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  • 主任研究員 川島康明
  • No.0168

コンテンツビジネス振興に関する一考

 平成16年の「コンテンツの創造、保護、及び活用の促進に関する法律」(コンテンツ振興法)の成立をきっかけに、コンテンツビジネスという言葉が身の回りでもよく聞かれるようになりました。静岡県でも、平成16年12月に静岡情報産業協会が静岡市長、静岡県知事に提出した政策提言書「しずおかコンテンツバレー構想」を受けて、産学官による推進母体「しずおかコンテンツバレー推進コンソーシアム」が立ち上げられ、現場のクリエーターなどを講師に迎えたセミナー・講演会をはじめ、国際コンテンツフェアやデジタルコンテンツグランプリの開催といった取組みが進められています。

 さて、この「コンテンツ」とは何かといえば、知的財産権で保護されるあらゆる「情報の内容」のことを指し、具体的には、映画やドラマ、音楽、マンガ、アニメ、ゲームなど、多岐にわたります。こうしたコンテンツのうち、最近では、若年層や一部のマニアの世界であったアニメも、海外での評価の高まりやマーケットの広がりが報道されたこともあって市民権を獲得しつつあるようです(秋葉原などの“萌え”ブームには、一般市民はなかなか共感しにくいかもしれませんが・・・)。ただし、こうしたアニメと比べると、マンガについては、総合的な情報提供や客観的な評価のできる専門誌、資料が少なく、その振興が国家戦略に位置づけられている割には、いまひとつ実態が広く知られていません。

 そこで、現在のマンガ市場の状況を外観してみると、一言でいえば国内縮小・海外拡大という構図が浮かび上がってきます。まず国内市場をみると、2004年のマンガ(単行本と雑誌)の販売額は5,047億円となっています。その規模は、国内で流通する出版物の推定販売額2兆2,428億円の22.5%を占めており、出版業界にとって大きな柱になっていることがわかります。ただし、その推移に目をやると、前年比では2.1%減と振るわず、なかでもマンガ雑誌は1996年以降、減少基調にあり、10年前に比べると2割以上市場が縮小しています。この背景には、少子化や余暇活動の多様化などに伴うマンガ購入者の減少という要因のほかに、マンガ喫茶や新古書店、マンガレンタル店の登場によって、“マンガを買わずに読む”人々が増加していることも挙げられます。

 一方、海外では、日本のコミック本の人気が高まりつつあるようです。たとえばアメリカでは、2002年から少年誌の大御所「少年ジャンプ」(集英社)の英語版を発行されており(発行部数35万部)、単行本についても、北米を中心にマンガ出版、アニメ放映を手がけるTOKYOPOP(本社:東京都)から80タイトル以上が出版されています。最近では、欧州でも日本のマンガ市場が開拓されつつあり、2004年10月からはスウェーデン、2005年3月からはノルウェーでも販売が開始されました。販売部数自体はいまだ大きくなく、ライセンス契約のない海賊版への対応など課題もありますが、キャラクターづくりやコマ割り、吹き出しの配置、登場人物の心理描写といった日本独自の表現手法が優れたものとして世界的に認められつつあることは、喜ばしいことです。

 こうしたマンガも含めて、いわゆるポップカルチャー(大衆文化)に属する分野が、コンテンツビジネスとして振興されようとしているわけですが、これまで官とは関わりの薄かった(というより、ほとんど接点がなかった)ポップカルチャーの娯楽性、先鋭性といった感性的な部分を施策にうまく反映させていけるのかは非常に気になるところです。また、コンテンツビジネスの“コンテンツ”そのものは、極言すれば一個人の創造性に依存しており、きわめて属人的なものです。公的立場からそうしたコア部分を伸ばすためには、これまでの産業振興とはまったく違う、場合によっては行政、公益という枠にさえもとらわれない視点、発想が求められるのではないでしょうか。
 振興に携わるさまざまな立場の方々が、めまぐるしく変わる業界の現状を敏感にとらえて施策の検証、次なる取組みへのフィードバックを柔軟に行い、そうした仕組みをもってコンテンツビジネスにおける日本、静岡県のさらなる競争力向上が実現されることが期待されます。

参考資料:日本貿易振興機構「日本の出版産業の動向」

投稿者:主任研究員 川島康明|投稿日:2005年09月02日|

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