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金融市場で存在感を増すCTA(商品取引顧問業者)

 自民党政権による経済運営、いわゆるアベノミクスによって円安、株高、債券高(金利低下)が急ピッチで進み、日本の金融市場は様変わりになっている。長年にわたりジャパン・パッシング(Japan passing)とまで言われ、世界の投資家にとって無関心であった日本の金融市場は、今年に入ってからは最も注目を集める市場の1つとなっている。

 「デフレ脱却」を掲げる自民党政権の経済運営、いわゆるアベノミクスが好感されているが、具体的な政策の実行はまだこれからである。日本の投資家(個人や機関投資家)にとっては政策が遂行されているという実感は少なく、積極的に金融市場をリードしていく動きは少ない。期待を先行させて活発な取引を行っているのは、ヘッジファンドを中心とした外国人投資家である。

 ヘッジファンドの定義について明確なものはないが、個人や機関投資家から私募形式で資金を集め、利益追求を唯一の目的として、様々な金融商品に投資するプロフェッショナルなファンドである。2 0 0 8 年のリーマン・ショックに始まる世界的な金融システム不安の中で、運用成績の悪化によって残高を急減させたヘッジファンドであるが、ここにきて再び存在感を強めている。ヘッジファンドの残高については正確な統計がないが、直近の残高は2 0 0 兆円を大きく上回り、過去最高を更新しているようだ。世界的な金融緩和によって市場には資金が溢れているが、規制緩和、IT技術の進歩によって金融手法が高度化、複雑化し、一般投資家が自ら運用しても成績が上げにくい環境になっ
ているため、ヘッジファンドのようなプロ集団に資金は集まりやすくなっている。

 ヘッジファンドによる運用対象は、株式、債券、商品など多岐にわたり、取引は現物取引とデリバティブ取引があり、これらを組合せた投資手法は無数にのぼっている。ヘッジファンドが行う投資戦略の代表格は、株式の買いと売りを組み合わせる「株式ロング・ショート」や、企業の合併・買収など大きなイベントが発生することを予想してポジションを取る「イベント・ドリブン」などがあるが、最近の金融市場で存在感が極めて大きくなってきているヘッジファンドの一種に、CTA(コモディティー・トレーディング・アドバイザー = 商品取引顧問業者)がある。CTAによる運用は、昨年には推計でヘッジファンド全体の1割以上を占め、2 0 兆円を超えて過去最高の残高になっているようだ。

 CTAの運用の特徴は、現物取引を一切行わず、先物とオプションに特化した取引を行うことにある。そして取引の大半は、予め金融工学を駆使してセットしたプログラムに基づきコンピューターが自動的に行うため、高速かつ激しい売買が繰り返される。CTAで働く社員は、経済や金融に詳しい文系出身者よりも、数学や統計学に詳しい理系出身者が多いとも言われている。CTAがコンピューターにセットする投資プログラムの内容は正に機密事項であるが、経済のファンダメンタルズとは無関係に、相場のテクニカルな動きを重視したものが大半であると言われている。代表的なプログラムは「トレンドフォロー」と呼ばれ、相場の上昇や下落のトレンドに乗って売買残高を積み上げていく手法である。多くのCTAが同様の手法で取引を行うため、一旦相場の流れができると一方通行になりやすく、値動きは螺旋階段を昇降するように増幅されてしまう場合が多い。

 更には先物市場が大きく変動すると、先物取引と現物取引の価格差を利用する「裁定取引」が誘発されて、現物市場の値動きが増幅される。最近の日本の株式市場の一日の変動幅が大きいのも、こうした一連の取引が影響していると推測されている。CTAの存在は金融市場全体に大きな影響を与えており、その動向には十分留意が必要である。

今後の見通し

 期待先行との声がある現在の円安、株高、金利低下であるが、市場はもともと期待に基づき動くものである。取引においては必ず買いと売りが存在し、自分が予想する将来の期待値に比べて現在の実勢値が低ければ買い、高ければ売る。投資家によって期待値が異なるため、売買が成立するのである。従って市場参加者の期待値が上がらなければ、相場は上昇しない。市場に期待させたことが「空手形」に終われば大きな反動が来るし、新たな期待を抱かせていかないと相場は持続しない。

 現在の市場は、「2年を目途とした2%の物価上昇」が前提となっている。4月に実施された日銀の金融緩和は、脱デフレに対する期待値を一気に上昇させたが、金融政策だけでは脱デフレは難しいと市場は見ている。今後具体化してくる政府による「成長戦略」が、将来の日本経済に対して更なる期待を連想させることができなければ、相場の寿命は到来してしまう。

投稿者:静岡経済研究所スタッフ|投稿日:2013/05/01|

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