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理事 山田慎也 のコラム

  • 理事 山田慎也
  • No.103

蓄積されている消費エネルギー

コロナ感染は予断を許さない状況が続くが、週末、静岡市内の街中の様子をみていると、だいぶ人出が戻ってきているように思う。ショッピングセンターに入ろうとする車が路上で連なっていたり、お昼時にはロードサイドの飲食店が混雑していたり、車のディーラーを覗のぞくと商談している来店者でテーブルが埋まっているなど、コロナ前と変わらない、いや、それ以上に人出があるように感じられる光景さえ見られるようになった。

8カ月以上にもわたる自粛生活で、人々の消費活動がかなり滞っていたことは間違いなく、こうした動きの背景には、その間に蓄積された"消費エネルギー"があるように思う。

たとえば、6月末時点で全国の家計が持っている現預金の残高が3月末に比べて30 兆円以上も増えて過去最高水準となった。また、県内の預貯金(個人だけでなく法人も含む)も4月から8月にかけて急増、8月末残高は3月末比で1兆8千億円以上の増加である。この間、賃金は全国・静岡県ともに減少傾向にあったのだから、人々が消費をかなり控えていたと考えられる。

そして、一人10 万円の特別定額給付金の支給も大きかった。6月から支給が始まり7月には約9割の家庭が受け取っている。その合計額は全国で12 兆円、県内では単純計算で3,600億円程度と推測される。必需的なもの以外は、外出自粛などで消費できず預貯金に回った分もかなりあっただろう。つまり、過去最大の現預金水準が意味するところは、多くの家庭で日常の収支とは別の、消費の源泉となるプラスアルファの資金を持っている可能性があるということだ。

消費エネルギーのもう一つの側面は、これまで抑え込まれていた消費意欲である。週末の街中のにぎわいもその一端かもしれないが、象徴的なのは11 月上旬に清水港にも寄港したクルーズ船の再開である。

以前、多くの感染者を出した「ダイヤモンド・プリンセス」のイメージから敬遠されると思いきや、好調な予約状況だったようだ。実はそのあたりの消費者心理は、当所が5月に実施したアンケートでもすでに表れていた。「クルーズ船ツアー」に「抵抗感がある」人が8割近くいたにもかかわらず、その一方で「感染が収束したらコロナ流行前より増やす」という根強いニーズを持つ人も1割弱もあったのだ。そうした"堰せ き止められていた需要"が放流された結果といえよう。当然、クルーズ船より、「県内旅行」や「マイカーによる旅行」などの方が抵抗感は少なく、これから増やしたいと思っている人も多いわけで、それだけ堰き止められている需要も大きいということになる。

つまり現在は、家計に余裕がある人や強い消費意欲を持った人が確実にいることから、消費は顕在化しやすい状況であるともいえる。感染者数はなかなか収まらず、県内の大型商業施設の閉鎖が発表されるなど、厳しい経営環境と併存する中ではあるが、感染対策の徹底や顧客との信頼関係構築などにより、蓄積された消費エネルギーの流路をなんとかうまく作って、苦境を乗り越えていきたい。

