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  • 主席研究員 川島康明
  • No.65

企業の信頼を高めるBCP

 わが国に未曾有の被害をもたらした東日本大震災の発生から5年が経過した。この大災害をきっかけに、静岡県内でも津波避難タワーの建設や防潮堤の整備が進められ、企業や生活者の内陸部移転などさまざまな動きがあったが、4月に発生した熊本地震により改めて自然災害の凄まじさを思い知らされることになった。
 国内を見渡せば、地震のほかにも大型台風や記録的な豪雨による被害、御嶽山などの噴火、鬼怒川の氾濫による大水害など、数十年に一度という大規模な災害の発生が目立つ。こうした自然災害のみならず、グローバル化や情報化の進展もあって、企業を取り巻くリスクは多様化しているのが実状である。
 こうしたリスクに、企業はどのように対峙していくか。その武器となるのがBCP(事業継続計画)であり、中小企業の成功事例が広く紹介されたことで、認知度自体は大震災前に比べて高まっていることは確かである。それでも、県調査(平成2 6 年度)によると、BCPを「策定済」との県内企業は1 6 . 7%、「防災計画に織込み済」(3 . 4%)を合わせて2割程度にとどまっている。従業員数3 0 0 人以上の比較的大規模な企業では策定済が半数近くを占める一方、2 9人以下の小企業では1 0%前後、9人以下の零細企業ではほとんど策定されておらず、企業規模による格差が目立つ。
 この傾向は以前より変わらず、とくに中小企業では資源の制約や策定効果への疑問から普及が進んでいないとみられる。こうした状況を変えるにはどうするべきなのか。やはり、商売上のメリットがある、策定・運用することが"儲け"につながるとなれば、大きなインセンティブになるだろう。
 そうした考えから、中小企業庁では、BCPにおける具体的な取組みが経営上の効果に結びついているかを調査している。これによると、「災害対応力の向上」におおむね半数以上が効果ありとしているのは当然だが、「環境整備・業務改善」や、事業上きわめて重要な「取引先の信頼向上」でも、3割から4割の企業がプラスの効果を実感している。
 たしかに「売上高増・取引先増」まで結びついたとの回答は一ケタ台にとどまるが、企業を取り巻くリスクがこれだけ多様化・大規模化している現在、その対応に真摯な姿勢で取り組もうという企業への評価が高まるのは間違いない。
 BCP策定率の向上とともに、「複合リスクの想定」「サプライチェーン確保の重要性」といった大震災の教訓を改めて思い起こし、演習・訓練によるブラッシュアップを通じて県内産業のレジリエンス(復元力)がさらに高まることを期待する。

投稿者:主席研究員 川島康明|投稿日:2016年05月02日|

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