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膨張を続けるデリバティブ取引

 金融市場を取り巻く環境は、デリバティブ取引の拡大により大きく変化している。デリバティブ(derivative) を直訳すれば「派生物」となり、金融用語として使われるデリバティブ取引は、「金融派生商品」と呼ばれている。「派生物」とは、ある源から枝分かれしてできた別の物の意であるが、例えば「日経平均先物」とは、源である「日経平均株価」から派生して作られた金融商品ということになる。

 デリバティブ取引では「先物取引」「オプション取引」「スワップ取引」の3種類が代表的な取引であるが、いずれも源となる資産(商品)の価格が変動すると、デリバティブ取引の価格(価値)が変化する仕組みになっている。例えば「日経平均先物」は現物株の日経平均が上昇すれば先物価格は上昇し、「WTI原油先物」は現物取引のWTI原油価格が上昇すれば先物価格は上昇する。

 デリバティブ取引の本来の目的は「リスクヘッジ」にあり、先物取引の発祥は日本における「米」の先物取引とされている。収穫時に米の価格が大きく変動すると農民の生活が不安定になるため、将来の米の価格を予め決めて安心して米を生産するために先物取引が開始された。

 デリバティブ取引が主としてヘッジ目的として利用されていた時には、デリバティブ取引の価格(価値)は、源となる現物価格の変化に連動して動いていたが、現在では現物市場との関係を離れ、デリバティブ取引単独の需給関係で価格が変動するケースが多くなっている。最近金融市場が大きく変動する局面では、最初にデリバティブ取引の価格が変動し、これに引きずられる形で源である現物取引の価格が変化することが多く、主従が逆転してしまっている。

 デリバティブ取引が拡大し、金融市場を主導するようになってきた理由は2つある。1つ目はデリバティブ取引が、少ない元金で大きな取引ができることである。デリバティブ取引の多くは証拠金取引と呼ばれるものであり、現物市場のように売買代金の全額をやり取りする必要がない。通常は用意したお金(証拠金)の3倍程度の取引ができるため、現物取引に比べて元手に対する利益(損失)が大きくなる。またデリバティブ取引は現物取引に比べ取引が速く成立するため、投機的な取引を好む投資家はデリバティブ取引を多用する。

 2つ目は「裁定取引」と呼ばれる、現物取引とデリバティブ取引の間に生まれる価格差を利用する取引が活発化していることである。例えばそれぞれの需給要因などによって、原油の現物価格が先物価格より安い場合が一時的にあったとすると、現物を買って先物を売ることにより、その差額を儲けることができる。こうした裁定取引が多くなされると、現物価格が上がって先物価格が下がり、最終的には現物と先物はほぼ同価格(同価値)に収まることになる。デリバティブ取引を現物取引の代用として利用する投資家も多い。取引量の多さは市場の流動性を高めるため、取引拡大⇒市場の流動性増大⇒さらなる取引拡大、という好循環ができている。

 デリバティブ取引は金融市場が急落するとしばしば犯人扱いされるが、逆に急上昇を主導する場合も多い。市場が過熱した場合、金融当局は必要証拠金の割合を引き上げて取引を抑制する措置などを講じるが、市場を管理するのは難しいのが現状である。デリバティブ取引は特殊な例を除き、必ず一定期間内に反対取引(買い建てをしていれば、売り返済が必要)をしなければならないため、長期的に見れば需給は一定である。デリバティブ取引による市場の乱高下は、短期的なものとして割り切る必要もあるだろう。


今後の見通し

 世界を取り巻く経済環境は、比較的良好と言える。欧州ではギリシャ、イタリアなどユーロ圏の財政問題が落ち着き、景気の底入れ感が強くなってきた。新興国の景気は一時の勢いに比べれば減速感が出ているが、長期的な成長期待は維持されている。国内では消費税増税の影響について不透明感はあるが、金融政策と成長戦略により「脱デフレ」の実現が期待され、国内経済は堅調さを取り戻している。2020 年の東京五輪開催決定は、計量的な経済効果こそ限定的であるが、五輪を梃にした規制緩和・成長戦略の加速、消費マインドの好転により、日本経済に絶大な好影響を与える可能性がある。米国経済は住宅市場の回復と雇用環境の好転により、個人消費を中心とした内需主導の景気回復は予想を上回っている。

 世界的に実体経済の回復が見込まれる中、金融市場においては米国経済の好調さがむしろ懸念材料になっている。それはFRB(米国連邦準備銀行)の量的金融緩和(QE3)が縮小に向かうという推測であり、量的金融緩和に支えられている現在の市場の梯子が外されてしまうとの思惑である。特に新興国に流入していた資金が逆流し始め、為替、株式市場が不安定化している。基軸通貨国の金融政策が転換点を迎えているだけに、金融市場は神経質な展開となっているが、いずれ実体経済の堅調さに目が行く展開になる可能性が高い。

投稿者:静岡経済研究所スタッフ|投稿日:2013/10/01|

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