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研究担当部長 川島康明 のコラム

  • 研究担当部長 川島康明
  • No.95

顕在化する超高齢社会のゆがみ

調査業務でリポートを執筆する際、前置きに"高齢化"を使うようになって久しい。現在、静岡県の高齢化率(人口に占める65 歳以上の割合)は29%だが、2045年には39%まで上昇すると推計されている。そして、75歳以上の後期高齢者の割合が高まるとともに、高齢単身世帯数が倍増し、40 年には全世帯に占める割合も17%まで高まる。
こうした社会構造の変容による影響は身近なところで感じられるようになっている。たとえば、高齢者の運転ミスによる交通事故が社会問題になっている。警察庁の統計によると、全国の交通死亡事故数は減少傾向にあり、75 歳以上の運転者によるものはおおむね横ばいで推移している。ただし、免許保有者10 万人当たりに換算すると、全年齢層の3.76 件に対して、75 歳以上で8.16 件、80
歳以上では11.13件にまで跳ね上がる。ドライブレコーダーの普及とともに事故の映像が報道されることも、その危険性が社会に広く知られる要因だろう。その対策として、高齢者の自動車への自動ブレーキ装備義務化や免許返納の促進などが議論されているが、こうした場面でも高齢単身化の影響が出てくる可能性がある。たとえば高齢者は免許返納をどう決断するか。軽微な事故を" もう年なんだから"と、苦笑いしていた家族も、その頻度が増えるにしたがって真剣に返納を勧め、本人が決断するというシーンが思い浮かぶ。しかし、一人暮らしになると、身近に諫言してくれる者がおらず、本人は心身の衰えから目を背けつつ運転し続け、結果として大事故につながることも増えるのではないか。もちろん、個人の認知能力や身体能力の差が大きい高齢者を一括りにするのは乱暴だが、こうしたところにも高齢単身化の余波が生じる懸念がある。
実際、高齢単身世帯には"孤立化"という不安が付きまとい、地域や趣味などの付き合いの中で信頼できる人間関係を築くことが大事といわれる。加えて、自分にとっての"働く"ことの意義を見つめ直すことも必要ではないか。金融庁の報告を契機に老後の年金問題がクローズアップされる中、経済的な意義も重要だが、高齢単身化の流れの中では、仕事を通じて"人や社会とつながる"ことの意義が重みを増す。折しも、静岡市では6月、シニア向けの就労窓口「NEXTワークしずおか」を立ち上げた。こうした取組みも利用しながら、シニア世代が前向きに自身に合った働き方をみつけることが望まれる。
生活環境や栄養状況の改善、医療技術の進歩などを背景に実現しているわが国の"長寿化"は誇るべきことであり、単身化も、現在の社会構造や価値観の中で必然的な変化といえる。今後もさまざまな課題は出てくるだろうが、高齢化のトップランナーである日本において、単身・孤立化を防ぎ、社会の安定と個人の心の豊かさを両立する仕組みを創出し、世界に示したいものである。

投稿者:研究担当部長 川島康明|投稿日:2019年11月25日|

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