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  • 研究部長 川島康明
  • No.101

コロナが強引に引き寄せる近未来

コロナ禍の夏が過ぎた。「行きたいところに行ける」「会いたい人に会える」というこれまで当たり前だった"自由"を束縛されることが、これほどストレスのかかるものだったのかと思い知らされた。足元で感染拡大はやや落ち着いているが、現在の法制度のもとでは、プライバシー保護に制約をかけないで感染防止と経済活動の両立を実現するのは至難の業。治療薬やワクチンが行きわたるまで、結局は各個人の予防的取組みにかかっており、当面、日常生活が制約を受けることは覚悟しなければなるまい。

この影響はあらゆる分野に及んでいるが、県内経済という観点から、まず気になるのが消費活動である。ただでさえ増税後の消費停滞時、襲来したコロナによって外出自粛が求められ、雇用環境の悪化もあって宿泊、飲食、旅客交通、娯楽などの需要が急落。また、盛り上がっていたインバウンド需要の蒸発、サプライチェーンや物流寸断による生産停止...。グローバル化の負の部分が県内でも噴出した。今後も世界が密につながり、ヒトやモノが行き来する時代を是とするならば、再び未知の感染症が世界を覆うことも想定しておく必要があるだろう。

ネガティブなインパクトが大きいコロナだが、否応なくデジタル化が加速したことは、数少ないポジティブな側面といえそうだ。巣籠ごもり下で消費者のネット活用は大きく増えており、なかでもデジタルコンテンツのニーズはコロナ前から一気に拡大している。

また、働く場面でのデジタル化も強制的に進んだ。「取引先には訪問して顔を合わせることがマナー」「自宅勤務の制度はあってもできるだけオフィスで働く」...。こうした旧来の商慣習やマナー、労働観は強引に崩された。当所の調査では、コロナ流行前は5.9%にとどまっていたテレワーク導入率は、感染拡大を機に29.5%まで急上昇。従業員側でも、半数以上が継続的な運用を望んでおり、いざ実践してみたら「働きやすい」「効率的」との声が挙がる。

あるいは、コロナ禍の大波にさらされている教育業界。これまでも過疎地等における教育機会の提供、遠隔地との交流促進といった観点でリモート教育の可能性が探られていたが、感染拡大に伴い大学などではオンライン授業が浸透し始めている。教員・学生とも緊急導入した仕組みに戸惑いつつも、ある県内大学の教授は「通常の講義より意見が言いやすいようで、質問も多く出るようになった」と、副次的な効果も聞かれる。今後は、これまでの教育形態にリモートのメリットを融合して最大の効果を上げるという観点で、教育手法を論じていく必要がありそうだ。

ともあれ、多くの禍わざわいをもたらすコロナによって非接触社会が到来し、デジタル技術にけん引される近未来が一気に近付いたのは確かである。生活や仕事、教育などさまざまな場面で、この流れをいかに推し進めるか。元来、防災リスクへの感度が高い本県ゆえに、県内の企業や行政がその感度を感染症にも向け、平常時・非常時を問わず、実効性の高いデジタル戦略が推進されることを望みたい。

投稿者:研究部長 川島康明|投稿日:2021年06月30日|

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