投稿者:理事 山田慎也|投稿日:2021年06月30日|

  • 理事 山田慎也
  • No.93

巨大都市圏の際(キワ)にある静岡

静岡県では、転入から転出を差し引くと、年間約▲5.6千人の人が県外に流出している。流出先は、東京都と神奈川県で▲5.6 千人とほとんどが首都圏である。雇用の場や商業など都市機能の差が理由として指摘される。
都市機能の充実度は人口規模に比例する。静岡県の人口365万人に対して、東京駅から半径50km圏の人口は3,500万人と、静岡県のざっと10倍である。さらに人口70万人弱の静岡市と比較すると、なんと50倍となる。静岡市の市外流出は年間▲1千人で、やはり東京都・神奈川県への流出がほとんどだが、都市機能50 倍の巨大都市に、移動時間1時間の距離で"隣接"しているのだから無理もないともいえる。
これを逆に東京側から静岡をみてみると、興味深いことがわかる。
まず、東京駅50km圏内には、横浜、川崎、千葉、さいたまなどの大都市が含まれるが、このエリアは通勤圏で一体と考えてよい。
その外側の東京駅50km-100km圏には、宇都宮や高崎、前橋、そして県内では三島が含まれるが、新幹線駅があれば通勤可能圏といえるだろう。
さらに、その郊外の100km-150km圏に、静岡市のほか、甲府、那須塩原、ひたちなか、日立などがある。ひかり級の新幹線であれば1時間なので通勤は不可能ではないが、交通費も考えると相当厳しくなる。そして150km以上離れると、東京からの独立性が強くなる。
それでは、東京都市圏の"郊外"にあたる、50-150km圏のエリアに立地する都市の中で、最も人口規模が大きな都市はどこか?それが静岡市70万人である。次の宇都宮52万人、高崎37万人と比べて、東京50km以上の郊外では、静岡市がダントツ1位の都市なのだ。
このことは何を意味するのか。東京の立場から見れば、東京圏内で人が足りない場合に、まず、静岡県がターゲットとなりやすいといえるのではないか。たとえば少子化を背景とする大学生の確保難などでは、相応の吸引力が我が県にかかっていると思われる。
つまり静岡県(特に静岡市以東の都市)は、都市機能50倍以上の大都市圏の際(キワ)、通勤から移住の境目に位置している。しかも際の都市群の中で静岡市が最も大きく、だからこそ、首都圏からの最も強い移住吸引力を受けていると推測される。
ではどうすべきか。こうした巨大都市圏との隣接を前提として、逆に交流人口の獲得など、そのエネルギーを取り込む視点が必要だ。さらに、安価で安心して生活・子育てできることをPRする「30歳になったら静岡県!」(静岡県)や、地方での健康的な生活を高齢者に提供する「CCRC」、地方で能力発揮の機会を提供する人材マッチングなど、首都圏民が抱える課題に対してソリューション(解決策)を提供する発想が、首都圏郊外トップ都市のアドバンテージ(優位性)を活かした、静岡活性化のカギといえるのではないか。

投稿者:理事 山田慎也|投稿日:2019年07月01日|コメントを書き込む

  • 理事 山田慎也
  • No.85

リピーターからロイヤルカスタマーへ

小売店や観光施設だけでなく、製造業など多くの企業にとって、自社の商品やサービスを繰り返し購入してくれる"リピーター"が大切なことは以前から言われている。それは、新たに顧客を開拓するには、営業経費や広告宣伝費など莫大なコストが掛かることから、既存の顧客に継続して購入してもらうほうが、はるかに経営的に効率的だからだ。
このことは人口減少時代になってますます重要性を増すことになる。当面は人口が増加する高齢者を対象としたビジネスを除いて(いや、地域によっては高齢者の減少もすでに始まっている!)、新規開拓の対象となる顧客自体が確実に減っていくうえ、人手不足で営業員の確保も難しくなるなど、市場の縮小と営業力の低下で、新たな顧客の開拓はこれまで以上に厳しくなっていくからだ。
では、リピーターづくりにおいて本質的に重要なことはなにか。そのヒントを教えてくれる住宅メーカーが浜松市にある。
そもそも住宅は、一生に一度に買物であり、リピーターづくりが難しい。その上、実はこの会社は、営業員はひとりもいない、モデルハウスも持っていない。にもかかわらず継続して顧客獲得に成功している。その理由は、明確な商品コンセプト、従業員の親身な対応、徹底したアフターフォローなどにより、既存顧客の高い"ロイヤルティ"を獲得していることにある。そのため、家を建てた顧客の紹介を通じて、新たな顧客が自然に増えていくのだ。
ロイヤルティとは、その商品やサービス、さらには会社そのものに対して、顧客が感じる高い満足感や信頼感などをベースにした、総合的な"愛着"のこと。価格の安さなどの経済合理性を超えて、商品や会社に心底、共感した顧客が"ロイヤルカスタマー"である。
ロイヤルカスタマーが単なるリピーターと違うのは、「また購入したい」と思うだけではなく、「家族や知人など自分の大切な人に、その会社や商品を紹介したい」と思うかどうか。ロイヤルカスタマーはもちろん良質なリピーターとなる。と同時に、もっとも心のこもった営業員にもなる。前述した住宅会社は、自社の営業員はいないが、既存顧客という優秀な営業員を社外に沢山もっていることになる。
逆に、リピーターがすべてロイヤルカスタマーとは限らない。繰り返し購入してくれる顧客の中には、店が近いとか、商品にこれといった不満がないとか、単にそこで買うことが習慣になっているケースも含まれる。
リピーターは大切である。しかし、その本質は顧客のロイヤルティを高めることにある。かの住宅会社の経営者が意識しているのは"今ある関係をよりよくする"ことであるという。これからの時代、どのような業種の企業にとっても、参考になるキーワードと思われる。

投稿者:理事 山田慎也|投稿日:2018年07月03日|

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