震のほかにも大型台風や記録的な豪雨による被害、御嶽山などの噴火、鬼怒川の氾濫による大水害など、数十年に一度という大規模な災害の発生が目立つ。こうした自然災害のみならず、グローバル化や情報化の進展もあって、企業を取り巻くリスクは多様化しているのが実状である。
 こうしたリスクに、企業はどのように対峙していくか。その武器となるのがBCP(事業継続計画)であり、中小企業の成功事例が広く紹介されたことで、認知度自体は大震災前に比べて高まっていることは確かである。それでも、県調査(平成2 6 年度)によると、BCPを「策定済」との県内企業は1 6 . 7%、「防災計画に織込み済」(3 . 4%)を合わせて2割程度にとどまっている。従業員数3 0 0 人以上の比較的大規模な企業では策定済が半数近くを占める一方、2 9人以下の小企業では1 0%前後、9人以下の零細企業ではほとんど策定されておらず、企業規模による格差が目立つ。
 この傾向は以前より変わらず、とくに中小企業では資源の制約や策定効果への疑問から普及が進んでいないとみられる。こうした状況を変えるにはどうするべきなのか。やはり、商売上のメリットがある、策定・運用することが"儲け"につながるとなれば、大きなインセンティブになるだろう。
 そうした考えから、中小企業庁では、BCPにおける具体的な取組みが経営上の効果に結びついているかを調査している。これによると、「災害対応力の向上」におおむね半数以上が効果ありとしているのは当然だが、「環境整備・業務改善」や、事業上きわめて重要な「取引先の信頼向上」でも、3割から4割の企業がプラスの効果を実感している。
 たしかに「売上高増・取引先増」まで結びついたとの回答は一ケタ台にとどまるが、企業を取り巻くリスクがこれだけ多様化・大規模化している現在、その対応に真摯な姿勢で取り組もうという企業への評価が高まるのは間違いない。
 BCP策定率の向上とともに、「複合リスクの想定」「サプライチェーン確保の重要性」といった大震災の教訓を改めて思い起こし、演習・訓練によるブラッシュアップを通じて県内産業のレジリエンス(復元力)がさらに高まることを期待する。

投稿者:主席研究員 川島康明|投稿日:2016年05月02日|

  • 主席研究員 川島康明
  • No.57

成熟するマンガ文化とポテンシャル

 日本のマンガやアニメ、ゲーム、J?POPなどを指す“クールジャパン”。その対象が食材や伝統工芸、工業製品などにも広がったせいか、やや焦点がぼやけた感もあるが、その象徴がマンガ・アニメであるのは変わりない。
 とりわけマンガは、紙とペンがあれば描けるという敷居の低さがあり、同人誌販売などのコミケ(コミックマーケット)が相変わらず盛況と、今も昔も身近で人気のジャンルといえよう。
 マンガとの付き合いもかれこれ40年になるが、常々思うのは、その完成度の高さだ。人物描写、コマ割り、間のとり方など、演出の巧みさは表現方法として成熟の域にあると思う。また最近では、なんともいえない先行きへの不安や理不尽さが共感を呼んだのか、人類と巨人の戦いを描く「進撃の巨人」が話題になった。マンガは世相を映す鏡ともいえる。
 テーマ1つとっても、昔からの定番である学園モノや恋愛モノ、スポーツ・格闘モノのほか、職業モノでは、警察官や医者、弁護士、料理人などからモノづくり職人、行政マン、最近では現役の猟師が描く実録モノもある。また、高校野球がテーマでも、たとえば対戦より甲子園の応援に焦点を当てるなど、こんな切り口もあったのかと、唸らされる作品も少なくない。
 とはいえ、業界の雄「週刊少年ジャンプ」の発行部数(ピーク1995年:653万部→ 2013年:267万部)に象徴されるように、週刊・月刊誌需要は長期減少傾向にある。連載マンガを一冊にまとめたコミックス(単行本)の業界売上は、このところ2,000億円台と底堅いが、週一・月一で読むスタイルがめっきり減っている。
 ただし、マンガのポテンシャルを考えれば、悲観することばかりではない。経済やビジネスなど様々な分野でマンガによる解説本が増え、コミックスというカテゴリーを超えてマンガが活用されるようになっている。さらに、電子書籍市場は、出版コストが下がることで有望な新人が発掘される場になり得るだろうし、絶版となった名作や思い出の作品を気軽に読めるといった利便性も提供してくれる。
 気になるのは、スポットが当たる業界の割に、就業環境が改善しているという話が聞こえてこないことだ。夢の実現に苦労を厭いとわずというのは、あくまで当人にとっての話。構造的・慣習的な歪みがあるなら、個人の努力に寄りかかることなく、業界として改善すべきこともまだまだあるだろう。
 マンガは、日本人の民族性や価値観に馴染む表現方法だと改めて感じる。その価値ある文化を将来に伝えていくため、一般の理解が進んだ今こそ、業界の持続性ある発展に向けた取組みを期待したい。

