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市場と対話(フォワード・ガイダンス)する中央銀行

 実体経済における金融の影響や、経済政策における金融政策の役割が大きくなっている。背景には金融自由化により金融商品が次々と開発されたり、金融グローバル化により投資資金が世界を自由に動き回ることができるようになって、実体経済との関わり合いが深化していることがある。また、世界的に国の財政規律に対する目が厳しくなる中で、財政政策による景気対策が取り難くなっていることで、金融政策の役割は相対的に大きくなっている。
 世界経済を混乱させた2008年のリーマン・ショックは、米国で開発された「サブプライムローン」という金融商品の破綻が原因であり、この時各国が景気回復のために行った政策は、大規模な金融緩和が中心になっている。金融史において最大級となった金融緩和は、「金利引き下げ」という伝統的な手法に加えて、中央銀行が国債やその他の証券を買い上げて市場に出回るお金を大量に増やす「量的緩和」という非伝統的な手法も取られた。2012年のギリシャ・ショックに端を発した「欧州危機」による景気悪化は、そもそも緩んだ財政規律を市場が問題視したことが発端であり、ユーロ圏の景気対策は大規模な金融緩和に頼らざるを得なかった。
 このように金融政策の重要性が高まっている中で、各国中央銀行の政策手腕に注目が集まっており、金融政策の具体的な中身はもとより、効果を最大限発揮させるためにいかに金融市場を望む方向に誘導するかという、いわば市場との対話力も重要視されている。

日本銀行のフォワード・ガイダンス
 もともと中央銀行の政策決定には秘密性があり、「公定歩合の変更に関しては嘘が許される」と言われたほどである。しかしながら金融市場が拡大し実体経済への影響力が大きくなった現在では、政策当局の意図が市場参加者に伝わらない時には、政策効果が削がれてしまうばかりか市場が意図せぬ方向に向かい、実体経済に悪影響が出てしまう場合もある。むしろ政策の意図や先行きを公表し、市場参加者の不安を取り除いたり、期待に働きかけたりする方が金融政策の効果を高めるという考え方に変わってきた。
 フォワード・ガイダンスと呼ばれている「市場との対話術」は、1990年代に日本銀行が「ゼロ金利政策」を導入した際、市場に一層の安心感を持たせるためにゼロ金利解除の具体的な条件を示したことが発端とされ、「時間軸政策」とも呼ばれている。昨年の異次元の金融緩和における、「インフレ率2%が定着するまで金融緩和を継続する」という声明も、将来の政策の方向性を明確にしたフォワード・ガイダンスである。

FRB(米国連邦準備銀行)のフォワード・ガイダンス
 景気回復が鮮明になってきた米国では、FRBは金融緩和継続による将来のインフレリスクの芽を摘むため、昨年12月に緩和縮小に踏み切った。しかしながら過去に例をみない大規模な金融緩和を元に戻すまで、今後とも難しい舵取りが予想されている。長期間かつ大規模な緩和に慣れた金融市場が過剰反応すれば、株式、債券、商品市場の急落を招き、実体経済の回復は腰折れしてしまうリスクがあるからである。FRBは景気回復を阻害しないように、適切な規模とスピードによる金融緩和縮小を目指しているが、市場に安心感を与えながら混乱を招かないように、金融緩和縮小のフォワード・ガイダンスを駆使している。
 FRBの緩和縮小は「テーパリング=量的金融緩和の縮小」に始まったが、今後の縮小スピードについては、市場参加者の無用な憶測を呼ばないように、「景気に大きな変動がない限り定期的に行う」としている。また「テーパリング」の後に控えている「ゼロ金利解除」の条件を、「失業率6.5%を下回ること」と市場に明示していたが、更に「インフレ率が2%を下回る状況では、失業率が6.5%を下回ってもゼロ金利は継続する」と、市場を見ながら追加のメッセージを送っている。

今後の見通し
 金融市場においては、近年珍しく日本の政治リスクが意識されている。日本経済が低迷していた時には、外国人投資家にとって日本の政治に対する関心も薄かった。経済に対する期待感が高まってきたと同時に、外国人投資家の目は、外交政策にも厳しくなってきている。これは日本経済が外需に頼るところが大きいと見ているためであり、貿易相手国との政治的な摩擦が経済活動に悪影響を及ぼしかねないと警戒している。金融市場においては、アベノミクスの成功の条件は国内政策に加え外交政策という新たな要素が加わってきた。

投稿者:静岡経済研究所スタッフ|投稿日:2014/05/01|

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