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資本取引自由化の影響

米国のテーパリング(量的金融緩和の縮小)で新興国からの資金流出が加速
 FRB(米国連邦準備銀行)によるテーパリングが昨年12月から始まった。開始時期を巡る不透明感が払拭されたことにより、落ち着いた動きを見せていた金融市場であるが、1月23日の外国為替市場におけるアルゼンチンペソの急落(米ドルに対して1日で12%の下落)により、俄かに慌ただしくなってきた。リーマン・ショックによる金融不安、景気悪化を克服するため、米国を始めとする先進国は、大規模な金融緩和によって大量のマネーを市場に放出したが、より高い収益を求めるマネーは、先進国に比べて勢いがあった新興国に流れ込んでいった。しかしリーマン・ショックを克服した先進国経済が成長を取り戻し、新興国の成長に一服感が出始めた昨年からは、マネーの流れに変化が現われてきた。米国のテーパリングが金融市場の話題になり始めた昨年夏場以降、マネーの新興国から先進国への回帰が鮮明になっていたが、アルゼンチン問題で市場心理の悪化に拍車がかかる可能性も出てきている。

資本取引規制の自由化が新興国への資金流入を後押し
 先進国の金融緩和マネーが新興国に大量に流れ込んだ背景には、1980年代から90年代にかけて世界的に広がった資本取引の自由化がある。特に経済成長が遅れていた新興国は、資本取引の自由化によって外国の資金を積極的に受け入れ、国内経済の拡大を加速させてきた。資本取引の自由化は、資金余剰国から資金不足国へ資金移動を促進するため、世界全体で見ても資金配分の効率化が図られ、経済発展に大きく寄与している。
 具体的な資本投資の手段は、外国金融機関による現地企業への融資や債券・株式購入など証券取引による間接的なものと、工場などの生産設備、商業用不動産や住宅など実物資産を外国資本が取得する直接的な投資に大別される。資金流入国の経済が順調に推移している局面では、受け入れ国の経済成長は加速し、資金提供した投資家は高い利回りが確保できるため、双方にとってメリットが大きい。

危機対応に必要な資本取引規制
 一方で資本流入が急激であったり、大幅な拡大が長く続いたりすると、インフレ、通貨高による国際競争力低下、金利上昇、資産バブルの発生を招くなど、受け入れ国の経済にとって悪影響を及ぼすリスクも抱えている。
 また流入した資金はどこかで回収が始まるが、流入国の景気悪化やバブル崩壊など悪材料がきっかけとなり危機的な状況になることも多く、1980年代のラテンアメリカの金融危機や、1990年代のアジア通貨危機が代表的な例である。融資や生産設備投資などは長期的資金が多いが、証券取引や不動産投資は短期的な収益を求める資金が多く、短期資金は一旦回収が始まると一方通行になりがちである。特に近年では高い利回りを求める資金余剰者が、ヘッジファンドなどに運用を委託するケースが多く、運用サイクルや取引スピードに短期志向の強いヘッジファンドがパニックの引き金を引くケースが多くなっている。
 資本流入・流出に関わる過去の危機に学び、特に新興国では何らかの資本流入制限を行う国が多い。具体的には外国人投資家による国内証券投資に一定の制限をしたり、国内企業に対して外国からの借り入れに制限をするなどの直接的な総量規制が多い。外国からの借り入れに対する課税や、外国からの預金受け入れに対する高率の預金準備率賦課など間接的な規制をとる国もある。
 しかしながら国内の経済成長を後押しする資本流入への規制は、国内政治的には不人気の政策であり、資本自由化を進める世界的な潮流からも外圧が強く、危機管理よりも目先のメリット享受を優先するのが実態といえる。危機に強い国内経済構造改革や規制整備は、危機の発生によって進んでいくのが過去の歴史ではあるが、世界経済の発展を大きく毀損するような取り返しのつかない事態は回避しなければならない。特に最近では取引が容易な直接金融(証券市場)が拡大し、短期資金が集中するヘッジファンドの隆盛が危機発生の確率を高めているため、G7やG20などによる協調体制強化に加え、目先の利益ではなく長期的利益追求のために、必要な規制や法律整備を国際的に進めなければならない。

今後の見通し
 新興国の経済成長に一服感が出る中で、先進国への資金回帰が鮮明になっている。特に米国経済に対する信頼感が高まっており、米国株上昇、為替市場での米ドル高が今後も続く可能性が高い。日本経済については「アベノミクス」の第三の矢(成長戦略)に対する期待感が後退しており、株式、為替ともに国内要因よりも海外要因によって動く場面が多くなるだろう。特に株式市場においては、成長戦略の具体化や脱デフレなど国内材料が明確になるまで、外国人投資家の思惑によって上下する、ボラティリティー(変動率)の高い局面が続く可能性が高い。

投稿者:静岡経済研究所スタッフ|投稿日:2014/04/01|

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