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- 特任部長 内野孝宏
- No.0328
ANAの「沖縄航空貨物基地」を視察して
富士山静岡空港の就航先のひとつである沖縄県那覇市。そこに、ANA(全日本空輸)が進めている「沖縄航空貨物基地」がある。今12月、今後における富士山静岡空港の航空貨物利用促進に向けて、10月26日に運用開始したばかりの当基地を視察する機会を得たので、その概要を紹介してみたい。
この貨物基地は、那覇空港に隣接する国内線ターミナルビル内に位置しており、新たな貨物上屋として、国際貨物エリア20,000平方メートル、国内貨物エリア7,700平方メートルの合計27,700平方メートルが整備された。総事業費は90億円といわれており、空港利用の促進、産業振興や雇用拡大が期待できるとして、沖縄県も一部費用負担しているとのことである。
運用についてみると、貨物専用機(B767‐F、積載能力50トン)7機で、羽田、成田、関空、ソウル、上海、香港、台北の東アジア主要空港と結び、それぞれの空港を深夜に出発、この貨物基地に一旦、荷物を集結させてから仕向け地別に積み替えを行い、翌朝には、それぞれの空港に到着するというものである。たとえば、羽田は24:00出発→6:30到着、ソウルは23:35出発→6:40到着、香港は23:15出発→6:55到着といったタイム・スケジュールであり、深夜便を利用することで、航空貨物にとって最大の武器となるスピードを顧客(荷主)に提供できる仕組みである。
実際、深夜に7機が貨物スポットに勢ぞろいした姿を見たが、なかなかの壮観な光景であった。現状の就航先は7先で、年間取扱貨物の合計トン数は24万トンとなるが、今後は就航先を12先、取扱量を45万トンにまで増やす予定である。これまでの取扱実績に対する細かな説明はなかったが、平均すると6割程度の積載量で、日本から海外へは「機械部品」、海外から日本国内へは「生鮮品」が主たる貨物との説明であった。経済が落ち込む中では、“まずまずの滑り出し”という評価である。
ANAの戦略はこうだ。1.東アジアの航空需要が、今後、世界の中で最も高い伸びを期待でき、2.東アジアのハブ空港と飛行時間4時間以内で結ぶことができる沖縄の立地優位性を活かし、3.深夜発・早朝着といった荷主に利便性の高い集荷・配達時間のダイヤを提供することによって、4.フェデックスやDHLなどインテグレーターと呼ばれる外国航空会社に奪われていた「エクスプレス貨物」を奪い返すとともに、5.沖縄の産業振興(物流・加工関連の企業立地の促進)にも繋げていこう、というものである。ANAの説明では、航空業界が厳しさを増す中で、「社運を賭けたプロジェクト」とのことである。
ただ、静岡空港を考えた場合、この貨物基地と航空貨物を行き来させるには、いろいろなハードルがある。そのもっとも大きなものが、機材である。現状の沖縄便はベリー部に貨物を載せるスペースがないため、旅客需要を拡大して貨物を積載できる「中大型機」運行への格上げが必要としているが、沖縄便は、基本的に需要変動が大きい観光需要が主力であり、また、深夜便は騒音問題をクリアしなければならないという壁がある。
私の個人的な意見を述べるならば、沖縄貨物基地に静岡空港からの航空貨物を運ぶには、年間10万トンという統計からみた後背圏の航空貨物量から推測して、旅客機でなく50トンクラスの貨物専用便を週1~2回程度飛ばすことを期待したいと思っている。ただ、機材繰りを考えると、週1~2便の貨物専用便については、静岡空港だけでなく、曜日ごとに、仙台、小松、岡山、千歳、福岡など、他の主要地方空港と組み合わせていくことが必要となろう。また、これはANAの機材を利用することが前提であり、すでに、荷主とフォワーダー、そして航空会社との関係は、ある程度固定化されていることもあり、荷主、フォワーダーのそれぞれに、いかにメリットを与えられるかも大きな課題となろう。
ところで、歴史という観点から沖縄県というものを大きく捉えてみると、「中継」というのが、沖縄の大きなキーワードになっていたと言える。ふるくは、中国・明の時代に、琉球王朝は、日本、朝鮮、安南(ベトナム)、シャム(タイ)、ジャワ(インドネシア)とともに、中国と「柵封」(朝貢)態勢を結んでいたが、その中で、これら東アジアの国々から商品を輸入して、それぞれの国に輸出するという「中継」貿易で栄えたという歴史がある。また、最近では、「コールセンター」の基地が沖縄にあり、全国各地からの電話に対する応答サービスを、沖縄県がオペレーション基地として、その代行機能を果たすなど、これもひとつの「中継」といえる。観光や農業以外に、これといった産業がないことに対する沖縄県の大きな戦略であり、この「沖縄航空貨物基地」も「中継基地」として、大きく飛躍していくことを期待したい。
投稿者:特任部長 内野孝宏|投稿日:2009年12月25日|コメントを書き込む
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