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  • 主席研究員 玉置 実
  • No.98

デジタル革命の波と地域づくり

昨年、自動運転技術やMaaS(Mobility as a Service)など最先端のITを使うことで、地域の課題解決につなげようとする全国の実証実験を視察する機会に恵まれた。たとえば仙台市では、ドローンを活用して津波からの迅速な避難につなげようとしており、愛知県豊田市や春日井市では、買い物弱者や環境対策のために自動運転技術を活用しようと取組みを進めている。また、京都府では、最新の観光情報をデジタルサイネージによって提供することで観光客の周遊性向上を図るなど、その対象は多岐に渡る。
静岡県内でも、今年1月にはトヨタ自動車?が、あらゆるモノやサービスがつながる実証都市「コネクティッド・シティ」を裾野市に整備するプロジェクトを発表したほか、地元の鉄道会社がAI(人工知能)を使った相乗りタクシーの実証実験を行うなど、さまざまな事業が展開されている。
こうした取組みを見て、まず感じたことは、実際に生活の中で活用するためには、しばらく時間が掛かるという点である。まだ技術面での課題が多いことが最大の要因であるが、加えて、生活者目線の実験が十分にできていないといえる。たとえば、自動運転の目的の一つは、移動手段が制約される住民の買い物や、通勤・通学、通院といったニーズを満たすことであるが、そうした点を前提としたデータの取得やニーズの把握が進んでいない。さらに、データの取得は今後進むだろうが、それを人々の生活パターンと組み合わせなければ、実際の活用は難しい。
さらに、実験成果を全国的に展開する"横"の連携も今後の課題だろう。仙台市では、大地震が発生すると沿岸部に設置されたドローンが自動的に飛び立ち、津波の発生状況を防災拠点に映像で伝えるとともに、遠隔操作によって、海岸にいる人達に避難を呼びかけるシステムづくりを目指している。技術的には比較的早く実現すると感じる一方で、海岸線は行政区によって区切られているわけではなく、避難など防災に関する情報の隣市町との共有を図っていかなければ、せっかく確立した仕組みを生かせない。
実証実験を積極的に推進する国も、総務省、内閣府、経済産業省、国土交通省など省庁ごとの縦割りが目立つ。また、事業の実施主体である地方自治体でも、一部署だけで推進しているところが多く、今後はさらなる活用に向けて他部署との連携が欠かせない。
今年に入り、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、リモートワークやオンライン診療、遠隔教育システムなど、デジタル技術の活用が注目され始めている。こうした環境が激変する中においては、技術の急速な進歩とともに、社会や人々の価値観、生活パターンが大きく変わる可能性が高い。人口減少や高齢化など地域の課題解決は待ったなしの状況だけに、今回の出来事をきっかけに、ITを活用した地域課題解決に向けた取組みのスピードアップが図られることを期待したい。

投稿者:主席研究員 玉置 実|投稿日:2020年12月07日|

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