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調査グループ長 森下泰由紀 のコラム

  • 調査グループ長 森下泰由紀
  • No.106

地域経済とESG金融

菅首相が脱炭素を宣言した昨年10 月の所信表明演説に前後して、「SDGs」や「ESG(環境、社会、企業統治)」という言葉が、改めてマスコミ等で注目されるようになった。ちょうどその頃、静岡銀行からESG金融の一種である「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)」の商品化について相談を受けた。

PIFとは、融資の一形態である。金融機関は融資をする際に、取引先企業の事業活動を分析し、環境、社会、経済に対してプラスの影響を与えている活動(ポジティブ・インパクト)と、マイナスの影響を与えている活動(ネガティブ・インパクト)を特定する。そして、ポジティブな活動をさらに発展させ、ネガティブな活動は抑制するという目標を設定し、その達成に向けてモニタリングしながら一緒に取り組んでいくというものである。

当研究所はこのうち、企業活動がどのようにSDGsに貢献しているかというインパクトの特定と評価に関わったのだが、PIFはこれまで、メガバンクが大手企業に実施しているものばかりで、中小企業向けの事例や参考となるガイド等はなかった。そこで、評価実績のある?日本格付研究所からアドバイスを受けながら中小企業版のPIF評価書を完成させ、今年1月、静岡銀行と平野ビニール工業?が契約を結び、融資が実行された。

中小企業向けのPIF評価に当たっては、国連が掲げる原則に準拠し、求められるレベルを担保することはもちろん、地域の課題を解決することができる活動か、地域経済に波及する活動かなど、地域との関連性に重点を置いた。加えて、経営者がこのPIFに取り組む目的を汲く み取ることにも注力した。平野ビニール工業?の場合、外国人従業員の労働・生活環境の整備等をKPI(重要業績評価指標)に設定したが、社長の真の目的は、日本における外国人労働者問題を解決するために、同じ志を持つ仲間を募ることにあった。したがって、評価書においても、同社の理念や社長の思いを丁寧に記載し公表することで、単なる透明性の確保にとどまらない意義ある評価書となるよう心掛けた。

契約後、中小企業向けとしては国内初という話題性もあって多くの新聞で取り上げられたほか、環境省と情報交換をしたり、環境保全団体でセミナーをするなど、大きな反響があった。また、静岡銀行にはお客さまや他の地方銀行などから多くの問合せもあるようで、地域におけるESG金融の広がりが感じられる結果となった。

2030 年に向けて、"誰一人取り残さない"世界にしていくためには、国際機関や大手企業だけでなく、地域の機関や企業にこそ活躍の場があるはずだ。中小企業版PIFは、持続可能な社会づくりに貢献することで自社の成長を図りたいという地域企業に、金融という視点から後押しするものである。地域経済の活性化を理念に掲げる地方シンクタンクとして、こうしたSDGsの取組みに積極的に関わっていきたい。

投稿者:調査グループ長 森下泰由紀|投稿日:2021年06月30日|

  • 調査グループ長 森下泰由紀
  • No.99

アフターコロナを展望する

新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るい、未だその勢いは止まらない。人の行動や人との接触が制限され、営業活動を強制的に自粛させるという前例のない事態に、経済も深刻な影響を受けており、"戦後最大"、"リーマン超え"など、センセーショナルな言葉が躍っている。
こうした中、コロナ禍に関する緊急アンケート調査を担当する機会を得た。3月下旬から4月上旬にかけて実施したこの調査では、4-6月の各社の売上高が平均で△2割以上減少し、同時期の静岡県GDPの予測値は、まさにリーマン超えとなる△17.8%と、想定していた以上にショッキングな結果となった。
一方で、コロナ禍におけるICTの活用や働き方の見直しについては、3-4割の企業が、テレビ会議の活用や、AI、IoTによる省力化、テレワークやフレックスタイムの導入を検討するなど、いわゆる"アフターコロナ"を見据えた動きも一部に見られた。当研究所の会議でもよく議論となるビフォーコロナとアフターコロナ。コロナ禍における行動変容によって、生活様式や経済環境が大きく変わるのではないか。自宅に居ながらショッピングを楽しみ、オフィスに行くことなく業務をこなす、営業も飲み会も、病気の診療や学校の授業さえもネットを通じて行う。すべてとは言わないが、こうしたことへの抵抗感が薄まることは必至だろう。それによって、顧客との接点はもちろん、従業員の働くことへの意義・意欲にも変化が生じ、経営の舵取りにも、新たな発想が求められるとともに、これまでの常識が通用しない異なる領域に入ることも予想される。
その1つの解が、やはりデジタル技術ではないだろうか。コロナ禍における生活スタイルのキーワードは"リモート"や"非対面"であり、離れた人と意思疎通を図るために、デジタル技術は親和性が高い。もともと企業では、AIやIoTなどを活用してビジネスを変革する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に注目が集まっており、国も、こうした先端技術によって社会的な課題を解決する「Society5.0」を提唱している。コロナ禍によってその重要性が再認識され、サプライチェーンの中で、あるいは消費者やユーザーに対応するため、そして従業員同士のコミュニケーションツールとして、一気に広まる可能性が高い。
また、コロナ禍でも感染防止策を検討するために注目されている"ビッグデータ"を、ビジネスに生かす視点も必要だろう。対消費者、対取引先、従業員同士、機械と機械など、日々膨大な量のデータが企業内に蓄積されるが、こうしたデータをAIやRPA等を活用しながら、収益確保や生産性の向上などにつなげる工夫と仕組みが求められよう。
まだアフターコロナを考える時期ではないかもしれない。ただ、渦中においても、終息後の経済的な回復の道筋を、冷静かつ客観的に展望しておきたい。

投稿者:調査グループ長 森下泰由紀|投稿日:2020年12月07日|

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