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長期金利の落ち着きどころ

 4月に日銀が明らかにした金融緩和策を受けて、為替、株式市場では円安、株高が急ピッチで進んでいるが、債券市場においては1 0 年物国債の利回りが乱高下している。日銀による長期国債の買い入れによって、長期金利は今後も低下していくという思惑と、金融緩和による円安、株高、土地価格などの上昇により景気が回復すれば、いずれ長期金利が上昇するという思惑がぶつかり合っているためである。

 金融緩和の実体経済への影響が検証され、市場参加者のコンセンサスが醸成されるまでは、長期金利は不安定な動きをすることが予想されるが、最終的には実体経済に見合った水準で落ち着くはずである。今後の長期金利の動向を予想する際の1つの参考材料として、名目長期金利と実質長期金利の違いに注目したい。

 実質長期金利とは名目長期金利からインフレ率を引いたものである(実質長期金利=名目長期金利?消費者物価指数)。これは例えば1年間に4%の金利を支払って資金を借りていても、物価が2%上昇していれば、実質的な金利負担感は2%(4%?2%)であるという考え方である。逆にお金を運用する側から考えれば、利回り4%の国債を買って利息を貰っても、インフレ率が2%であれば、1年後に買い物をしても2%分しか余分に買い物ができないことになり、4%の利息の実質的な価値は2%しかないという考え方である。 

 日本の1 0 年物国債の利回りは先進国の中でも突出して低いが、実質金利で見てみると様子は異なる。例えば0 . 6%の日本の1 0年物国債利回りは、▲0 . 0 4%のインフレ率(2 0 1 2年平均値)を引けば、0 . 6 4%となるが、1 . 6%の米国の1 0 年物国債利回りは、2 . 0 8%のインフレ率(2 0 1 2 年平均値)を引けば▲ 0 . 4 8%となり、実質長期金利は日本の方が高いことになる。実質長期金利だけに注目すれば、米国の方が日本よりも金融緩和状態にあるとも言える。

 実質長期金利の妥当な水準は、その国の景気の状態や方向性、財政状態など様々な要因によって変わってくるが、一般的には実質金利は実質経済成長率に近い水準に収斂すると理解されている。企業が借り入れをして投資を行っている場合、期待される収益より金利負担が少なければ借入を増加させ、金利負担が多ければ減少させる可能性が高いことを考えれば、金利が成長率に近付いていく理屈が理解しやすい。過去2 0 年の日本を見てみると、1 0 年物国債利回りの平均値は1%?2%、インフレ率の平均値は0%?1%、実質経済成長率の平均値は1%程度で推移しており、名目金利、実質金利、インフレ率、実質経済成長率の関係は概ね妥当な水準で推移していたことになる。

 日銀は今後2年間で2%の物価上昇を目指すとしている。1 0 年物国債利回りの水準が変わらなければ、実質金利は物価上昇分低下していくことになる。仮にインフレ率が2%、1 0 年物国債利回りが0 . 6%とすれば、実質金利は▲ 1 . 4%となる。更に安倍政権が計画している成長戦略により、仮に2%の実質経済成長が定着すれば、「実質金利=実質経済成長率」の関係を考えると、かなり不自然な状態が発生することとなる。現在の国債市場が乱高下しているのも、こうした将来起こりうる不自然さを予感した動きとも言えそうだ。日銀が金融緩和により長期金利を抑え込もうとしても、インフレ率、経済成長率など実体経済と整合性がとれる水準に向けて、長期金利は上昇していく可能性が高い。


今後の見通し

 国内金融市場における、為替市場1ドル= 1 0 0 円、1 0 年物国債利回り0 . 6%、日経平均株価15,000円程度は、日銀の金融緩和計画が十分織り込まれた水準と言える。今後の展開については、物価上昇など実体経済における具体的な効果が現われてくるまで、現状水準を大きく超える進展は難しいだろう。更に株式市場においては、6月に明らかになる「第三の矢=成長戦略」の内容に対する市場の関心が高く、期待に応えられる内容でなければ、失望感が広がる可能性が高い。

 世界の金融市場においては、米国経済に対する注目度が高くなっている。住宅市場の回復から個人消費を中心に穏やかな内需拡大が続いているが、一段の成長には雇用の回復が欠かせないため、米国の雇用統計に敏感に反応する展開が続きそうである。世界的な金融緩和による金余りが現在の金融市場の前提となっているため、FRB(米国連邦準備銀行)の金融政策に対しても市場参加者は神経質になっている。

投稿者:静岡経済研究所スタッフ|投稿日:2013/06/01|

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