投稿者:主席研究員 川島康明|投稿日:2015年07月01日|

  • 主席研究員 川島康明
  • No.45

事業継続に欠かせない「BCM」

 県内産業界では、小売・サービスの現場を中心に、消費税率引上げによるマイナスの影響をいかに食い止めるかが目下の関心事になっているが、静岡県に立地する企業であれば欠かせない視点がある。事業継続能力を高めるBCM(事業継続マネジメント)という視点だ。


 日本の未来のかたちさえも再考させる転機となった東日本大震災の発生から3年。その後も国内では集中豪雨や大雪など自然災害が続発しているが、大震災当時の危機感は風化していないだろうか。


 当研究所ではここ10年来、企業防災や事業継続の調査研究を集中的に進めてきた。その立場から昨年度を振り返れば、「静岡県第4次地震被害想定」が発表されたことは大きなニュースであった。私自身、同想定を踏まえて改訂された「静岡県事業継続計画モデルプラン」について、改訂を支援する業務に関わり、さらには、自動車部品関連の協同組合で緊急時の代替生産を推進しようという事業にも、委員として参画させていただいた。そうした機会を通じ、関係する方々の危機意識、非常時への備えに対する意欲に並々ならぬものを感じる一方、実際に取り組もうという企業がまだまだ少ない現実に、歯がゆさも感じている。


 実際、県内の中小企業で事業継続計画(BCP)を作っているのは2割弱と少ない。10年ほど前からその必要性が叫ばれてきたことを考えれば、この策定率は十分とはいえない。


 もちろん、多くの中小企業が厳しい環境下で生き残りをかけて力を振り絞っていることは重々承知している。そうした中で、ダイレクトに売上や収益の増加につながらないBCPやBCMに取り組もうというところが少数派であるのは、ある意味、やむを得ないともいえる。だが考えてみてほしい。公に深刻な被害想定が発信され、ビジネス上の最終需要者である大手企業では有事に強い体制を着々と築いている。そうした中で、「中小企業だから取り組めない」という理由で、取引上の信頼は維持できるだろうか。あるいは、対策が不十分で“従業員が仕事中に命を落とす”という最悪の事態になっても、「中小企業だから仕方がない」で済むだろうか。


 BCMは一昨年、すでにISO化され(22301)、国内でも認証取得に動く企業が現れている。幸い、静岡県は品質ISO、環境ISOの認証取得件数ともに全国7位と、取組み度合は他県に決して劣らない。そこで培ったPDCAサイクルに、“品質”や“環境”とともに“事業継続”を載せてみてはどうか。地域全体で取組みが進み、危機管理先進地として認知されれば、本県産業の競争力強化にもつなげていくことができると思う。

投稿者:主席研究員 川島康明|投稿日:2014年04月30日|

ページの先頭へ

入会お申し込み・資料請求について 入会および維持会員への切り換えなどに関するご照会・お問い合せは、総務部会員担当までご連絡ください。
また、入会資料の送付をご希望される方は、入会お申し込み・資料請求フォームよりお申し込みください。電話番号 054-250-8750 E-mail info@po.seri.or.jp 受付時間 9:00から17:00 祝日 土・日・祝除く入会お申し込み資料請求フォーム

  • 維持会員専用サイト

カテゴリー

最近の投稿

月別

  • サービス案内
  • 財団法人 静岡経済研究所 書籍のご案内
  • 静岡経済がわかるリンク集
  • 静岡県内事業者一覧
  • 研究社員紹介
  • マーケットプラザ