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NEWS RELEASEニュースリリース

2020.02.18

新型肺炎の感染拡大に伴う 静岡県産業への影響

静岡経済研究所(理事長 一杉逸朗)では、現在、世界的に感染が広がる新型コロナウイルス「COVID-19」の静岡県産業への影響について、県内事業者を中心に緊急取材を実施しました。その結果をご報告いたします。

【観光・商業関連】

〇中国人客が激減、日本人の旅行・消費心理にも影響

最も悪影響が顕在化しているのが、観光産業である。中国政府による海外団体旅行の禁止などもあって、富士山静岡空港の中国路線はすべて欠航しており、ホテルや旅館では宿泊キャンセルが相次いでいる。とりわけ、中国人インバウンド受入れを積極的に進めている県東部の施設では「予約がほとんどキャンセル」され、休業を余儀なくされるところもあるなど、経営を直撃。また県西部では、中国人観光客が移動中に滞在するビジネスホテルや、中心市街地などでキャンセルが増えている。さらに、観光バス利用のキャンセルや宿泊施設の清掃業者の売上減少など、その余波は周辺業種にも及ぶ。
さらに不安視されるのが、日本人観光客の動向だ。「日本人客から中国人宿泊客がいるか問合せがある」「日本人客のキャンセルも発生している」など、日本人にも集団で移動することへの忌避感や旅行意欲の委縮が広がりつつある。実際、感染が発生していないと思われる本県でも、「大手メーカーが宿泊研修を中止」するなど、宿泊業者にとって向かい風が強まっている。
今後については、3-4月に安全宣言が出ないと春季の需要に大きな影響が生じるとの声が聞かれる。その先まで長期化すれば、7月に開催される東京五輪も含め、世界の人々が日本に来るのを敬遠する雰囲気になるのが心配との懸念も広がる。
こうした宿泊客減少が本県にどの程度ダメージを与えるのか。当所試算では2月単月で187億円、6月まで長引けば累計1,071億円の経済的損失が見込まれる。
さらに、日本国内で感染者が増加する中で、イベントが中止されたり、「来場者が日本人も含めて2-3割減っている」(商業施設)など集客業施設でも変調がみられるところもある。今後、観光需要に限らず、県内でも防衛的に外出を控える動きが広がることで消費活動全般が停滞し、経済的損失がさらに膨らむことも懸念される。

【製造関連】

〇現地生産や輸出入が停滞、代替先確保の動きも

感染拡大の影響は、製造業にも生じている。まず挙げられるのが、現地生産への打撃である。2月上旬は中国政府からの要請で現地生産拠点の操業、入出荷を停止しており、中旬以降は「取引先である完成車メーカーの指示待ちの状況」(自動車部品)といった声が聞かれる。今後も、「工場や営業拠点にスタッフが出社しても、材料の確保、部品調達先の稼働、中国国内の物流の状況を見極める必要がある」(工作機械)と慎重な見方が少なくない。
県内生産にも影響が滲む。中国から県内工場へ原料や部品を仕入れている企業では「惣菜を生産する中国の合弁企業が停止。本格的な生産再開は3月以降」(食品)、「国内で生産している製品の一部に現地部品を使用しているため、生産の遅れなど影響が出ている」(産業機械)、「中国の取引先が休止し、大型案件の成約が見送り」(同)など、県内の生産活動にも停滞感が漂う。
感染の悪影響が長期化することを見据え、収益的に厳しいが国内生産に切り替えるといった対応がみられるなど、代替先確保を検討する企業も少なくない。ただし製品や工程によっては生産の代替が難しく、確保に苦戦することも想定される。
また、「技術指導と機器メンテナンスに訪中する予定があったが延期」(産業機械)、「新商品の展示会が延期」(産業機械卸)など、人の移動が制限されることによる商機の逸失や事業活動の停滞も生じている。
さらに、取引先や自社の設備投資計画の遅れも不安要因となる。「中国の自動車メーカーに設備納入を予定していたが、設置・立ち上げ作業に遅れ」(工作機械)、「中国工場移転のための社長視察が中止。スケジュールの遅れを非常に懸念」(産業機械)といった声が寄せられている。

〇マーケットとしての中国が急減速する懸念

今回の感染拡大によって、中国経済自体が急減速することへの懸念も大きい。日本からの輸出のみならず、たとえば中国内で自動車販売が落ち込めば、日系の現地完成車メーカーの減産を通じて、現地に部品を供給する県内メーカーに影響が及ぶだろう。実際、県内大手メーカーでも中国での販売不振によって、業績下方修正の動きが相次いでいる。
一部で県内にもマスクや消毒液などの増産といった特需がみられるものの、こうした負の影響の広さと深さを俯瞰すると、一刻も早く感染拡大が終息に向かうことが望まれる。

※本件のお問い合わせ先:恒友仁

news_2020.2.18_2.pdf