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総務部長 大石真裕 のコラム

  • 総務部長 大石真裕
  • No.91

"道徳"と"経済"

昨年暮れ、埼玉県深谷市で行われた「マイナス入札」が注目を集めた。廃校となった小学校の体育館と敷地の売却に際して、予定価格をマイナス(=市側がお金を払う)とした入札を実施したのだ。落札者が体育館を解体し、住宅を建てることを条件に行った入札には2者が応札、市内の会社経営者が▲795万円で落札したのである。
こうした動きの背景には、人口減少や少子高齢化に起因する自治体財政のひっ迫や公共サービスに対する需要の変化・減少がある。公共施設・インフラを今と同じ規模で維持・更新し続けることは困難である。かといって、放置しておけばまちは廃れていく。そのため、施設の統廃合や売却の動きは加速していくと思われる。そして、「公民連携(PPP)」を進めていく必要性も高い。
PPPとは、公共施設などの整備・運営に民間の資金や創意工夫を活用するもの。PFIやコンセッション、既存公共施設への収益施設の併設、指定管理者制度などの手法を用いて、新たなビジネス機会を拡大し、地域経済の好循環を実現するとともに、公的負担の抑制を図り、国や地方の基礎的財政収支の黒字化を目指す"経済・財政一体改革"に貢献することが期待されている。
静岡県内をみると、掛川市では、公共施設の管理の考え方を"運営"から"経営"へと転換、指定管理者の経営の自由度を高める運営改革を実施した。これに基づき、掛川城の指定管理者に選定された民間事業者は、「掛川城公園1日ワンダーランド」をコンセプトに、周辺施設との共通入場券の販売やカフェの設置、朝市開催などの取組みを行い、3年で恒常的な赤字を解消するに至った。
沼津市では、利用者減に直面する少年自然の家を公園一体型の宿泊施設に転換、都市公園法に基づく設置管理許可を得た事業者が独立採算で運営している。「泊まれる公園」という新しい価値の発信で、県外からも多くの利用者が訪れており、沼津の認知度アップや市内回遊による活性化にも期待がかかる。農村再生請負人とも評される二宮尊徳は、「道徳を忘れた経済は罪悪である。経済を忘れた道徳は寝言である」という言葉を残している。理念のない経済活動は罪悪を生み出す一方、高い理念を掲げても利益が出なければ活動を継続することはできず、"道徳"と"経済"がバランスすることの重要性を説く。
以前より「都市経営」の重要性が言われ、自治体では予算、人材など限られた資源を有効活用する「効率性」を重視して住民福祉の増進に努めているが、今後はさらに「収益性」の意識を強めることが必要だろう。人口、税収が減少し、地方自治体といえども破綻、消滅するリスクが高まる中、PPPに前向きに取り組むなど経営感覚を高めることが、財政負担軽減とまちの活力創出につながっていく。

投稿者:総務部長 大石真裕|投稿日:2019年03月01日|

  • 総務部長 大石真裕
  • No.84

"自未得度先度他 "の心

1986 年の「男女雇用機会均等法」施行以来、推し進められてきた女性の活躍推進が、近年の地方創生や働き方改革の流れの中で、注目度を高めている。そこで、静岡県における女性活躍の状況を「国勢調査」(総務省)からみると、2015 年の女性労働力人口は83.7万人、労働力率は51.9%となった。全国(50.0%)を1.9ポイント上回り、都道府県順位は10位となり、本県の女性の労働参加は全国でも高い水準にある。
しかし、女性労働力率を年齢別にみると、「25?29 歳」(80.2%)が全国34 位、「30?34歳」(71.8%)は35位と低位にある。その上、両世代の差(8.4 ポイント)は、都道府県別で9番目に大きい。これらの数字が意味することは、結婚・出産・育児期にあって仕事を持たない女性、離職する女性が静岡県には比較的多いということだ。
これら世代の女性労働力率に影響を及ぼす要因としては、世帯主の収入を家族で補う必要があるといった金銭面の事情や、子どもの面倒をみてくれる保育所や自分または配偶者の親が近隣にいないといった育児環境面の充実度などがあるとみられるが、これらに加えて、仕事や家庭に関する価値観も影響していると考えられる。
内閣府が実施した「地域における女性の活躍に関する意識調査」によれば、"自分自身が職業を持つことについてどう考えるか"という質問に対して、「子供ができてからもずっと職業を持ちたい」と回答した静岡県の女性は28.7%で、全国(28.3%)並みの水準となっている。
これに対して、男性に"自分の配偶者が職業を持つことについてどう考えるか"という問いをしたところ、静岡県で最も多かった回答は、「子供ができたら一度職業をやめてほしいが、子供が大きくなったら再び職業を持ってほしい」で38.7%に上り、全国で4番目に多い。その一方で、「子供ができてからもずっと職業を持ってほしい」(16.6%)は45位と低い位置にあり、静岡県の男性には、「男は仕事、女は家庭」といった旧来型の性別役割分業意識が根強く残っていることがうかがわれる。
女性の活躍を今後も促していくには、長時間労働など男性主体の働き方を改めるとともに、職場の上司、同僚や家族の理解・協力が欠かせない。そこには、男性の意識改革が必要である。高度経済成長期に効率的であった家族の形が合理性を失いつつある今日、「男(女)はこうあるべき」といった固定観念を払拭し、性別に関係なく個人を尊重することが求められる。自分本位ではなく、相手のことを優先して考える"自じ 未みとくどせんど得度先度他た "(禅語)の心を高め、多様化する女性の価値観に真しんし摯に向き合っていくことが、静岡県の男性には必要だろう。

投稿者:総務部長 大石真裕|投稿日:2018年05月31日|

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